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オフィスひめの通信 61号

執筆:西澤真生(ひめのともみクリニック医師)
発行月:2020年2月

―見えない侵入者 マイコトキシン ―


 マイコトキシンはカビが産生する毒素です。空気中や水気の多い場所、カーペットやカーテンなどに付着したカビが原因となって吸い込む場合や食べ物に含まれていて口に入る場合があり、知らぬ間に侵入しています。カビの生えたものなんか食べていない!という方も注意が必要です。マイコトキシンはカビそのものと違って目に見えず、加熱しても消えないので気づかずに口にしている場合があります。例えば船倉で運ばれてきた穀物やナッツ、チーズや香辛料、そこからつくられたパンなどに含まれていた場合には全く気付くことが出来ません。国産の食肉でも飼料にマイコトキシンが含まれていると脂肪や肉に蓄積してそこから口に入る場合もあります。
 マイコトキシンの多くは発がん性があり、遺伝子を変異させる他、蛋白合成やエネルギー産生にも影響を与えます。特に神経系の細胞や免疫細胞を強く抑制します。グルタチオンなどの解毒・抗酸化物質を枯渇させ、肝臓の解毒機能の低下、活性酸素の増加や慢性炎症をもたらします。マイコトキシンが原因となる症状はかなり多彩で個人差があります。
例えば、下記などです。

 ● 慢性の疲労感や脱力、頭痛
 ● 認知機能の低下、集中力の低下
 ● 筋肉痛や関節痛、朝のこわばり
 ● 光がまぶしい、光過敏
 ● 鼻出血、咳や息切れ


 あるタイプの認知症やパーキンソン病の原因になっていると指摘する人もいます。マイコトキシンは胎盤や母乳を通じて胎児や乳児にも移行するので、子どもでは学習障害や異常行動として表れる場合があります。マイコトキシンは脂肪に蓄積するため、二の腕やお腹周り、臀部などに運動しても落ちにくい脂肪があったら「マイコトキシン貯蔵庫」になっている可能性があります。
 マイコトキシンを排泄する能力には大きな差があるため、同じ環境・食べ物で生活していても症状が出やすい人と出にくい人があります。バイオロジカル検査ではマイコトキシンの蓄積や代謝への影響をかなり精密に調べることが出来ます。栄養を摂っているのに栄養不足が続く方、慢性的な疲労感が長く続く方はバイオロジカル検査によってより根本的な原因を探してみましょう。

―検査可能なマイコトキシンリスト―

【マイコトキシンが生体に与える影響】
発がん、神経障害、免疫機能の低下、消化管や肝毒性 腎毒性、
活性酸素の増加、グルタチオンの枯渇、
マウスの実験で脳内ドーパミンレベルの減少(オクラトキシン)、
ペプチジルトランスフェラーゼ活性阻害(ロジリンE)、
ミトコンドリア脱分極(エニアチンB)


―マイコトキシンを減らすために―

 まずマイコトキシンを出来るだけ入れないようにしましょう。ワインやコーヒーが大好きな方は控えめに。ナッツやチーズ、乳製品も少しお休みしましょう。しばらくは国産小麦や国産大豆の加工品を選びましょう。トウモロコシなどの飼料を食べた家畜の肉にも含まれている可能性があります。今日放牧された家畜の乳や肉はかなり希少ですが地産地消を心がけ生産者の分かる野菜や畜産品を購入し、新鮮なうちに食べるようしましょう。水や空気にも注意が必要です。浴槽や水回り、地下室などのカビを一度チェックし除去や換気を心掛けましょう。
 尿への排泄を促すには良質ミネラルを含んだ水、ハーブティーやレモン水が有効です。重曹や硫酸マグネシウムを入れた入浴、健康に問題がなければサウナなどで汗からも排泄しましょう。腸から出すために常に便通を整えましょう。消化管に存在するマイコトキシンを吸着させて便から排泄させる食品もあります。脂肪に蓄積されたマイコトキシンを放出させるには適度な絶食や断食も有効です。長時間の絶食に耐えられない方もいますので専門家のアドバイスを得ながら自分に合った方法を取り入れましょう。
 解毒能力を回復させるためにはカビ以外、例えば水銀や有害化学物質などの蓄積も要注意です。日々の地道な努力で身近にある毒を入れない、出す工夫を続けましょう。


※刊行当時の内容のまま掲載しているため、現在の状況とは異なる記述もあります。

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