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姪っ子へのみつぎもの

義妹のところには、6歳と3歳の姉妹がいる。
毎年、年末年始の帰省のときに会うのでお年玉を渡していた。
なお、義実家では現金を贈り合う習慣がない(?)ようで、お祝いもお年玉も品物を贈っている。
自分の実家では基本的には現金(誕生日など品物を贈ることももちろんある)で、もらったお金はそれぞれの名義の口座に親が貯めておくということをわたしの親も姉夫婦もしていたので、嫁いでみて、そういう家もあるのかと知った次第である。

お年玉の相場というのは案外難しい。
どの年齢で金額アップするかとか、きょうだいで金額差をつけるかどうかなどの問題がある。
その点、義実家方式だと「何がほしい?」と聞ける分、相手に委ねられるのは楽である。
一方、子どもに尋ねた場合、予算オーバーの返事が返ってくるリスクもある。今はまだ可愛らしいものだけれど、そのうちゲーム機とかブランド服をねだられたらどうしよう。

さて、今年はコロナ禍ということもあり、帰省は取り止めとなった。
義両親は結婚以来はじめて、夫婦だけで年末年始を過ごしたそうである(わたしたちもだけど)。
そして今月、所用があり義実家に行くことになった。
姪っ子たちとも去年の正月振りに会える予定なので、義妹にLINEをして姪っ子たちの欲しそうなものを聞いてみた。
夫の予想は「子どもはみんな文房具やシールが好きだ」というもので、わたしはディズニーかすみっコぐらしか何かのグッズだろうと予想した。
しかし返信は、

「ふたりともアイシャドウやチーク、シャドウブラシやチークブラシを欲しがっている」

という予想を超えるものであった。
え、16歳と13歳じゃないよね?
聞けば、ふたりともネイルやリップはすでに持っているがアイシャドウとチークは持っておらず、興味津々なのだとか。
おおお、女の子だ。
今どきの子ってそういうかんじなのか。
わたしがその年頃の時には、ぬいぐるみかリカちゃんハウスが大好きでお化粧なんてまだまだ……まだ…?

いや、ちがう!
お化粧をしてみたくて仕方がなかった。

コマーシャルでも流れていた、「ハートカンパニー」。

ピンク色のハート型のドレッサーの中に鏡やブラシ、リップやマニキュア、コロンなどが入ったセットである。
長いこと忘れていたが、わたしはこれが欲しかった。
どうしてもどうしても欲しくて、親に頼んだものの黙殺された。
まあ、子どものおねだりなんて大概は黙殺されるものなのだが、わたしは諦められず、サンタさんに手紙を書いた。
実家ではサンタさんに手紙を書くのは自由だけど希望のものがもらえるとは限らないよ、だってサンタさんは外国の人だから日本のおもちゃ屋さんで正しく買えるかわからないからね、と言われていた(そのため、木でできた宝石箱とかブランケットなどを贈られることが多かった。もちろんハローマックの包みには入っていない)。
「はーとかんぱにーをください」
少女の願いは、サンタさんにも黙殺された。
手紙は消えていたが、ハートカンパニーはもらえなかった。
隣に住むユキちゃんの枕元には、ハートカンパニーが置かれていたらしい。見せてもらって、羨ましくて羨ましくて仕方がなかった。

今思えば、肌が弱くアトピーだったわたしに、水で落ちるとはいえ化粧品を与えることは親にもサンタさんにもできなかったのだろう。
おまけに爪を噛む癖もあったので、マニキュアもよろしくない。
でもそう思えるのはわたしが当時の親の年齢になったからであって、当時は枕を濡らす勢いで、ハートカンパニーが手に入らないことが悲しかった。
なんなら今でも欲しい。
まあ、仕事をやめて外出時には常にマスクをするようになった今、最後に化粧をしたのがいつなのか思い出せないくらい、メイクへの情熱は薄っぺらくなってはいるけれど。

そんなことを思い出し、確かにいちばんお化粧に興味を持つお年頃かもしれないと思い直した。
お母さんも協力的だなんて、素敵なことじゃないか。
わたしは小さなプリンセスたちの願いを叶えるため、夜な夜なショッピングサイトを徘徊してかわいらしいパレットを探した。
子ども向けのコスメを検索するも、リップやマニキュアに比べてアイシャドウやチークはあまり種類がなく、案外苦戦したが、よかろうと思えるものをなんとか見つけ出した。
やれやれ、プレゼント探しも骨が折れる。

でも、現金なら紙幣数枚をお年玉袋に入れて渡してしまえばそれで終わりというところを、品物を贈ると思うと

1 希望のものを尋ねる
2 彼女たちの好きなものや興味の対象を知る
3 それについて想いを馳せる
4 探す
5 欲しいものをもらえた反応が見られる

と双方向のコミュニケーションが生まれるということに気づく。
手間ではあるけれど、これもなかなか楽しいことかもしれない。
春に向けて、姪っ子たちが可愛くメイクに取り組んでくれたらいいなと思う。

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