出会い編・その２

私の家は当時父親が上野でキオスク位の小さい本屋をやっていたので、結構な漫画の雑誌や単行本を持ち帰って来てくれて、当時としては珍しく漫画に触れやすい環境にありました。

週刊少年ジャンプ、マガジン(何故かサンデーはなかった。たまにチャンピオン。親の判断かな、どうしてこのチョイスだったかは今となっては不明…)週刊マーガレット、別冊マーガレット（何故かマーガレットのみ。たま〜に「りぼん」や「なかよし」を持って来てくれた時もありました)を1970年代はじめ頃から４、５年間 毎号読んでました。「あしたのジョー」の最終回が記憶にあるんですよ。当時は意味がよくわからなくて、これでおしまいだっていうのが。でもラストページはとても記憶に残っています。この頃のマガジンは自分の中では黄金期です。毎週ものすごくワクワクして読んでました。「三つ目がとおる」が始まった時、最初はシリーズの短編でした。「釣りキチ三平」の連載開始の予告、「愛と誠」は毎週ドッキドキの連続。「おれは鉄平」にケタケタ笑い「デビルマン」に白目むき「デロリンマン」に泣いたり笑ったり…好きだったものを挙げだすと終わらないので止めておきますが…どれもこれも今まで見たこともない魅惑の世界への扉。自分にとって漫画は別世界に連れて行ってくれる最高の楽しいツールでした。

もう一つ特筆すべき思い出は、小学館の学年誌。
この頃の学年誌は付録が全学年に毎月何種類も付いていました。厚紙の組み立てるおもちゃ２種類＋別冊とか、３種類付録が付くのは普通で毎月とても凝ってました。父親は問屋さんから仕入れた学年誌を家に持ち込み、付録を綴じ込んで紐で縛り、車に乗せて練馬の自宅から上野の店に運ぶのです。この作業だけは家でやる必要がありました。
毎月1日くらいだったと思いますが発売前に大量の学年誌が家に持ち込まれます。付録を差し込んで紐で縛る作業を家族総出でやっていたので、手伝いをしながら私は親の横で一年生から六年生まで全学年を読んでました。なんという役得。それが毎月楽しみで楽しみで。私が幼い頃から漫画にどっぷりになったのは間違いなくこの当時の親の仕事のせいなのです（強調）
ベビーブームと呼ばれる時代はもう去ってたと思いますが相変わらず子供の数は多くて小学校はひとクラスに50人、一学年１０組、全校生徒千人越えザラという時代、学年誌は雑誌として大変人気があってぶ厚く、高学年の五、六年生は背幅が2センチくらいありました。学年誌は漫画連載の主流の場所の一つで、手塚治虫先生始め多くの人気漫画家が連載しており、私は学年誌で沢山の漫画を読みました。実は「ドラえもん」の初回もリアタイで読んでます、確か自分の学年ではなかったですが。低学年はフルカラーマンガも普通にあって、手塚先生の「ガムガムパンチ」「ふしぎなメルモ」(最初のタイトルは「ママァちゃん」)など色がきれいでそれはもう楽しくて飽きず読み眺めてました。テレビだってまだ白黒の時代、学年誌のカラー漫画は小さい子どもにとって今のディズニーくらいトップのエンタメだったんです。２１世紀の今はゲーム機もあるしストリーミング配信もYou Tubeもあるしいろんな選択肢があるけど、1970年代の子どもは漫画が一番の楽しみごとで、漫画さえ読めていればしあわせで過ごせました（少なくとも自分はそうでした）

漫画ばっかり読んでたおかげで国語はずっと得意教科でした。わからない字や言葉知識をどれだけ漫画で覚えたかな。

しかしこの頃は漫画アニメは大人や社会からはまだ認められておらず、「子どものおやつ」と呼ばれ、学と権威のある大人世界からはまだまだ低俗なメディアだと蔑まれておりました。「漫画に書いてあることなんかウソデタラメばっかりじゃないか、本気にするんじゃないよ」と冷笑されるものだったんですよ。一般的に小学校高学年になると親から「漫画ばっかり読んでないで勉強しなさい」と叱られ、子どもは漫画アニメを少し肩身を狭くして「あんまり夢中になってはいけないもの」として楽しんでいたのですが、うちはかような環境だったのでそんなに小言も言われなかった方だと思います。でもその風潮にはよくギリギリと悔しがっていた記憶があります。大人はすぐ漫画をバカにするけど、漫画はすごいんだぞ。両親だって学校の先生だって知らないことが漫画にはたくさん書いてある！と鼻息荒くしてました。そして早々に将来の夢は漫画家で、小学校低学年の頃から画用紙にコマ割って漫画を描き始め「将来は漫画家になる！」と決めていました。
「なりたい」じゃなくて「なる」と友達に話してた記憶があります。全く根拠なしですが（笑；）。人生は「思い込み」である程度なんとかなってしまうものです…（体験談）

あ、ペン入れは最初は青ボールペンでした。雑誌の印刷が青インクが多かったので青で描かれてると思っていたんですね。最初に描いた漫画は兄妹ゲンカがネタでした。うちは兄貴と二人兄妹だったのですが、この頃仲が悪くて毎日ケンカしてたんですよね^^;