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ペットショップというビジネス:第2章 さらなる錬金術

前回は、ペットショップから子犬をお迎えすると、「別料金」がかかることをご紹介しました。納得してお支払いするなら、他人がとやかく言うことではありません。他にもこういった類の商売はあり、個人的には悪い印象を受けます。それも、人それぞれということで…。

さらにお金がかかるシステム!

でも、まだまだ色んな仕組みがあります。オプションではありますが、「ほっとサポート」。お値段を見て、抱っこしていた平蔵を落っことしそうになりました(死んでも落としませんが…)。

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178,400円
じゅうななまん…

生体価格によって金額が違うみたいです。例によって、ウェブサイトで調べました。この会社のサイト、デザインは綺麗なのですが構成が複雑で見づらいんです。このオプションについても複数のページに書かれており、内容や表現が微妙に違うので混乱しますが…何とか見つけました。

ほっとサポート

プラチナ

料金は、「ワンちゃん価格(税込)の18%+20,000円(税込)」だそうです。この場合:

¥880,000(ワンちゃん価格) x 18% = ¥158,400
¥158,400 + ¥20,000 = ¥178,400

という計算です。生体価格の約2割。内容によっては、ひょっとしてリーズナブルかも…。どんな風にサポートしてくれるのか見てみました。

これが、摩訶不思議…

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事故の補償は好印象

それぞれに制限がつけられています。亡くなった場合に代わりの犬や猫を迎えられる「生命保障」は、「加入期間中に」とあります。このペットショップグループが経営する動物病院のウェブサイトでは、「1年間」とされています。有効なのはお迎えから1年限定のようです。

もちろん、ワンコやネコちゃんは家族です。代わりはききませんが、事故も含めて対応するのは悪くないと思います。

「ここまでの充実したサービスは
(他のペットショップでは)ありません。」

と言っています。そこは認めましょう。

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なお、「お好きな子犬・子猫」という表現は誤解を招くので、直した方が良いとは思います。

あいまいな先天性疾患保障

「悪くないな」と思ったのはここまで。「先天性疾患保障」について、条件がはっきりしません。ペットショップのページには「代犬・代猫または手術費一部保障」とあります。期間の明記はなく、終生サポートの印象を受けます。

一方、動物病院のページでは、「1年間の先天性疾患保証(手術費保証)」としています。期限は1年に限られる反面、手術費に「一部」の制限はかからないようです。(まぁ、「全額」とも書かれてはいませんが…。)また、「代犬・代猫」は書かれていません。

手術費用の負担が一部なのか全額なのか、または何割・いくらという上限があるのか。期間は1年なのか終生なのか、代犬・代猫という選択肢はあるのかどうなのか、すべてがあいまいです。

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とはいえ、そういった点は契約時に確認することで、後々のトラブルは防げます。摩訶不思議なのはもっと根本的なところにあります。

顧客負担なの?

「そもそも論」として、この「先天性疾患保障」が有料なことにすごく違和感があります。何かおかしいと思いませんか?

「お迎え後に発症する可能性のある生まれつきの疾患をサポートします」(原文ママ)

と書かれています。「言葉尻を捉える」ようですが、まず、

生まれつきの疾患を発症する可能性のある子を売っているんですか?

もちろん、人間も含めて病気は事前に分からないものの方が多いでしょう。それは仕方ありません。以前ご紹介したように、遺伝子検査の技術が進んでも、すべての遺伝性疾患が検査で分かるわけでもありません。

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でも、ペットショップは子犬や子猫を「商品」として営利活動を営む生体販売業者、つまりプロです。¥880,000の商取引を行うにあたり、「発症する可能性のある生まれつきの疾患」大前提に置いているところにプロとしての責任を放棄している姿勢が溢れています。

まぁ、そこは「あえて」目をつぶるとしても…、

その補償のためにお客さんから「高額な」お金を取るという思考が一般的な社会の仕組みから大きく逸脱していると思います。

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事業者としての責任は?

まずは、生まれつきの疾患が発生しないよう、可能な限りの対策を講じるのが普通の取り組みでしょう。そこには当然、「仕入れ先」= 繁殖業者の質の向上も含まれます。遺伝性疾患を発症しないような繁殖をさせることは、ペットショップ運営企業の責任でもあるはずです。

で、万全を期しても、100%病気を排除することはできません。それは仕方のないことです。でも、その時に備えた補償の費用を

客が負担するんですか?

「生まれつき持っていた」疾患の補償に、期限があるんですか?それも、わずか1年…

あいまいな情報発信

その他の項目についても見てみます。手術費用のサポートが受けられる「ソケイヘルニア」と「陰睾丸」についても、動物病院のウェブサイトには:

「デベソ・ソケイヘルニア・陰睾丸の手術費用(販売時に説明したものについて)」

と書かれています。お迎えする時にお店から告知を受けた場合のみ、手術が必要費用のサポートが受けられるようです。一方、ショップのページには:

獣医師によりデベソ・ソケイヘルニア・陰睾丸の手術が必要であると判断された場合、手術費の一部を保障いたします。

と書かれています。獣医師の診断とありますが、「販売時に説明したものについて」という限定はされていません。また、手術費の負担は「一部」と書かれています。

購入時の告知が必要かどうか、負担が費用の全部なのか、一部だとすれば上限は、などよく分かりません。ここも、契約書をすべて読み込んで詳細を確認することが肝要です。

納得できれば加入すればよいし、不要だと思えば入らなければいいのですが…。どちらも、同じ運営企業による公式ウェブサイトの情報です。雑な情報発信から、企業としての姿勢が読み取れるような気がします。

その他の内容

そのほかの「サービス」についてはよく分かりません。動物病院のクーポンやお店の割引など、期限や施設に制限があります。使えば、ペットショップ運営会社にもメリットがある仕組みでしょう。ウェブサイトにあった、そのほかの項目はこんな内容でした:

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本当にgreedy

そのほかにも「ごはんセット¥32,000(税込)」などいくつかオプションが書かれていますが、その辺は飼い主さんそれぞれの判断だと思います。とにかく不思議なのは、本来、事業者側が負担すべきだと思われるものを、パッケージとして客に高額販売する姿勢です。

ちなみにこの企業、ペット用品ショップも運営しているようです。その名は「GREEDY」!ある英英辞典には、"always wanting more food, money, power, possessions etc., than you need" とあります。直訳すると、

「必要以上の食べ物、お金、力、所有物などを常に欲しがるさま」

で、通常はお金に汚いイメージがとても強く、「強欲」とか文脈によっては「金の亡者」みたいに訳すことが多いです。

「greedy」は
まさにこんな人やこんな会社
のことを言います

前回も書きましたが、こうしたシステムはペットショップ業界全体のやり方のようです。次回はそんなことをご紹介します。結構な老舗で「これは素晴らしいやり方かも!」と思っていたお店も、おんなじだったのはショックでした…。

今回のキーメッセージ:「オプション」購入の際は、契約書をよく読みましょう。特に目立たない所。