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【超ショートショート】(120)~地球にやって来た宇宙人~☆ASKA『UNI-VERSE』☆

地球の森の中で少年がひざを抱えて泣いている。

「どうしたの?」と尋ねる人。

少年の話では、
家族が不治の病にかかり、
みんな死にそうだという。
それは、少年の家族だけでなく、
この森に住む人の多くが同じ症状だった。

少年が住む村までやって来ると、
ある住民が教えてくれた。

「この森の奥に、工場が突然出来てな。
何を作っているのか教えてくれないが、
その工場から出る工場の水が、
ひょっとしたら汚染されてるかも知れないと、
工場の人間が調べに来たんだよ!」

その調査報告は村の住民に知らせない代わりに、
原因不明の不治の病を予防するという
海外で開発された
ワクチンを打つように言ってきた。

一部の村の住民は、病から解放されたく、
言われるがままに接種した。
そして、みな数日以内に寝たきりになり、
衰弱していった。


小惑星探査機の〈アトム〉が、
銀河系の小惑星から無事に戻ったとニュース。

〈アトム〉の採取した微粒子を分析する中で、
〈アトム〉のデータの中に、
研究者の誰も見覚えのないデータを見つける。

そのデータには、
この地球には、宇宙から多くの宇宙人が侵入。
それぞれの国の人になりすまし、
地球を乗っ取ろうとしているという。

なぜ乗っ取ろうとするのか?

それは、データには、
地球が自らに光を失い出しているからとある。

つまり、かつての地球は、
どの星から見ても青く、
それは大変に美しかったという。

だが、人間が地球環境を破壊しはじめてから、
すっかり地球は本当の青さを失った。

データの最後には、
「もし地球を元の青い地球に戻したければ?」
とあるが、
「その答えは・・・」
でデータが終わっていた。

一人の研究者が〈アトム〉に残る
微粒子をいくつも採取し分析をした。

その中に、大変興味深いモノがあった。

それは、かつて銀河系に存在していた
ハート型の小惑星〈ユニ〉

この〈ユニ〉は、
ユニ人によって、今の地球のように、
環境を破壊していった。
すると、環境破壊された環境を好む宇宙人たちが
〈ユニ〉に定住すると、
一気に〈ユニ〉は本来の姿を消した。
それからしばらくして、
誰も住めない環境になったとき、
〈ユニ〉自身が自らに消滅の道を選んだのである。

その今はもう存在しないはずの
〈ユニ〉の微粒子が、
〈アトム〉に付着していた。

〈ユニ〉の微粒子を調べると、
あの少年の森で発生した
不治の病を治す効果があると、
研究から発見。

なぜ不治の病に効くのか?

それは、
あの森の工場がユニ人が作ったからである。

なぜユニ人が?

それは、
〈ユニ〉が自ら消滅する前に脱出したユニ人が、
この地球を目指してやって来たのだ。
彼らは人間が住まない森に工場を作り、
かつての〈ユニ〉と同じ生活をした。
だがそれは地球にとっは環境破壊でしかなかった。

ついに世の中に宇宙人が地球を
乗っ取ろうとしていると、
世界中にユニ人の存在が報道されると、
ユニ人は防衛のために戦いを始めた。

その戦いは、
地球人の知る武力による戦争ではない。
どちらかというとインドアな戦争だ。
つまり、地球人に気づかれないうちに、
地球人の身体の健康を奪い、
身動きができないようにするもの。

それが、あの少年の森で起きていたことだった。
あの森を実験場にして、
人間になりすまし、
予防として偽のワクチンを接種させ、
時を待ち地球を乗っ取るという計画だった。

ロシアで宇宙船を開発する、
世界的にも有名な日本人の九段下博士が、
ある宇宙船の開発に成功。

九段下博士は、
早い段階から地球にユニ人が
侵入していることを知っていた。

九段下博士によれば、
「彼らユニ人は、この地球では生きていけない。
早く地球から脱出させないと、
地球おろか宇宙自体が消滅してしまう。」

ユニ人とは、
宇宙にとってあまりにも特別な存在だと
博士は論文をかつて書いていた。

~~~~~
〈ユニ〉は宇宙のありとあらゆる所に、
ハートを持ち込んだ。
彼らから与えられたそのハートは、
地球ならば、葉を形作り、花びらを形作り、
人間の身体にすらハートを与えられている。
もし、宇宙に〈ユニ〉が存在しなければ、
心にもハートを持つことはなかっただろう。
~~~~~

九段下博士の言う〈ユニ〉のハートは何か?

博士は「それは愛」だと言った。

九段下博士は、
ユニ人脱出用に開発した
宇宙船「スペースアトム」に、
急いでユニ人を乗せるように、
各国の軍隊に要請した。

ユニ人が全員「スペースアトム」に乗り込むと、
宇宙の彼方へと飛んで行った。

ユニ人が向かった先は?

九段下博士によれば、
銀河系の奥に、
地球からは何億光年の距離に、
〈ユニ〉に似た小惑星があるという。
その惑星の名は〔バース〕
〔バース〕は地球のように、
人が住んでいたが、
いつしか人が居なくなって、
自然だけが残ったとてもきれいな惑星。
見た目は地球のように青さがあるものの、
地上の雰囲気は違うという。

さて、ユニ人が
目的地〔バース〕に到着するのは、
まだまだ先の話。

そして、ユニ人が森の中に作った工場は、
すっかり宇宙人研究所として、
多くの研究者が集まり、
ユニ人が残した公害の治療にも当たった。

ユニ人が残していったあらゆる物質は、
地球にとって、使い方次第では、
有効なものばかりだった。

その中の1つに、
音波治療というモノがあった。
〈ユニ〉はもともと、
音楽発祥の惑星と言われ、
音色を作ったのはユニ人だと言われている。

ユニ人が作り出す音色は、
まるで催眠術をかけるように、
人々のあらゆる痛みから解放されるという。

そこから、
地球では音楽の有効性を発見し、
人々はことあるごとに
音楽を興じることを楽しんだ。
今もそれが続いている。

九段下博士によれば、
音楽だけは
おそらく宇宙共通の言語になるだろうと。
つまり、音さえあれば、
音に誘われる躍りさえあれば、
言葉が互いにわからなくても、
理解しあえるということだ。

スペースアトムが地球に帰還する頃、
あの最初に出会った少年の住む森の病は
すっかり消滅。
その少年も九段下博士の下で研究者になった。

彼は九段下博士が亡き後、
博士の遺志を引き継ぎ、
新たな宇宙船を開発。
その名は《ユニ・バース》

九段下博士の遺言には、
「また必ず地球にユニ人が助けを求めてくる。
その時の助けのために、
一刻も早く新しい宇宙船を開発せよ!」

そして、彼は、
再び地球に助けを求めてきたユニ人を乗せ、
研究者になった少年も
《ユニ・バース》に乗り込み、
新しい惑星へと飛び立って行った。


☆☆☆☆☆
「ねぇ、パパ!〈ユニ〉はどれ?」

「〈ユニ〉かい?あのハート型の赤色だよ!」

「あなた!坊やがのぼせちゃうから、
早くお風呂から出してちょうだい!(怒)」

「わかったよ!
じゃあ坊や、お身体拭きましょうね!」

九段下博士は、
毎晩まだ3歳になったばかりの息子をお風呂に入れ、
博士手作りの宇宙船ごっこを楽しんでいた。

博士言わく、
「宇宙船研究者にするための勉強」として、
宇宙や宇宙船の構造を教え込んだ。

そして毎晩奥さんから怒られることとは?

宇宙船に見立てた
博士お手製のペットボトルロケットを
お風呂で飛ばすと、こうなる。

「あなた!いい加減にしなさい!
もう何回鏡を壊してるのかわかってるの?!(怒)
もし今日もロケット飛ばしたら、
夜はおあずけよ!いいのね?!(怒笑)」

「おあずけは・・・困る(汗)」

「じゃあ言うこと聞きなさい!わかった?」

「は~い!(苦笑)」

「それでよし!(嬉笑)」


(制作日 2021.10.1(金))
※この物語はフィクションです。

今日は、
2008年10月1日発売
ASKA『UNI-VERSE』
発売から今日で「13周年」。

今日は『UNI-VERSE』を参考に、
お話を書きました。

地球規模的な願いが込められた歌なので、
地球規模的な設定にしました。
最後は、あまりの大きい設定に、
逃げ場のオチを作ったつもりです。
研究者とは、
どこに居ても研究一筋という
意味合いも込めてみました。 


追記(2021.10.2(土))
最後のお風呂のお話は、
博士から我が子へ、
博士としての願いのリレーをしている、
そんな思うと表現したつもりです。

『UNI-VERSE』の歌詞に、
“願いのリレー” とあるのがその理由。

この“願いのリレー”は、
谷川俊太郎さんの“朝のリレー” を参考に、
書かれたものです。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~

参考にした曲
ASKA
『UNI-VERSE』
作詞作曲 ASKA
編曲 澤近泰輔
(2008.10.1発売)
YouTube
【ASKA Official Channel】
☆『UNI-VERSE』Music Video ☆
https://m.youtube.com/watch?v=imJtcPwEuy8
★『UNI-VERSE』ライブ映像★
https://m.youtube.com/watch?v=4hOOeMWMoGU

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