見出し画像

【超ショートショート】(129)~Who are you? ~☆CHAGE&ASKAアルバム『TREE』☆

一ぴきのねこが、
人も歩けない細い橋を歩いている。
橋の下は海。

ねこが橋を渡り終えると、
大きな木があるおうちを訪ねた。

「すみませ~ん!」

ねこがそのうちの玄関でそう声をかけると、
おうちの中から、一人の男の人が現れた。
見た目は、好青年な笑顔が素敵な男の人。
ねこはすっかり好きになっていた。

「いらっしゃい!今日は何かな?(笑)」

この大きな木のおうちは、
何でも売っているお店屋さん。

ねこが住む島にはお店屋さんがないから、
いつもあの細い橋を渡って
ここに買い物に来ている。

そうだ!
ねこの名前を紹介しよう。
ねこの名前はクルミの実から産まれたから
〈クルミ〉という。

クルミは、
ある日クルミが産まれ今も住んでいる島
〈ポケット島〉。
なぜポケットというかだけど、
島を上からみると、
洋服のポケットみたいに、
2ヵ所の洞窟の入り口がある。
その見た目から〈ポケット島〉
と名付けられたらしい。

クルミが買い物に来た隣の島は〈大木島〉 。
〈大木島〉の由来は、
屋久島にあるような大きな木が、
島のあちこちにあることからだという。
またはこう言われてもいる。
大きな木な木を島から持ち出してはならない!
もし持ち出したならば、
この島は大変なことになる。
そんな言い伝えを守らせるために、
あえて島の名前に〈大木〉と
入れたのではないかと言われている。

さてクルミの買い物に戻ると、

「今日は、ポケット島にいるモーツァルト爺さんが
風邪を引いたから、お薬を買いに来たの。」

クルミは無事風邪薬を買うと、
口に買い物袋をくわえ、
あの細い橋を渡り始めた。
時々海から巻き上げられる風に
細い橋が揺らされる。

なんとかクルミはポケット島に戻ると、
モーツァルト爺さんのうちに急いだ。

「モーツァルト爺さん!お薬買ってきたよ!」

すると家の中からモーツァルト爺さんが出て来た。

「さぁ寒かっただろう!おうちに入ろう。(笑)」

クルミはモーツァルト爺さんのおうちに入ると、
急いで風邪薬を取り出し、爺さんに渡した。

「ありがとう。さっそく飲むね。(笑)」

しばらくすると風邪薬が効いた爺さんが
寝息を立ててベッドで眠る。

クルミは、
モーツァルト爺さんが作った音楽を聴くために、
レコードの電源を手で押した。
そしてクルミは爺さんが入れてくれた
ホットミルクが人肌に冷めた頃、
ペロペロペロと飲み干し、
ソファの毛布にくるまり、
夢の中へ遊びに出掛けた。

クルミが夢の中で、
猫じゃらしのオモチャを捕まえたり、
ボール遊びのボールを投げたり、
夢の中で夜を迎えて、
ようやく現実の世界に戻って来た。

「クルミちゃん!お目覚めかな?(笑)」

クルミは突然現れたモーツァルト爺さんに驚き、
飛び上がると、

「おやおや、驚かせてごめんね。(笑)」

そう謝る爺さんを見て、
クルミは逆に驚かせて悪かったと、
爺さんの脚にほほずりして謝った。

「大丈夫だよ!私なら!(笑)」

「にゃん!(笑)」

モーツァルト爺さんのうちの窓に、
夜明け色した少しずつ
明るくなる空が現れる頃、
玄関から鳴き声がする。

「ニャ~ン!」

その声を聞いたモーツァルト爺さんは、
慌てて玄関を開け、
その鳴き声の主を部屋に入れた。

クルミは、
自分以外のねこに優しくする
モーツァルト爺さんを見て、
とってもヤキモチをやいてしまう。

クルミは朝のお散歩に出掛けると、
爺さんの裏口にたくさんの足跡を見つけた。

「あれ?これモーツァルト爺さんの靴!」

クルミはお散歩を終えると爺の家に戻る。
そしてクルミは、爺さんの靴を見た。

「あれ?違う!」

クルミは爺にこう尋ねた。

「モーツァルト爺さん!」

「うん?何かね。(笑)」

「あのね!
モーツァルト爺さんは音楽家でしょう?
だからね、
いつもの音楽をあのピアノで弾いてほしいの!
ねぇ、いいでしょう。(笑)」

モーツァルト爺さんはクルミのお願いを聞いて、
ピアノの前に座る。
そして、いつもの音楽とは違う
とっても下手な演奏をした。

「あれ?爺さんどうしたの?
まだ風邪かな?」

「うん、そうかもね。まだ少し熱っぽくてね!」

「じゃあきのう買ったお薬飲んでよ!」

「えっ、うっ、うん(困)」

モーツァルト爺さんは、
なかなか風邪薬を飲もうとしないから、
クルミはこんなに質問をした。

「ねぇ、モーツァルト爺さん!
どうしていつもの靴じゃないの?」

「あっ、それはね、
靴紐が壊れて修理に出したんだよ!」

「修理?どこに?」

「えっ、あ~、どこだったかな?
確か伝票が・・・(困)」

「でも爺さんさ、前に靴は、
この一つだけだって言ってたよ!」

「そうだっけ(苦笑)」

「いつもモーツァルト爺さんが履いている靴、
さっき裏口の玄関で見つけたよ!」

「へぇ~そうかい!(怖笑)」

「お前は誰だ!
モーツァルト爺さんをどこにも隠した!(怒)」

クルミの質問に、
ついに正体がバレたと思った偽物の
モーツァルト爺さんは、
クルミを捕まえようとして、
部屋中を走り回った。

クルミは急いでおうちから逃げ出し、
隣の大木島と繋がる細い橋をを渡った。

すると、
偽物のモーツァルト爺さんが追いかけてきた。

「おい!待て~、クルミ~!」

偽物のモーツァルト爺さんが
橋を歩く度に、変装が取れ、
見覚えのある人が現れた。

「お店屋さんの男の人?!」

「そうだよ!クルミちゃん!
おどかして悪かったね!
さぁ僕の所に戻っておいで!」

クルミは、その声に答え、
男の人の所へ歩く。

「そうだ!さぁおいでクルミ~!(怖笑)」

クルミは、
お店屋さんの男の人が絶対使わない
クルミを呼び捨てにしたことを
不審に思い、再び大木島へと
向きを変えて歩いた。

「チェ!バレたか!(怖笑)」

クルミが大木島のお店屋さんに到着し、
ポケット島での出来事をお店屋の男の人に話した。

「よし!モーツァルト爺さんを探しに行こう!」

クルミはお店屋さんの男の人と一緒に、
ポケット島に戻り、
モーツァルト爺さんのおうちに向かう。

すると、

「クルミ!クルミ!ここだよ!」

モーツァルト爺さんのうちの庭から声がする。

「モーツァルト爺さん?
どこにいるの?」

「クルミちゃん!あそこだ!」

お店屋さんの男の人が、
落ち葉の隙間から、
モーツァルト爺さんの手を見つける。
そして、その落ち葉をどけると、
本物のモーツァルト爺さんがいた!

「モーツァルト爺さ~ん(涙)」

「ごめんね!クルミ、怖かっただろう!」

(お店屋さんの男の人)
「良かった。良かった。(笑)」

モーツァルト爺さんは、
おうちに戻ると、
どうして偽物のモーツァルト爺さんが
ここに現れたのかを話してくれた。

「もともと幼い頃に一緒に音楽家を目指していたが、
あの者のうちが急に貧しくなってしまってな。
栄養不足で、耳が聞こえなくなってしまったんだよ!
でも、すぐには音楽家の夢を諦めきれなくて、
聞こえなくても作曲を頑張ったが、
全く音楽になっていなかったんだ!
それで音楽家の夢を諦めた。
そう思っていたが、
あの者に家族が出来、子供が音楽の優等生として、
ある王家の音楽家になったのが、
どうしても悔しかったそうだ!
それで私になり、子供たちや世の中を見返したいと
思ったそうだ!
それに、あの者には、
そんなに人生の時間が残っていないと話していた。
だから最後のお願いとして、
偽物のモーツァルト爺さんにならしてほしいと。」

「それで、庭に隠されたの?」

「そうだ!1週間だけという約束でな。」

翌朝、
大木島の海岸に偽物のモーツァルト爺さんが
見つかる。

偽物のモーツァルト爺さんは、
すっかり自分の記憶を失って、
戻る家も思い出せずにいた!
だが、
病院にあったピアノを目にすると、
「弾きたい」と言って、
譜面もないまま何かの音楽を演奏。

(看護師)
「これってモーツァルトじゃない?
あの有名な曲!(笑)」

偽物のモーツァルト爺さんは、
自分の記憶と引き換えに、
音楽家の才能を手に入れていた。
なぜそうなったのかはわからないが、
ポケット島にいたとき、
偽物のモーツァルト爺さんは、
ポケットの一つの洞窟に入り、
洞窟に祀られた神様に
音楽家になる夢をお願いしたという。

ポケット島の洞窟に祀られた神様は、
もともと音楽の神様として、
世界中の音楽家がお参りに来ると有名だった。

だがポケット島が大きな嵐によって、
もともと陸続きだと岬から島になってからは、
お参りに訪れる人もいなかった。
ポケット島の岸壁は、常に荒れており、
海から島に入ることが困難だった。
だから、大木島から橋を渡したのだ。

さて、
クルミと本物のモーツァルト爺さんは、
偽物のモーツァルト爺さんが招き入れた、
新入りのねこ〈ひとみ〉と一緒に、
末永くポケット島で暮らしたという。


(制作日 2021.10.10(日))
※この物語はフィクションです。

今日は、
1991年10月10日発売 アルバム
CHAGE&ASKA『TREE』
発売から今日で「30周年」になります。

そこで、
このアルバムの曲タイトルをヒントに、
お話を書いてみました。

絵本ふうにしたかったんですけど、
ちょっと難しかったです。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~

参考にした曲
CHAGE&ASKA アルバム
『TREE』
(1991.10.10発売)
☆収録曲☆
1.僕はこの瞳で嘘をつく
2.SAY YES
3.クルミを割れた日
4.CAT WALK
5.夜のうちに
6.MOZART VIRUS DAY
7.誰かさん~CLOSE YOUR EYES~
8.明け方の君
9.CATCH&RELEASE
10.BAD NEWS GOOD NEWS
11.BIG TREE
12.tomorrow

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?