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【超ショートショート】(132)~あの頃の忘れもの~☆ASKA『HELLO』☆

子どもの時に犬に追いかけられたことがあった。

子どものお尻を噛む黒くて大きな短毛の犬を
目の前で見た。

それから、犬が怖くなり、
近づくこともなくなった。

自分が少し大きくなり、
犬を飼ってるなんて知らないで、
お友達のお家にお呼ばれした。

見た目はモップの白い小さな犬に出会い、
一緒に遊ぶことができた。

だけど、大きな犬は怖いままだった。

またそれから自分が大きく成長したら
犬が怖かったことなんて忘れていた。
そんな時、あるお家で飼われていた
雑種の日本犬に出会った。
体毛はオオカミのような
フカフカモフモフのはすが、
シャンプーなどの手入れもされないでいい、
屋外で飼われていたから、
手触りは硬いという印象だった。

その犬は短いお散歩用ほどの長さの鎖に繋がれ、
ほとんどお散歩をしないという。

誰もお散歩に連れていく人がいなかった。

子どもの頃の犬の怖さを越えて、
最初は可哀想という同情から
その犬のそばに近づいてみた。

おやつ、ごはんとあげ、
少し仲良くなった頃に、
背中を撫でてみた。

そして、一大決心。
小さな身体で大きな犬の散歩に挑戦。
犬はとても嬉しかったのか、
家を出ると広場までの道を
まるでスキップしているように歩いた。
だけど、
飼い主でもない自分の歩幅に合わせるように、
引っ張りもせず
自分の瞳を見ながら歩いてくれた。

犬が草原のような広場に出ると、
おもいっきり走れる喜びで、
自分がリードを離してあげると
鳥のように走り回った。

飼い主でもない自分が投げたボールを、
きのう会ったばかりの自分に
その犬はそのボールを届けてくれた。
何度も何度も何度も。

でも、少し余裕が犬に生まれたのか、
突然広場から隣の森に入ってしまった。
人間の脚では到底追いかけられない速さで、
姿を消してしまった。

仕方なく、たくさんの後悔をしながら、
犬の命を守るために、
懸命に犬の名前を呼び探し回った。

感覚的に1時間、2時間と思える位経った、
わずか10分程度の時間の迷子で、
犬は自ら森を抜けて
飼い主でもない自分を目指して帰って来た。

あの瞬間は忘れない。

あんなに笑顔の犬を見たことがなかったから。
それに飼い主でもない自分を信じてくれている、
好きになってくれていることが、
自分では驚きだけど嬉しかった。

その犬とは2泊3日だけの絆で終わった。

あれから、君が過ごした最後の姿も聞いたよ!

「君はもう人間が嫌いなはずたよね。
自分が帰った後の状況は変わらなかった。
もっと長生き出来ただろうに、
ひょっとすると君は、自ら命の期限を決めて
自由になれる空へと帰っていたの?」

そんな犬とのエピソードを抱えながら、
「連れて帰りたい!」と言った、
その願いも叶わず、
予想通りの哀しみ結末となった。

大人になると、
犬を飼う機会に出会う。

ケージの中で生まれてから半年間も
飼い主さんを待っている大型犬がいた。

あの頃、
あの雑種の日本犬にしてあげられなかったことを、
してあげようと、どこかで思った。
こんなに大きくなるまで、
身動きも出来ないケージで待った、
君の二代目とも言えるその大型犬を、
やっと君の代わりに連れて帰ることができた。

ただ君と違ったのは、
お散歩が出来なかったこと。

アウトドアで暮らす犬と
インドアで暮らす犬では、
犬自身の怖いものが違った。

君の二代目は、
いくつかの病をして、手術も2回、
輸血も受けながら、何度も命の危機を脱し、
先生が誉めるくらいの長寿となって、
君と同じ所へ行った!

もし今、君たちにしてあげられなかった、
そんな忘れものがあるとしたら、
それは・・・
もっと遊んであげたかった。
もっとお散歩してあげたかった。
もっともっともっと・・・。


(制作日 2021.10.13(水))
※この物語はフィクションです。

今日は、
10月17日に発売記念日を迎える
ASKAさんのベストアルバムでありながら、
選曲はファンの投票で決定した
『We are the Fellows』
発売から「3周年」になります。

そのアルバムに収録されている1曲が、
今日のお話の参考にした『HELLO』

歌詞に、
~~~~~
風と犬を連れながら・・・
~~~~~
というフレーズと、
今日10月13日(水)の夜8時から、
ASKAさんがYouTubeにて生配信した
『ASKA95分スペシャル~前回と何も変わらない』
そこでふとASKAさんから発せられた言葉
「40年前の忘れもの」
ASKAさんが子供の頃にしていた剣道を、
あるきっかけで40年ぶりに復帰した、
そんなお話をされた時に発せられた言葉でした。

誰にでも40年とは言わずとも、
忘れものはあるもので、
それを『HELLO』の歌詞の中からも感じ、
~~~~~
HELLO HELLO HELLO あれやこれや考えても
HELLO HELLO 音の一つぐらいしなきゃ嘘だよね
ドアを開けるなら
~~~~~
そのドア、
今回のお話では「犬が怖い」と、
「犬を救えなかった後悔」を
開けてみた。
そして忘れものの回収は出来たものの、
新たな忘れものが生まれた。

人生ってそんな繰り返しなのかもしれないなと。

忘れものは、
失敗や後悔や挫折でも、
生きているうちになら、
HELLOって言いながら、
何度もそのドアや、
出会いを取り戻せるのかも、
そんな気分にさせてくれる曲だと、
今日は思いました。  

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~

参考にした曲
ASKA
『HELLO』
作詞作曲 飛鳥涼
編曲 武部聡志
☆収録アルバム
ASKA
『We are the Fellows』
(2018.10.17発売)

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