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【超ショートショート】(11)☆百花繚乱☆~ミツバチに憧れた男~

ミツバチに憧れた男がいた。

養蜂家(ようほうか)の家に生まれた
その男にとってミツバチは、
友であり、家族であり、恋人だった。

世界中には、
たくさんの種類のミツバチが存在する。
その中でも男が愛すれど遠き存在のミツバチは、

「繚乱(りょうらん)ミツバチ」

この「繚乱ミツバチ」は、
一般的なミツバチと違って、
まるで渡り鳥のように、
世界中を飛び回ることができるという。

なぜなら、
蜂の生態では、女王蜂を筆頭として、
分蜂(ふんぽう・独立)を繰り返し、
絶えず仲間を増やし、住む巣を変え、
生息地域を増やしていく。

また一般的なミツバチに比べて、
「繚乱ミツバチ」の寿命は、
〈5年〉とも言われ、
彼ら「繚乱ミツバチ」は、
そのことを知ってか知らずか、
世界旅行を楽しむのだ。


ミツバチに憧れた男は、

「繚乱ミツバチ」になりたい

というのが夢であった。
飼う、育てる、手に入れたいという夢ではなく、
自らが「繚乱ミツバチ」になりたいという
変な夢を抱く子ども頃だった。
大人になった今でも、
男の夢は変わらなかった。


ミツバチに憧れた男は、
ある日、
実家近くの森の入り口に、
「繚乱ミツバチ」を見つける。

もちろん男は、
そっと後を追った。

森を抜け、
一瞬見えなくなる「繚乱ミツバチ」、
男は心であわてて、
行動は静かに急いで、
男も森を抜け、空一面になった時だった。
あと一歩で転落してしまう崖の上に
男は居たのである。
男は、崖下をのぞきこむと、
後ろから、
「繚乱ミツバチ」の羽の音が聞こえる。
素直に音のするほうを、
男が振り返った瞬間、
風が吹き、上昇気流を作り、
あっという間に男の身体を浮かび上げ、
そのまま崖下へと男を運んでしまった。


男はしばらくして、意識を取り戻すと、
奇妙なことを語りだした。

~~~~~~~
僕は「繚乱ミツバチ」になり、
世界中を飛び回って来た!
あの幻(まぼろし)と言われる
花も見たし、蜜も、花粉も取って、
蜜を少しだけ、こっそりと味見した。
~~~~~~~

男が言う〔幻の花〕というのは、
中国の山里離れた秘境地の深い谷の中にある
崖の途中にしか咲かないという

「百花(ひゃっか)の花」

この花を一目見るだけで、
見た者の安泰と幸福な人生を約束すると、
中国のある地域では伝えられている。

また、
女性が「百花の花」のはちみつを
一口でも食せば、
一生若々しく美しくいられ、
もし、
容姿や健康にコンプレックスなどがあれば、
容姿ならば、
神様の手による天然の整形手術を施され、
生まれながらの美しい容姿を与えられる。
また健康ならば、
どんな病も身体的不自由も治してくれる。

また、
女性が「百花の花」の花そのものを食せば、
人生で一番愛する人と一緒になれ、
末永くラブラブでいられることを約束される。

ただ、
「百花の花」の花やはちみつを手に入れることは、
至難の業。
なぜなら、
「百花の花」が咲く場所を知っているのは、
「繚乱ミツバチ」だけだからだ!
たとえ、
人間が「百花の花」を見つけても、
命の保証はないのだ!
これまで、
世界中の人が「百花の花」を探し、
手に入れようと努力したが、
皆、生きて帰って来なかったと、
里山の住民たちが話している。


ミツバチに憧れ、
崖から落ちたら憧れの
「繚乱ミツバチ」になったという男は、
いろんな旅を楽しんだと話す。

その中でも思い出になっているのは、
アフリカのジャングルから、
空を飛び降りたことだという。

~~~~~~~~
あの「ジャングル大帝」の世界を見たんだ!

ジャングルを抜けた高台から、
下の森へと急降下するあの気持ち良さ!
自然のジェットコースターだったよ!
~~~~~~~~

憧れの「繚乱ミツバチ」になったと話す男は、
100メートル以上の高さから
落ちたにもかかわらず、
ケガの一つもしていなかった。

男が発見された場所には、
ラベンダーの満開の花たちと、
実家で育てているミツバチたちが、
男を守っていたという。


(制作日 2021.6.15(火))

※このお話は、
あくまでもフィクションです。
実在しない蜂であり、花です。

今日のショートショートは、
6月になるとラベンダーが咲く季節。

たまたま近所で、
咲き始めのラベンダーを見つけたとき、
ちょうどミツバチたちが蜜や花粉を取っていた。

そのことからヒントをもらったのと、
はちみつには「百花はちみつ」という、
「百花」と名付けて販売されるはちみつもある。

「百花」と名付けられるはちみつは、
その名の通り、
たくさんの花の蜜でできたはちみつ。

もちろん薔薇だけのとか、
一つの花限定のはちみつもあるが、
「百花」のはちみつになると、
採取される地域で味が変わり、
やっぱり同じものは存在しない。
その年だけの贅沢なはちみつの味が
なのかもしれません。

と、こんなにはちみつを語ると、
はちみつ好きって思われると思いますが、
一年に一度、口にするかどうかの、
はちみつとのお付き合いレベルです。

今日の話の
「繚乱ミツバチ」と「百花の花」は、
ASKAさんの曲『百花繚乱』から、
「愛すれど遠き」は、
ASKAさんの曲 『恋』から、
ヒントをもらいました。

特に『百花繚乱』の世界観を、
今回の話で表現したつもりも、
できたつもりもありません。
聴く人によって、
いろんな情景が見れる、
たまたまその一つが、
今日の「ミツバチに憧れた男」の話だった、
そう解釈してください。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~~

参考にした楽曲は、
ASKA
『百花繚乱』(2020年)
作詞作曲 ASKA
★収録アルバム『Break of Bless』
(2020.3.20発売)

ASKA
『恋』(1991年)
作詞作曲 飛鳥涼
★収録アルバム『SCENEⅡ』
(1991.6.5発売)

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