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【超ショートショート】(38)☆judge by myself☆~手元の小さな窓の仮想世界~

毎日、僕らは、
手元にある小さな窓を眺めるながら、
その中の仮想世界で、
喜怒哀楽の経験をしている。

ある時、
こんな投稿をしてみる。

「それでは、
相手も怒りますよ!
自業自得じゃないですか?」

僕は、自分の経験を土台に話したつもりだったが、
次のコメントには、

「お前に何が分かるんだ!
偉そうなことを言うな!」

と、結局ブロックされる始末だ。


この小さな窓の仮想世界は、
良い事よりも、悪い事の影響が大きい。
さっきのように、悪い話に乗ってしまうと、
自らも苦しめることを知る。


ある日のネットニュース、
都会の駅で、人身事故があったと。

~~~~~~
本日、お昼過ぎの渋山駅で、
人身事故がありました。
白杖を持った方が、
歩行中にバランスを崩して転倒。
そこに上り電車が進行してしまい、
急ブレーキをかけるも、
間に合わなかったそうです。
ただ幸いにもその男性は軽症、
命に別状はないということです。

今回の男性の転倒は、
警察の調べで、
目撃者によりますと、
若者グループの数人が置いていた荷物が、
点字ブロックをふさぎ、
その荷物に躓(つまず)いて、
線路側に男性が転倒したということです。

あと数十センチ線路側に転倒していたら、
男性の命は助からなかったと、
取材に答えた反対側のホームにいた女性の話です。
~~~~~~~

実は、この事故現場に僕はいた。

しっかり同じホームで目撃していた。
だが、事故発生後、
警察到着と同時に、
到着した同じホームの向かえに進行してきた
下り電車に乗ってしまった。
どうしても今日中に終えないといけない
重要な交渉のために、
事の推移も見ないまま、仕事へ。
そして帰宅。

ネットニュースに続いて、
テレビのニュースを見ると、
同じ内容を話している、
それも各局。

翌日、
荷物を置いたとされる若者たちの様子は、
事故後、
すぐに動画が拡散されていることを知る。

警察の取り調べを受ける様子や、
女の子は泣きながら、
今にも気を失いそうな精神状態で、
その場に居させられている様子だった。

そして、
彼らの個人情報までも突き止められ、
また拡散。

僕があの日、あの時、
目撃した真実と、
今、小さな窓の仮想世界の作り話と、
とても乖離(かいり)している。

人身事故から、1週間後、
ネットもテレビも、
ニュース速報で、謝罪・・・。
~~~~~~
1週間前の渋山駅での人身事故ですが、
当初、現場での目撃情報と、
警察の調べで、
当時現場のホームに居合わせた
若者グループが置いた荷物が、
白杖を持つ男性の転倒原因だと
発表されていました。

しかし、
昨夜、渋山駅の駅員室に、
女性が訪問し、
転倒事故は、
女性の子供が原因だと話したそうです。

そして、
白杖の、今回転倒し、軽症を負った男性にも、
警察が確認したところ、
「確かに子供の手が脚に当たったのは
覚えています。」
事故後、
転倒により、
脳震盪(のうしんとう)を起こしており、
警察の取り調べでも、
ドクターストップで時間が限られていたため、
正確な聞き取りが
出来ていなかったということです。

今回、報道にて、
若者グループを、
あたかも悪者とお伝えしたことを、
ここにお詫び致します。
大変申し訳ありませんでした。

軽症の男性の話と子供の母親からの話では、
男性が転倒する前に、
子供さんに、若者の女の子が、
走らないように、人にぶつからないように、
転んでしまった子供を起こす時に
話していたそうです。
そして、
今回の転倒事故の際に、
男性を救助し、
進行する電車を止めるために
緊急停止ボタン、そして合図をしたのは
その若者グループ。
さらに、
駅員や警察、救急に連絡したのも彼ら。
また、
事故後の男性の介助も行い、
そのおかげで、現場での救急搬送が、
大変スムーズに運んだと、
救急隊員からの取材でわかりました。
~~~~~~


やっと、
僕が目撃した真実が公表されたと、
胸を撫(な)で下(お)ろした。


この新事実により、
ネットで、若者グループを誹謗中傷した者は、
警察に連れて行かれたと、
後のニュースになっている。


だが、
一年後、若者グループの一人、
あの女の子が、
自ら命を・・・・・と。

命には別状はないという。


小さな窓の仮想世界で拡散した個人情報は、
若者グループの日常を、
すっかり奪ってしまった。
どんなに削除しても、
何処かに情報は残って、
また拡散を繰り返す。
終わりがない世界。
逃げ場のない世界。

ならばと、
仮想世界を見なければいいと思うが、
すでに身体の一部のように、
すべてのことが、
この小さな窓の仮想世界で済んでしまう。

財布にも、チケットにも、
身分証明書にもそのうちなるだろう。


僕は、
この仮想世界で、
どんな生き方をすればいいのだろうか?

(制作日 2021.7.11(日))
※この物語は、フィクションです。

明日7月12日、
2000年7月12日発売
ASKAシングル『good time』が、
発売から「21周年」を迎えます。

シングルなので、カップリング曲があります。
それが、今日のお話の参考になった
『judge by myself』

歌詞からは、
ネットの世界が参考に制作されたとは、
気づきにくいと思います。

2000年6月号の
CHAGE&ASKAの会報には、
ASKAさんがこの曲について話しています。
2000年当時、
アーティストの中でもいち早くネットを導入し、
ファンとの新しいコミュニケーションツールとして、
日々挑戦していた頃だと思います。

また、
ASKAさん自身が、
これまで世間に流布された
間違った作り話などが、
アーティスト活動において誤解を生み、
あたかも真実の顔をして、
ASKAさんやファンを苦しめる、
そんな場面を見てきて経験してきて、
1999年6月9日発売
CHAGE&ASKA『群れ』が生まれ、
そして、
このASKA『judge by myself』が、
さらに誕生しました。


21年前の作品ではありますが、
会報でのASKAさんのお話は、
今の日常を予言した内容です。

アーティストやミュージシャンなど、
クリエイティブなお仕事をする方は、
普通の人よりも2歩も3歩も先の未来を見て、
曲や作品を作って行くものだと、
そんなお話をASKAさんは、
時々します。

その結果が、
21年経つ今、
やっと21年前のASKAさんの思考に
追いついたのではないかと思ってしまいます。

アーティストの今の突飛な話しも、
後に訪れる未来なのだと、
ASKAさんのほか、
スタジオジブリの宮崎駿監督作品や
手塚治虫作品に見るような気がします。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~~​

参考にした曲は
ASKA
『judge by myself』
作詞作曲 飛鳥涼
編曲 松本晃彦
☆収録シングル
『good time』
(2000.7.12発売)
☆コンサート
『GOOD TIME』で披露。
~~~~~~
(歌詞の一部)

ダレた手を前について シャワーを浴びる
昨夜(ゆうべ)の騒ぎを流して 朝が始まる

時間に落ち合って 車に乗り込んで
少しだけカーテンに 息苦しさを感じて

京橋どんな スリルが待ってるかい
イカレタ仲間たちと 遊べるかい


今日はどんなに スリムが待ってるかい
judge by myself
judge by myself

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