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【超ショートショート】(292)~仲直りは感謝かな~☆CHAGE&ASKA『今夜ちょっとさ』☆


会社の先輩が、
いつもと違っていた。

「先輩?どうしたんですか?
なんか今日は元気がないですね。」
「うん、あっ・・・だ、大丈夫・・・よ」
「でも・・・変ですよ!」
「えっ・・・うん・・・」
「何があったんですか?」
「・・・」

先輩は、そのまま一言も話さず、
午前中の仕事をこなした。

お昼休み、
同僚の彼女は、一人で、
いつもの屋上で、
手作りのお弁当を食べていた。

「あのさ、ここいい?」

先輩が、
コンビニで買ったサンドイッチと、
先輩のお気に入りのコーヒーのペットボトルを
手にして、彼女の前に現れた。

「あっ!どうぞ」
「うん、ありがとう」

しばらく沈黙が続いてから、
先輩が少し覚悟を決めたような緊張感を
帯ながら、彼女にこう話に始めた。

「きのうね!」
「(口に入れたばかりのご飯を
急いで飲み込みながら返事する)
ふぁい!・・・(咳)ゴホッゴホッ!」
「(先輩に笑顔が出て)ごめん(笑)、
ゆっくり食べて」
「・・・(うなずく彼女)」
「それでね、この前、彼とケンカ・・・
じゃないわね。私が勝手に怒ったのよね?」
「・・・(彼女は問いかけられたことに
驚き、首を横に振る)」
「あっ!違う違う(笑)ごめん(笑)
・・・なんであの時、
あんなに怒ったんだろうって、
彼は何にも悪くないのにね。
一応、どうして怒ったのかとか、
本当は寂しかったとか、
彼にケンカしてからしばらくして、
自分が感じていた気持ちを伝えたんだけど・・・」
「なら、彼、
許してくれてるんじゃないですか?
この前、デートしたって話してましたし。
今さら、何悩んでるんですか?」
「うん・・・つまらないお話だね」
「いえいえ、そんなこと無いですけど、
ただいつも元気な先輩が暗いのは、
やっぱり心配になりますよ!」
「・・・うん、ありがとう・・・
きのうね、知り合いと話していて、
その人が、奥さんが不機嫌なお話をしてね。
それが、あの時の自分みたいなお話だったの」
「(彼女うなずく)」
「その人が、奥さんは時々不機嫌になるけど、
理由がわからなくてね。後で、どうして不機嫌に
なったのかを、奥さんがお話するらしくて、
どれもこれも大した内容じゃないんだって言うの」
「どんなことだったんですか?」
「例えば、寂しかったとか、
焼きもちとか・・・そんなこと(笑)」
「へぇ~」
「それでね、その人、歴史とか、
宗教とかとても物知りでおしゃべりで、
歴史のお坊さんのお話をしたりしてね。
人に腹を立てるのは、実は、
相手の事をね・・・」
「(彼女は息を飲むような返事をする)
はい!」
「・・・感謝してないって言うのよ!
私、それを聞いて、驚いてね。
“私、彼になんて酷いことしたんだろう”って」
「(彼女うなずく)」
「(先輩少しずつ目に涙が溜まりだす)
そんなこと初めて聞いたから、
私、その場で泣いてしまって。
そうしたら知り合いの人がね、
“大丈夫”だって。何が大丈夫?って
尋ねたら、
“今、その間違いにやっと気づけたから”って。
でも、そう言われても不安でね」
「それで今日暗いんですか?」
「うん、ごめんね」
「別にいいんですけど、
思っていたほど、
大変なお話でなくて良かったと思います」
「大変?」
「別れた!みたいなお話」
「(笑)」

その話をしてから、
先輩は少し元気になり、
午後仕事を少し微笑みながらこなした。

次の土曜のこと。

彼女が銀座の街を歩いていると、
先輩が彼とデート中。

お互い視線が合うが、
互いの様子を見るだけで、
言葉は交わさなかった。

月曜日、
先輩は会社に来るなり、
彼女に話した。

「おはよう、この前、ごめんね」
「あっ!いえいえ、でも今日は元気ですね!
彼と順調みたいで良かったですよ!」
「うん!(とても嬉しそうに笑う先輩)」

先輩は、
何で嬉しそうに笑ったのか?
について、彼女に話した。

先輩は、彼女に話した、
知り合いの奥さんの話や感謝の話を
彼にしたという。
その話を聞いた彼は、
先輩からの謝罪の言葉を受けて、
頭を撫でてくれたという。

「ずっと苦しませて、
こちらこそ悪かったね!
気づいてあげられてなくて(笑)」

そんな彼の言葉に、
先輩は申し訳なさと嬉しさで、
人生一番の号泣をした。

スッキリ顔で出社したのは、
そのためだったのだ。

それから先輩は、
人が少し変わった!

何をするにも、
何をしてもらうにも、
「ありがとう」が口ぐせになった。

(制作日 2022.11.30(水))
※この物語はフィクションです。


このお話は、
いい夫婦の日に、
確か思い付いて書き出したもの。

言いたかったことは、
怒る、腹を立てる、不機嫌になる、
これらどれも自分本位で、
目の前の人のことを考えていない。
つまり感謝がない。

相手の立場になって考えたなら、
怒ることも、
腹を立てることも、
不機嫌になることも、
たぶん間違っていることに気づくはず。

でも人って、
そうした教えを知らないと、
知らない本人はずっと、
怒る自分に、
腹を立てる自分に、
不機嫌になる自分に、
ずっと怒りを覚えるでしょう!

自分自身にも感謝がないことになります。

ということを思いながら、
今回のお話を書いてみました。

このショートショートでは、 
CHAGE&ASKAの曲や
ソロ曲を参考にしたり、BGMにしたりして、
CHAGEさんやASKAさんの曲を
ご紹介しています。
そのつもりで始めていました。
なかなかうまくできませんが、
楽曲の世界に迷い込み、
自分の思うままにお話を展開するのは、
結構楽しいものです。
調子が良いときは。

少し前は、
毎日でしたが、
無理のない範囲で、
毎日にこだわらず、
楽しく書けたものを
ここに残してみたいと思います。
お約束はできませんが。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)

https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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今日の選曲

CHAGE&ASKA『今夜ちょっとさ』
作詞作曲 飛鳥涼 /編曲 井上鑑
☆収録アルバム
CHAGE&ASKA
『RED HILL』(1993.10.10発売)






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