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【超ショートショート】(134)~失くさずに守ってきたモノ~☆ASKA『PRIDE』☆

「私の彼はね!(笑)」
と微笑みながら昔の恋の話をする
今年で90歳を迎えた真子さん。

「私が14歳の時に戦争が終わってね!」
と戦後の貧しい日々を話ながら、
どこか嬉しそうだった。

「ある日、私が買い物に出たら、
自転車の人にぶつかってね!(笑)」
と初恋相手に遭遇した出来事を、
ニコニコしながらも、
時々、無愛想だったその彼に怒っていた
当時の少女の表情を見せた。

「私が就職のために上京してね!」
家計の事情で大学に行くことを諦め、
幼い妹や弟、そして両親や、祖母のために、
働くことに決めた、
決意の上京とふるさととの別れを、
涙を流しながら真子さんは話した。

「私の就職先は、親戚の伝(つて)で、
ある大学の事務の仕事に就いたの。」
なかなか高卒の女性が就職するのは難しく、
何とか親戚の知り合いが勤めていた大学の
事務員が、急の退職を希望したことで、
人手を探している、そんなタイミングで、
真子さんは奇跡的に就職することができた。

「そこでね!(笑)」
ここから、
真子さんの懐かしい恋物語の始まりだ!

「ある日、事務室に男の人が訪ねてきて」
もう予想は付くと思う、
あの少女の頃に自転車にぶつかった、
その時の男(ひと)なのだ、
と、真子さんはその再会した日に
帰ったように話した。

「何度か顔を合わせるうちに、
一緒にお昼ごはんを食べるようになったの!(笑)」
と、まず学食で食べた最初のランチは、
“オムライス”と“ナポリタン”と、
ふたりが記念日に食べる想い出のメニューだと
嬉しそうに話した。

「初めてのデートはね!(笑)」
と話し始めるのかと思いきや、
何やらドキドキのときめく瞬間があったみたいで、
真子さんは照れてしまって、
なかなか話してくれないでいた。

「あの人が、転びそうになる私を助けてね!(照)」
と、横断歩道を青で渡ろうとした時、
突然左折してきた自転車に、
真子さんがぶつけられそうになりたり、
とっさに避けたら、脚をひねってよろけたら、
彼が抱きしめるように助けてくれたと、
真子さんは赤い顔して、
瞳をうるうると輝かせて話した。

「ふたりは交際してすぐに半同棲になってね!」
と、真子さんは嬉しそうに
話し始めたように見えたが、
次の言葉が思い浮かぶと、
だんだん寂しそうな表情になった。

「でも、あの人はなかなか家に帰らなくてね」
と、研究者の彼の仕事、
その仕事に向き合う彼の姿勢に、
どこか不安と疑問を抱いて、
真子さんは自分の彼女としての
理由を考えていたと話した。

「彼が時々帰るとケンカになってね(寂)」
と、彼女として、まず彼の健康を心配し、
その次に、ふたりの交際について
真子さんは彼と話したかったが、
彼は「仕事だ!」と逃げるように、
着替えと食事をして、
すぐに研究室に戻ってしまうと、
真子さんはせつない瞳で、
遠くを見ながら話した。

「それから2年が過ぎた時、大学のある教授から、
私にお見合いの話があってね!」
と、「お見合い」という言葉を語る時は、
一瞬嬉しそうな表情を見せた真子さんだったが、
すぐに、彼との交際の悩みを話した。

「私は彼と結婚したいと思っていたけど、
彼からのプロポーズもないし、
ふるさとの両親も“早く結婚して孫を見せて!”
とせがませてね(苦笑)」
と、真子さんの時代の自由恋愛の難しさや
女性は結婚して幸せになる、そんな風潮に、
真子さんは一年一年歳を取ることの不安を話した。

「彼が久しぶりに一週間のお休みで、
家に帰ってから、お見合いの話や、
ふたりの未来、結婚、子供について話したのね!」
と、最初は久しぶり長時間彼と一緒に居れると
嬉しそうな声で真子さんは話したのだが、
ふたりの結婚の話しになると、
真子さんの表情が一変する。

「あの人は“まだ結婚したくない!”
“こんな稼ぎで君と子供を
養うことなんて出来ない!”
“それに僕は今の研究を続けたい!”
って話してまたケンカになってね!(哀)」
真子さんは、この時に彼が話したことを受けて、
“自分はどうすることが彼にとって良い道なのか?”
を、考えたと話した。

「彼が休みを終えると、
すぐに研究室に戻ってね!」
と、真子さんも同じように、
彼への置き手紙を残して、
彼との家を出たと話した。

「あの人は、結局私を探さなかった。」
と、大学で会っても、
特に話しもしなかったと真子さんは話した。

「私は、
またお見合いのお話があると教授に呼ばれてね!」
と、10回目にして初めてお見合い相手に
会うことにしたと真子さんは話した。

「私ビックリしたのね!(笑)」
と、その初めてのお見合い会場に、
自然消滅して別れたと思っていた彼が、
突然乱入してきて、
私のことをお見合い相手に向かって
「俺の女だ!」って話して、
腕をつかんで連れ去ってくれたと、
真子さんはキュンキュンしたような
ピンクの笑顔をしながら話した。

「彼は、
私が居なくなって絶望したらしいのね!(笑)」
と、その彼の抱いた絶望は、
まるで真子さんが
「ほら!私が居ないとダメでしょう!」
と思わせる作戦だったように、
よりを戻した結果に、
とても嬉しそうに真子さんは話した。

「それでふたりは結婚したんだけどね!」
と、結婚した喜びと同時に、
妻として彼の仕事、研究を支える
覚悟をしたと真子さんは話した。

「彼の研究が一段落してね!」
と、ふたりが交際してから約40年の日々が過ぎて
ようやくゆっくり出来る日常に出会ったと、
ウキウキする当時の表情になったように
真子さんは話した。

「彼がね、ある時こんなことを言ったのね!(涙)」
と、ふたりが旅行に行った時、
彼から真子さんに突然感謝の言葉をもらって、
感動したと涙を拭いながら話した。

「私の好きなお花をくれてね!(笑)」
と、アマリリスの球根を、
白色は彼の、赤色は真子さんの花として、
「一緒に育てよう」と、
ふたりの新しい子供として育てたと、
真子さんは嬉しそうに話した。

「アマリリスが咲く頃に、
彼の研究が世界的な賞を
受賞すると連絡があってね!」
と、彼の研究の成果を評価された喜びと一緒に、
彼が記者会見で奥さんの真子さんについて話した
「僕の研究の成果は100%奥さんのおかげです!」
と言ってくれたことが、
何よりも嬉しかったと真子さんは話した。

「今日、あの人はまだ来ないのかしら?(悲)」
と、もう真子さんのもとを訪ねることの出来ない、
彼のことを今日も、毎日、出会いからふたりが
幸せに過ごした最後の頃までを、
付き添うヘルパーに話す認知症を患う真子さん。

「今日もあの
彼が好きだという曲をかけてね!(笑)」
と、男の人のプライドを歌った曲を、
彼と一緒に聴いた想い出を取り戻すように、
ベッドで涙しながら真子さんは何度も聴いていた。

「私ね!あの人のマリアになれたかしらね!(笑)」
と、ヘルパーに毎日問うので、
「旦那さんにとってのマリア様は
真子さんでしたよ!
そう息子さんに
旦那さんが話していたそうですよ!」
と、本当の話を真子さんに話してあげた。

「あら!そうなの(照)なんて恥ずかしいわ!(嬉)」
と、おそらく旦那さんにだけ見せる
幸せで穏やかな表情をしながら、
夜12時にやっと眠りについてくれる真子さん。

どんなに真子さんは眠剤を飲んでも眠れず。
でも、旦那さんの話を一通りし、
最後に曲をかけることで、
安心して眠りにつくと、
真子さんの就寝時の対応が決まっていた。

翌日の10月15日の真子さんのお誕生日、
息子さんが真子さんの代わりに育てた
真子さんの旦那さんが
旅行の時にプレゼントしてくれた
あの白色と赤色のアマリリスを持って、
旦那さんが着ていた紺色のスーツを着て、
真子さんのお見舞いに来た。

「あら!(嬉涙笑)」
と、認知症の真子さんには旦那さんにしか
見えない息子さんを強く抱きしめた。

「咲いたの?(涙)」
と、アマリリスの花を見た真子さんは、
嬉し涙を流しながら、
花と息子さんの顔を何度も見ながら、
「ありがとう!(笑)」
と、言って真子さんは面会時間を楽しんだ。

「ねぇ!お父さんは?どうしたの?」
と、息子さんの帰り際に、
本当の真子さんの記憶が戻り、
そんな真子さんの問いに、息子さんは泣いてしまう。

「何で泣くのよ!(笑)」
と、真子さんは旦那さんがもういない事実を
まだ次の瞬間に知らされ、
何度も眠れない日を過ごしてきた。

だから、息子さんは
「今日は研究室!」と話すと、
真子さんは
「また研究してるの?
全く、いつも私をひとりにして(笑)」
と話した。


(制作日 2021.10.15(金))
※この物語はフィクションです。

今日、
2021年10月15日(金)発売
ASKAさんのニューシングル『PRIDE』

オリジナルは、
1989年8月25日発売
CHAGE&ASKAアルバム『PRIDE』に収録された
『PRIDE』。

2021年バージョンとして、
オリジナルを大切にしながら、
新しいアレンジで今日発売となりました。

その『PRIDE』を参考に、
昔の恋を懐かしむ女性のお話を書いてみました。
この設定ですと、
CHAGE&ASKA『野いちごがゆれるように』でも
良さそうですが、
『PRIDE』の歌詞にある
~~~~~
思うようには いかないもんだな
呟きながら 階段を登る

夜明けのドアへ たどり着けたら
昨日のニュースと手紙があった
~~~~~~
心の鍵を壊されても
失くせないものがある プライド
~~~~~~
やさしい気持ちで 目を細めたとき
手を差しのべる マリアが見えた
~~~~~~
この辺りを参考にしながら、
間接的に男の人の
「仕事」「研究」「プライド」
を書いてみました。
今は、どんなに結果や成果が出なくても、
最近の話題のノーベル賞のように、
いつか評価され誉められる時がある。
だから、それを信じて、
女性はマリアのような気持ちで
見守り、気づかれないように、
そっと寄り添いを続ける。
女性が抱く
「寂しさ」「孤独」「不安」
なんて男の人に見せずに。
ちょっとした大和撫子と表現した方が
わかりやすいでしょうか。

要するに、
男の人のプライドがあるように、
女の人にも同じようにプライドがある、
そう表現してみたかったのです。

お話に出ましたお花「アマリリス」は、
ASKAさんの『PRIDE』のMusic Videoに
登場します。
ASKAさんの誕生花だそうです。
ASKAさんとこの『PRIDE』ともにご縁であり、
また意味を持つアマリリスを、
ぜひMusic Videoで見てみてください。
Music Videoのストーリーから
どんな感想を抱くでしょうか

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~

参考にした曲
ASKA
『PRIDE』
作詞作曲 ASKA
編曲 澤近泰輔
(2021.10.15発売)

YouTube
【ASKA Official Channel】
『PRIDE』
★シングル発売CM★
https://m.youtube.com/watch?v=yeYoqsH3nsU
★Music Video完成版★
https://m.youtube.com/watch?v=lWy55cka6Nc

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