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【超ショートショート】(52)☆憲兵も王様も居ない城☆~地球上の同じ顔は3人いる?~

むかし、
日本に連れて来られた、
ルイ国に住む王様がいた。

王様は、王様だと庶民に悟られないように、
庶民と同じ服を着るよう、
日本から来た憲兵に命令され、
自分の国の衛兵に、
どんな服が良いか相談。
その結果、
髪を剃らなくていい、医者の格好を選んだ。
日本では、
医者以外の男はちょんまげを結うために、
髪の毛を剃らなくてはならなかった。

ルイ国の王様は、
日本で一番偉いとされる殿様に会った。

(殿様)
「はじめまして。
わざわざ遠い所からお越し頂き、
ありがとう。
ところで、あなたのお名前は?」

(ルイ国の王様)
「デェ(はいの意味)。
ワタシのナマエは、
オデ・フォンです。
ヨロシク、オネガ、シマス。(笑)」

(殿様)
「オデ・フォン王様ですか?(笑)
素敵な名前ですな。」

(オデ・フォン王様)
「デェ~!(笑)」

なんとも変なやり取りだ。
ルイ国のオデ・フォン王様は、
自分が無理矢理連れて来られたと思っていた。
だが、日本の殿様は、おもてなしをしてくれる。

一体なぜなのか?

翌日、
日本の憲兵が、

「今日から、日本に王様がいらっしゃる間、
僕と私(わたくし)が、
王様を全力でお守りいたします。」

(オデ・フォン王様)
「デェ~ソウデスカ?
カムサムニダ(ありがとうの意味)。
アナタノ、ナマエハ?」

(憲兵その1・僕)
「はい!僕は、春日(かすが)と申します。」

(憲兵その2・私)
「デェ~(笑)、私(わたくし)は大島と申します。」

(憲兵その1・春日)
「おいおい兄さん、あんたなの名前は小島だろう?」

(憲兵その2・私)
「デェ~(笑)そうでした、デェ~(笑)
私(わたくし)の名前は小島で~す(笑)。」

(オデ・フォン王様)
「(笑)」


地球上には、
自分と同じ顔をした人が3人はいるという話が、
ルイ国の昔話に書かれている。

オデ・フォン王様は、
春日と小島を眺めると、
自分と瓜二つの顔をしていることに、
驚いて、
複雑な笑みを浮かべていた。


(憲兵その1・春日)
「オデ・フォン王様には、
今日から僕と一緒に憲兵になっていただきます。」

(オデ・フォン王様)
「アニョ!(いいえの意味)
ワタシは王様!衛兵ではないです。」

(憲兵その1・春日)
「これは殿様のご命令でございます。」

オデ・フォン王様は、
殿様の命令に従わないと、
自分が殺されるのではないかと、
春日と小島の長い刀を見て、
恐れ、仕方なく憲兵になることにした。

憲兵になると、
春日と小島と同じように、
立派な着物を着て、
腰には刀を差すことができた。
髪の毛は、オデ・フォン王様用に、
特別なちょんまげのかつらが用意されていた。

(憲兵その2・小島)
「僕らの役目は、この城を守ること。
敵国が偵察に来ますので、
そのときには、僕らの身分がバレないように、
慎重に、無表情を貫かなければなりません。」

(憲兵その1・春日)
「まず、僕らが見本を見せるので、
よ~く見ていてください。」

そういうと、
春日と小島は、決まった行進をしながら、
城の門へと歩み、
定位置に付くと、
微動だにせず、
まばたきもしないくらいに、
ただ一点を見つめて立っている。

翌日から、
オデ・フォン王様も憲兵として、
城の門前に立った。

それから3ヶ月後、
オデ・フォン王様は、
殿様に呼び出される。

(殿様)
「どうですか?憲兵の仕事は?」

(オデ・フォン王様)
「はい!大変ですが、
大変ですね。(笑)。」

(殿様)
「ここに、あなた宛の手紙が、
ルイ国から届いている。
私はあなたの国の言葉がわからないから、
あなたに読んでもらいたい。」

(オデ・フォン王様)
「デェ~!」


その手紙には、
ルイ国が隣国の侵入を許し、
オデ・フォン王様の母君と妹のお姫様が、
隣国に連れ去られ、
母君はご病気で亡くなったと。
そして、ルイ国は、完全に滅び、
ルイ国が誇るあのルイ城も、
隣国の物になり、
今は門に鎖がかけられ、
誰も住んでいないという。

(殿様)
「そうですか・・・、
やっぱりダメでしたか。」

(オデ・フォン王様)
「ワタシをルイ国に帰してください。」

(殿様)
「それはできません。」

(オデ・フォン王様)
「なぜですか?妹を助けに行かなければ、
殺されてしまいます。(涙)」

(殿様)
「それでも、
あなたをルイ国に帰すことはできません。」

(オデ・フォン王様)
「(涙)何でですか?(涙)。
ワタシは、もう日本を出られないのですか?」

(殿様)
「・・・・・」


翌日から、
オデ・フォン王様は、
憲兵の仕事を放棄し、
毎日毎日寝てばかり。

そんな様子を心配した憲兵の春日と小島は、
オデ・フォン王様に、
城下町で一番のごちそうと酒を持って、
励ましをしてみた。

(春日)
「元気出してください。」

(小島)
「さぁ、これ食べてみて。」


オデ・フォン王様が寝込んでから、
1ヶ月後、
再び殿様に呼び出された。

(殿様)
「ずっと寝込んでるそうだが?」

(オデ・フォン王様)
「・・・・・」

(殿様)
「王様に話があるのだが、
聞いてくれるか?」

(オデ・フォン王様)
「(うずく)」

殿様は、
これまで王様に秘密にしていた話をし始めた。

(殿様)
「王様が、なぜ日本に連れて来られたのか、
知りたいだろう?
王様の父上が亡くなって、すぐ、
君の母君が日本にやって来て、
王様を何かあったら守ってほしいと、
言われていた。
それから、数年して、また君の母君が日本に。
そこで、今度の計画に協力してほしいと、
命懸けのお願いをされたのだ。」


オデ・フォン王様の母君は、生前、
隣国ソン国が近いうちに、ルイ国を奪うと、
あらゆる情報を得て警戒していた。
そこで、母君は、ルイ国を守るために、
王様であるオデ・フォンを、
ソン国が絶対攻めない日本へかくまうことを計画。

かつて、殿様はルイ国に、
将軍になるための修行として、
ルイ国へ留学させられていた。

その時お世話したのが、
オデ・フォン王様の父上だった。

(殿様)
「だから、私は、オデ・フォン王様を
守る義理があるのじゃ。
特に君の母君にはよくしてもらったからな。」

王様の母君の話では、
ソン国は、
ルイ国のオデ・フォン王様の
妹のお姫様を欲しがっていた。
妹は、世界でも1、2を争うと言われるほど、
器量、姿よしとして、
世界中の王様たちが、狙いを定めていた。

ソン国の計画は、
ルイ国を奪って、手中に収め、
ルイ国のお姫様を奪い、
ソン国の
経済発展のための政略結婚を計画。

その政略結婚の相手が「私(殿様)」。

(オデ・フォン王様の母君)
「もしソン国が、ルイ国のお姫様を、
日本に連れてきたら、
殿様の嫁として迎えてほしいのです。」


母君は、
ルイ国お姫様と殿様が、
ソン国の薦めるように結婚すれば、
もう妹のお姫様を危険にさらすことがなくなる。

そして、
ソン国へオデ・フォン王様を、
秘密の政略結婚として、
送ってほしいと。

(オデ・フォン王様の母君)
「ソン国に器量は普通の女の子が、
オデ・フォン王様に恋心を抱いているの。
だから、王様をソン国との政略結婚を利用して、
大陸へ戻してほしいの。」

殿様は、突如、昔話を始める。

(殿様)
「私がルイ国に留学した時、
ルイ城で働いていたメイドに恋をした。
なかなか良い返事をもらえなかったが、
私が日本に戻ってから、
あなたの母君が、
〈嫁としてお迎えください〉
と、そのメイドを送って来たんだ。
それから、私たちは子供を授かったが、
彼女は子供の命を守るために、
亡くなってしまった。
その時に生まれた子供が、
この憲兵の春日。
(笑)、王様に似てると思わないか?(笑)」

(オデ・フォン王様)
「・・・・・(驚)」

(殿様)
「私が留学した時のことだが、
もう時効だから話してもよいだろう。
どうせ黙っていても、
君はもう気づいているのではないか?」

(オデ・フォン王様)
「いいえ、何のことですか?」

(殿様)
「私が留学して、
ある日、私は母君に呼ばれた。
突然に、
私が好きだと告白されたんだ。
だが、私にはメイドを、
すでに片思いだが好いていた。
だから、断り続けた。
だが、私が日本に帰国する前の晩、
私は母君の願いを聞き入れ、
一緒に朝まで過ごしてしまった。
それから、3年して、
ルイ国から手紙が届いた。
〈赤ん坊が生まれました。
あなたによく似ています〉と。」

(オデ・フォン王様)
「・・・・・(困)」

(殿様)
「そのときの赤ん坊が君だ。
つまり、君は私の息子だ。」

(オデ・フォン王様)
「・・・・・」

(殿様)
「それから、
母君が少女の頃、
日本に旅行に来てな。
この城に泊まっていたんだよ。
そこでな、母君の願いで、
私は、初めて女子(おなご)と過ごした。
母君が帰国して、手紙が届き、
身籠ったことを知らされた。
だが、その当時、
ルイ国の皇子と結婚しており、
皆、皇子の子として、
祝福されて生まれたそうだ。
それが、小島だ。
ルイ国の皇子、君の父上が、
自分に顔が似ていないことから、
母君を問い詰めたが、母君は真実を話さなかった。
だが、乳母が、母君を許すことができなくて、
隣国へ誘拐され、殺されたと、
嘘を話し、子供だけ、日本に届けた。
〈そちらで育ててください。
ルイ国の王様にされるわけには参りません。〉
という手紙が添えられて。」

この話から、オデ・フォン王様は、
なぜ「春日と小島」が、
自分に似ているのか、
理解できた。

(殿様)
「君には、ルイ国を背負う義務がある。
これは君の父上からの遺言じゃ!」

そう殿様が話すと、
ソン国のお姫様との政略結婚後の、
母君の計画を、
オデ・フォン王様に教授する。

ソン国へ結婚して忍び込み、
ルイ国を奪還せよ!
ということだった。
その時、
ソン国の政略結婚相手のお姫様も父親も皆、
その者の命をどうするのか?
オデ・フォン王様が決めればいいと。


オデ・フォン王様は、
母君の遺言通りに、
ルイ国を奪還!
ルイ城も復活させ、
政略結婚だったが、
自分に尽くしてくれるソン国のお姫様を、
一生大切にした。

そして、
ソン国がルイ国へしたことを許す代わりに、
ルイ国の復活に、ソン国民を参加させた。

ルイ城の門の憲兵は、
2人の兄、「春日と小島」が務めている。

殿様の願いであり、遺言だった。

(殿様の遺言)
「オデ・フォン王様へ
春日と小島を、
どうかルイ国へ避難させてくれないか?
このまま日本にいては、
顔が私には似ていると、
敵に命を狙われる。
もう日本にわが国民の安全な所は残っていない。
どうか、憲兵としてでも良いから、
愛する息子たちの命を守ってくれ!」


「春日と小島」が日本を離れるとすぐ、
殿様の城は敵陣に火を放たれ消滅。

もう憲兵も殿様も居ない、
内々尽くしの城。

殿様は、
その地にひっそりと市民に埋葬されたと
言い伝えられていた。


(制作日 2021.7.25(日))
※この物語は、フィクションです。

今日のお話は、
2018年7月25日配信された、
ASKA『憲兵も王様も居ない城』の
タイトルを参考に書いてみました。

書きながら、
初めは、絵本のような昔話にするつもりが、
おかしな展開となり、
絵本よりも大人な設定になってしまいました。

自分で書きながら、
「この話、変だろう」と、
ツッコミ続け、書き終えました。

話のつじつまが合わない所もあるかもしれません。
また、曲『憲兵も王様も居ない城』の世界観とも
違いますので、誤解なきように、
読んで頂ければと思います。

✏️追記✏️
登場人物の「同じ顔の3人」は、
モデルがいます。

韓国ドラマを見ていて、
日本のお笑いの小島さんに似ている、
韓国の俳優さんを見つけました。
お名前を調べると、
「オ・デファン」さん。

それから、テレビを見て
オードリーの春日さんにも似ていると思い、
この3人で、コメディーふうのドラマを制作したら、
面白いんじゃないかと思いました。
また、日韓の交流と理解も深まるんじゃないかと。

そのような思いから、
この3人さんをモデルにお話を描きました。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~~

参考にした曲は
ASKA
『憲兵も王様も居ない城』
作詞作曲編曲 ASKA
☆収録アルバム
ASKA
『Breath of Bless』
(2020.3.20発売)
★『憲兵も王様も居ない城』Teaser★
https://m.youtube.com/watch?v=xJK-nLPaSMA
★『Breath of Bless』アルバム発売告知映像★
https://m.youtube.com/watch?v=0Bwf5Ppe-5Q

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