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【超ショートショート】(60)~にらめっこ、スマイルが勝ち~☆Smile☆どのくらい“I love you”☆

浅瀬の無人島に建つ海の上の城。

かつて繁栄し、
多くの人が住んでいたという
〈スマイル城〉。

数年前まで無人だったこの城に、
どこかの国の海賊が住むようになる。

それから、しばらくして、
城の中にある巨大なガラスケースの中に、
ひとりの女が飼われ始める。


女は、
〈スマイル城〉のある街
〈フォーリン〉産まれ。
産まれ持ったブルーの瞳が
アクアマリンに似ていることから、
父親が、
古代ローマの月の女神「ディアナ」から、
ディアナと名付けられる。

ディアナのブルーの瞳は、
たちまち話題となり、
ディアナの瞳を見るために、
遠路はるばるやって来る者もいた。

ディアナが近所の学校に通い出すと、
近所に住むお兄ちゃん
「セイラー」と友だちになる。

「セイラー」は、
この学校に通うために、
山の上のお家から、
引っ越して来ていた。
セイラーのお父さんは、
ディアナのお父さんと同じ漁師。
セイラーのお父さんは、
漁師になりたくて、
ディアナのお父さんに弟子入りしていた。

ディアナとセイラーは、
いつもお父さんたちの帰りを待つため、
港で夕暮れまで過ごした。

(セイラー)
「ディアナ。何かして遊ばない?」

(ディアナ)
「何ができるの?」

(セイラー)
「鬼ごっこならいいけど。(笑)」

(ディアナ)
「じゃあ、にらめっこは?(笑)」

(セイラー)
「にらめっこって何?」

(ディアナ)
「知らないの?」


ディアナは、
セイラーが一人っ子だとこの時初めて知る。
セイラーが幼い頃から、
山の上のお家に
子供が遊びに来ることがなかったと話している。
セイラーにとって、
産まれて初めて出来た友だちが
ディアナだった。

ディアナが、
「にらめっこ」のやり方を教えると、

(セイラー)
「わかった!(笑)」

と話すから、
ディアナはとりあえず練習のつもりで、
1回やってみることにした。

「・・・ぷぷぷ~!(笑)」

「ダメだよ!笑っちゃ、ディアナ!(笑)」

(ディアナ)
「うるさい!負けてないもん!
ほら、笑ってないもん!」

セイラーが、
初めて「にらめっこ」したこの日、
ディアナは1回も勝てなかった。


ディアナもセイラーも、
お姉さん、お兄さんになると、
上の学校へ通い始める。

ある夏の朝。

(見知らぬ男)
「ちょいと、お嬢ちゃん!」

(ディアナ)
「えぇ?」

(見知らぬ男)
「きれいな瞳ですね!
この街に住むアクアマリンの女神、
ディアナって君のことかな?」

(ディアナ)
「・・・・・」

ディアナは、
街で見知らぬ人に声をかけられても、
話すなって父親に毎日言われていた。


それから、
しばらくして、
ディアナが家に帰って来なくなった。

セイラーは、
その日の夕方、
ディアナのお父さんに頼まれて、
ディアナを探すことになった。

(セイラー)
「ディアナ~!ディアナ~!」

セイラーは、
街中を「ディアナ~!」と叫びながら、
ふたりがはじめて「にらめっこ」した港に、
到着。

(セイラー)
「これっ?ディアナの靴?」

ディアナのブルーの靴の片方が、
港に落ちていた。
その場所は、
城に住む海賊が船を停める場所だった。

(ディアナのお父さん)
「セイラー、ディアナは?」

セイラーは、ディアナの落ちていた靴を見せ、

(セイラー)
「おそらく、あの城に連れて行かれたんですよ!
僕、これからディアナを迎えに行きたい!
船を出してもらえますか?」

ディアナのお父さんとセイラーのお父さんは、
セイラーの願いを聞き、船を出してやった。

スマイル城に到着すると、
城の門番がすぐに城に入るように扉を開けた。

(スマイル城の住人・海賊のリーダー)
「ようこそ!我がスマイル城へ!」

(セイラー)
「ここにディアナは居ないか?
僕の友だちなんだ!」

(スマイル城の住人・海賊のリーダー)
「そんな娘は知らない!
なぜ、ここに居ると?(笑)」

(セイラー)
「あぁー!今おまえ、ディアナがここにいるって、
認めたじゃないか!」

(スマイル城の住人・海賊のリーダー)
「何も認めてないぞ、
おまえの勘違いじゃないか?」

(セイラー)
「僕は僕の友だちって言ったのに、
なぜお前は、「娘」って知ってるんだよ!」

セイラーは、
ディアナが城に居ると確信し、
海賊のリーダーの横を通り、
城の奥へ入ると、

「セイラー?セイラー!助けて!」

と、ディアナの声が聞こえた。

(スマイル城の住人・海賊のリーダー)
「もうそろそろお引き取りを!」

セイラーは、お父さんたちに説得され、
一時ディアナの救済をあきらめ、
家に帰ることにした。


帰宅後、
セイラーは、ディアナの声が何処からしたのか、
スマイル城について調べ始める。

(ディアナのお父さん)
「セイラー?
スマイル城について調べてるんだろう?
今日、むかし漁師をした人に聞いたら、
この街の長老が詳しいはずだと。
長老は、むかし、
スマイル城で王様の執事をしていたそう。
だから城の構造にも詳しいはずだ!」

セイラーは、
ディアナのお父さんのメモを便りに、
街の外れの森の中の長老の家にたどり着く。

(長老)
「城のことを聞きに来たのは、おまえか?」

(セイラー)
「はい。
あの城にディアナが閉じ込められています。
でも、ディアナの声だけして、
姿が見えないのです。
ディアナはどこにいるのか知りたいんです!」

(長老)
「そうか!それは可哀想だな。
だが、ワシが仕事したのは、むかしのこと。
今の城のことはわからん!」

そう話すと長老は部屋の奥へと消えてしまう。


セイラーは、家に帰ると、

(セイラーのお母さん)
「あの城にはヒミツの部屋があるらしいの。
今日近所の人が話していたわ。」


翌日、学校から帰宅。

(セイラーのお父さん)
「さっきまで、ディアナのお父さんがいて、
これを置いていった。
城のことについて話したいと、
長老からの手紙を渡しに来てくれたんだよ!」

セイラーは、
すぐに手紙を読む。

そして、急いで長老の家へ。

長老の家に着くと、
長老が倒れて、横には赤い液体・・・。

(セイラー)
「遅かったか!(怒)」

セイラーが、また家へ戻ると、
「ディアナのお父さんが呼んでいるから、
今すぐ会いに行け!」

と。

ディアナのお父さんは、
長老から、

(長老)
「ワシに、もしものことがあったら、
この手紙とこれを、セイラーに渡してくれ!」

そう話していたことから、
ディアナのお父さんは、
すぐにセイラーに見せた。

(セイラー)
「あの城には、
巨大なクリスタルで出来た、
ガラスケースがあるという。
おそらくディアナは
そこに閉じ込められているだろう?
と、長老の手紙に書いてあります!
ディアナのお父さん!
また船を出してくれませんか?」

セイラーは、
ふたりの父親に付き添われ、
船をスマイル城に着けた。

(スマイル城の住人・海賊のリーダー)
「またお越しになったのですか?
ここは遊園地でもホテルでもありませんよ!
さぁお引き取りを!」

(セイラー)
「それは出来ない!
今度こそ、ディアナを助けてやるんだ!」

(スマイル城の住人・海賊のリーダー)
「ほぉ~!できるものならやってみな!(笑)」

セイラーは、恐る恐る城の中へ入る。
長老が残してくれた地図の通り、
地下への階段を見つける。

そして階段を下りると、
巨大な青色の空間が広がっていた。
まるで海の底から眺める空色と海色のように、
光すへてがブルーにキラキラしていた。

(スマイル城の住人・海賊のリーダー)
「さあ~!ここからどうする?
娘は・・・ここに居る!(笑)」

海賊のリーダーが
正面のクリスタルのガラスケースを見上げ、
ディアナの姿をはじめて、
セイラーに見せた。

(ディアナ)
「セイラー!助けて!助けて!」

(セイラー)
「・・・・・うん」

長老の家に、
小さな剣と古びた本があった。
~~~~~
スマイル城のクリスタルから脱出するには、
「にらめっこ」と
「I Love You」と書かれた小さな剣が必要。

「にらめっこ」は、笑ったものが勝ち。
つまり、クリスタルのガラスケース越しに、
向き合う者同士がずっと笑顔でおれば、
小さな剣を刺す瞬間が生まれる。

剣が使えるのは1回!
それも、愛し合うふたりでないと、
クリスタルのガラスケースを開くことは、
出来ない!
~~~~~~

セイラーは、
ガラスケース越しのディアナの目の前に立つ。

ディアナには、
セイラーの声はガラスケース越しでは
聞こえていなかった!

セイラーは、
ディアナを笑わせ、ジェスチャーで、
「ずっと笑っていろ!」と教え続けた。

ディアナが心からの笑顔を見せた瞬間、
ディアナの目の前に、
緑色の光が現れ、

(ディアナのお父さん)
「今じゃ~!小さな剣を刺せ~!」

すると、
クリスタルのガラスケースが、
音を立てて崩壊。

セイラーはディアナの手をつかみ、
城の外へと逃げ出す。

(ディアナ)
「セイラー、ありがとう!(笑)」

(セイラー)
「えへん!(笑)」

なぜ、
海賊がディアナを連れ出し
ガラスケースに入れたのか?
その理由は、
ディアナの瞳にあった。
ディアナの瞳はアクアマリンのブルー色。
ブルー色の瞳を求める者は世界中に沢山いた。
海賊のリーダーは、
ディアナの右目は、どこかの国の金持ちに売り、
左目は、自分用に使うつもりだった。


セイラーとディアナは、
いつもの日常に戻った。

スマイル城の住人だった海賊たちは、
次の宝探しに出かけ、
スマイル城は、今、誰も住んでいない。

学校から帰ると、
セイラーとディアナは港へ行き、
互いの父親の帰りを待った。

(セイラー)
「城から助けるとき、
ジェスチャーしたのは憶えてる?」

ディアナがうなずくと、

(セイラー)
「あのにらめっこは、
君に教えてもらったのと逆だった。
ずっとスマイルは大変だった?(笑)」

(ディアナ)
「いいえ!大変じゃなかった!
絶対セイラーが助けに来てくれるって
信じていたから。(笑)。
本当に助けに来てくれたとき、
あまりにカッコよくて、
つい笑ってしまっただけよ!(笑)」

(セイラー)
「なんだよ!それぇ~!(苦笑)」

(ディアナ)
「でも、本当に嬉しかったわ!
このブルーの瞳に映るあなたを、
いつも閉じ込めておくのが、
本当に嬉しいの!(笑)」

(セイラー)
「でも、一度、あの城から、
君を置いて逃げてしまったのに?」

(ディアナ)
「うん!あれは逃げてなかった。
あなたの瞳が「待ってろ!」って、
話していたわ!(笑)」

ふたりは、
夕日に照らされキラキラすると波を合図に、
笑ったら勝ちのにらめっこを、
いつまでも続けた。

瞳に互いの今日を残すように。


(制作日 2021.8.2(月))
※この物語は、フィクションです。

今日のお話は、
CHAGE&ASKA『どのくらい“I love you”』と、
ASKAさんがカバーした洋楽のスタンダードナンバー
『Smile』を参考に書いてみました。

なぜ「にらめっこ」は、笑ったら負け!なのか?

笑って勝てば、
いつも笑顔の習慣が身に付くのではないかと。
今日読んだ笑顔にまつわる話から、
影響を受け、そう考えてみました。

日本人が、笑顔下手なのは、
こうしたむかしの遊びも
影響しているのかもしれません。

笑顔で負ける世の中でなく、
笑顔で勝ち、または幸せになれる、
世の中を、子供のうちから身に付けたいものだと、
大人の今、夢みています。(笑)。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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参考にした曲は
①CHAGE&ASKA
『どのくらい“I love You”』
作詞作曲 飛鳥 涼
☆収録アルバム
『Mr. ASIA』
(1987.5.21発売)

②ASKA
『Smile』
Nat King Cole
☆収録アルバム
『STANDARD』
(2009.11.25発売)
『BOOKEND』
(2011.12.7発売)

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