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【超ショートショート】(160)~誰かの夢の幻人~☆CHAGE&ASKA『迷宮のReplicant』☆

目の前の交差点。
流れる車を、信号待ちしながら、
つい見ていた。

小さい白い車に、
ラテンな大きな黒人の女性たち。
お仕事中のトラックの
ドライバーのお兄さんにお父さん。
今日は日曜日の休日の
家族や夫婦。
時々、
高級な派手目のスポーツカーのお兄さん。

また、
目の前の歩道を青信号で渡る、
自転車や歩行者。

赤信号を待つ間に、
どれだけの人と一瞬だけの
一期一会の出会いをしたのだろう。

「こんなに人であふれているのに、
人はなぜ、ひとり孤独になるんだろう。
なぜこんなに寂しくなるのだろう。」

テレビをつけると、
再放送のドラマが流れている。

10歳の頃、学校から帰宅した、
その時に見た再放送と同じ。

懐かしいなんて、
10歳の頃は思わなかった。

でも、今は、
懐かしいと言えてしまう。

なぜだろうって考えた。

子供の頃、
旅に連れていかれた高原。
早朝に辺りが真っ白になった。
涼しい夏の高原で。

朝食を食べて出かける頃、
その真っ白は消えていた。

朝らしい明るい青空と太陽、
おまけに夏の暑い空気で、
爽やかな高原のイメージを
都会の市民プールに変えていた。

あの夏の高原で見た真っ白のように、
人との出会いも、
時間とともに消え、
空気が入れ替わっていく。

猫も犬も人も、
街の景色も、
いつかを境に、
こちら側とあちら側と、
互いを見えなくする壁が現れる。

その壁がある日、
マジックミラーのように、
こちら側には見えなくても
あちら側には見えるとき、
またその逆のとき、
互いにどんなことを思うのだろうか。

ドラマの再放送が、
そのマジックミラーなのかもしれない。

だって、
今はこちら側にいない人が、
あちら側のドラマでは、
いつもみたいに、
元気にしている。

その元気を見るから、
懐かしいと思うんだね。

誰かが作った歌に、
こんな言葉がある。

「僕が死んだら もしも死んだら
誰かの夢が 朝になった
そう思えばいい」

猫も犬も人も、
街の景色も、
誰かの夢の中の登場人物にして、
フィクションって思うなんて、
おそらく出来っこない。

目の前にいた人を、
フィクションに変えてしまう、
そのマジックがいつも耐えられない。

ただただ、
ジェットコースターのいちばん高い所から
落ちるときのお腹の無重力の気持ち悪さが、
気球の滞空時間の穏やかな時間の長さで、
怖さと寂しさを与え続ける。

一瞬の一期一会で、
いつも何ができるのだろう。

誰かを幸せにできたのか、
誰かを喜ばせたのか、
誰かを笑わせられたのか。

愛する人といた日々は、
あの歌のように、
いつかフィクションになる。

でも、
それまでは、
一瞬の一期一会のノンフィクションを
噛みしめて、心に刻んでいきたい。

こちら側だけにあるぬくもりを
あちら側に旅立つときのコートとして、
今をひと織りひと織り、
込めていけば、
残された恐怖と寂しさは薄らぐでしょうね。


(制作日 2021.11.10(水))
※この物語はフィクションです。

今日は、
今月が発売記念になります
CHAGE&ASKAアルバム『ENERGY』から、
『迷宮のReplicant』を参考に、
お話を書いています。

お話に書いた歌詞のように、
人との別れは、
そんなに簡単じゃないってと、
今も、いつも思っています。

人との別れで、
心の整理がつくのって、
本当にさまざまな心の中の葛藤がある。

それは、
私自身経験して、
とて怖いものでした。
寂しさを越えて、ただ怖かった。

今日は、
そんな心境にいますので、
『迷宮のReplicant』が頭に流れたんだと思います。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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参考にした曲
CHAGE&ASKA
『迷宮のReplicant』
作詞作曲 飛鳥涼
☆収録アルバム
CHAGE&ASKA
『ENERGY』
(1988.11.21発売)

YouTube
【ASKA Official Channel】
ASKA
『迷宮のReplicant』ライブ映像
https://m.youtube.com/watch?v=BAzqybnKIBE

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