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【超ショートショート】(167)~ねぇ?!こっち向いて!~☆ASKA『DAYS OF DREAM』☆

「ねぇ~ムーミン?!こっち向いてっ!」

「誰がムーミンだ!(怒)」

「恥ずかしがらないで~(笑)」

「何が恥ずかしいんだ!(怒)」

そんな上機嫌な彼女と、
その上機嫌な彼女に戸惑っている彼氏がいた。

彼女は時々寂しくなると、
彼氏に
「寂しい!」と甘えたり、
「哀しい!」と怒ったり、
口をきかなくなったり。

最近もそうだった。
だから彼氏はいつも、
「どうしたら元に戻るのか?」
と悩み続ける。

が、解決策が見つからない中、
彼女は自分で、
楽しみを見つけ、
きのうと今日で別人のようなり、
彼氏はその展開に心構えが間に合わない。

例えるなら、
大坂人がノリツッコミが好きなように、
彼女も彼女の楽しみに、
彼氏が乗ってくれないと、
また機嫌を損ねる心配があった。

彼氏は、
どんな事態に備えて、
彼女が用意するだろう楽しみに乗る練習を、
いつもながらにしている。
だが、たいてい・・・いや、一度も、
彼女の楽しみの予想を当てたことがなかった。

彼女の好奇心の無限さに、
いつも彼氏は、
「こっちが不機嫌になりたいよ(涙)」
と思うばかり。

でも
「今度こそは不機嫌になってやる」
と、今回は決めていた。

そこに、
今日の突然の彼女の上機嫌。
彼氏は内心、
「ついに来た~!
今日は俺が不機嫌になって見せる!
彼女はどんな反応するのかが楽しみだ!(笑)」

「ねぇ~、ねぇ~ってば!
聞いてるの?」

「何が?」

「ねぇ~ムーミンって」

「おっ、ムーミンがどうした?」

「どうもしないけど」

「ムーミンといえばさ、
おとぼけさんか、小仏さんかが、
確か好きだったキャラクターだろう。」

「知らない~!誰それ?」

「お前、知らないのかよ!(笑)」

「・・・(怒)」

彼氏は、
彼女に意地悪な言動を繰り返すうちに、
彼女の顔から笑顔を消してしまった。
また内心、
「ヤバい!驚かせて笑わせるつもりが、
会話のオチも見つからず、
ムーミンのことも、俺は知らないし・・・。
どうしたら今はいいのだろうか?
誰か教えてくれ~!(涙)」

「ハイハイ!呼びましたか?(笑)」

突然、見知らぬ真っ白いオモチャが、
彼氏のお願いの叫びとともに現れた。

「へぇ?!ムーミンじゃないです?(笑)
ねぇ、ムーミン?!こっち向いてっ?」

「ハイハ~イ!よろこんで!(笑)」

「ほら見てよ!本物のムーミンよ!
こんにちは、ムーミン!(笑)」

「・・・・・」

「こんにちは!(笑)」

「あなたもあいさつくらいしなさいよ!」

「・・・・・」

「ねぇお姉さん!この人誰?
何でしゃべらないの?」

「ムーミン!ごめんね。(苦笑)」

彼氏は、
何でムーミンがここにいるのか?
そう驚いたまま、
彼氏を置いてけぼりして、
彼女とムーミンが遊び始めた。

朝の台所から聞こえてくる
包丁のリズミカルな何かを切る音、
鍋が煮込まれ、フタが踊る音、
そして、
日本人が好きなみそ汁の香りが
ベッドで眠る彼氏の五感を刺激した。

「おはよう!」

と彼氏が台所の彼女に話したら、

「へぇ?あなた、何言ってるの?
まだ夕方よ!」

「えっ!」

彼氏は忙しいで壁時計を見て、
スマホ画面を見て、
テレビを見て、
今日があすになっていないことを確認した。

じゃあ何で、
こんなに長い時間
眠っていたと感じているのだろうか?
と、眠る前の話を彼女にしてみた。

「今日、お昼に、
ムーミン来なかったか?」

「そう、ムーミン!好きだろう!」

「いや別に!」

「だって、おまえ、さっき・・・
〈ねぇ~ムーミンって歌っただろう?」

「何それ、私ムーミンの歌知らないよ!(笑)」

「・・・おい!ちょっと待てよ!」

「何がよ!」

「おまえ、本当にムーミン知らないのか?」

「本当に知らない。」

「おとぼけさんか小仏さんが、
ムーミン好きって認めなかったか?な。」

「うふふ、おとぼけさんって誰よ!
それに小仏さんって!(笑)
いつからあなたに、高速のトンネルに
人みたいに
〈さん〉付けするようになったの?(笑)」

「いや、違うよ!
トンネルにさんなんか付けないよ!
俺にそんなオタクみたいな趣味はないぞ!」

「あらっ!(笑)、そうなの(笑)」

「うん・・・って、そうじゃなくて!」

「あなた?」

「何だ!」

「さっき、あなたが眠っている間に、
電話とアマゾンから荷物が届いたの。」

「電話?荷物?」

「全部あなた宛よ!心当たりある?」

彼女が彼氏に荷物の箱を見せた。

「電話は誰だった?」

「たぶん荷物をくれた人よ!」

「そう、誰かな!この宛名の人知らないな。」

「電話は女の人だったわ」

「女?誰だ!」

「その女性は
ムーミンが好きだって話していたわ」

「・・・(冷汗)」

「うふふ、どうしたの?額に汗が(笑)」

「・・・いや別に!
さぁ~夕飯にしようかな(苦笑)」

このふたりの会話は、
こうしてオチが見つかるまで、
永遠に続いていく。

こんな一時が、
彼女にとって、
とても幸せなことだった。

なぜなら、
オチのない会話のオチを見つけるために、
彼氏がムーミン谷に出掛けたこと、
そのこと自体を、
目の前の彼氏が忘れている。

それが、
彼女にとって幸せなことだった。

もし、
彼氏が自分の姿を鏡で見たならばと、
彼女は部屋中の鏡と夜になると鏡になるものには、
全部に布を掛けて彼氏から見えないように隠した。

「おい!洗面台の鏡は?」

「えっ、何?」

「だから鏡は?」

「鏡はあなたが壊したじゃない、先週。」

「そうだっけ?」

「そうよ!鏡で何するの?」

「いや、何か、俺の顔が・・・」

「あなたの顔が?」

「どんな顔してたかってさ。」

「どんな顔?」

「そう。誰かにさっき夢で、
〈あなたのお顔はまるでムーミンね〉って、
おばさんに言われてさ。」

「だから?」

「俺ってムーミンなんかに全然似てないよな?!」

「うん!」

「どちらかというと、冴羽みたいに、
ソフトマッチョな顔だろう(笑)」

「うん~、そんなににイケメン?」

「イケメンだろう!お前、俺に惚れたくせに!」

「そうだけど(笑)冴羽は言い過ぎよ!」

「そうか?じゃあ誰?」

「そうね!誰がいいかしらね(涙)」


(制作日 2021.11.17(水))
※この物語はフィクションです。

今日は、
思い付くままに書いたので、
参考にしたCHAGE&ASKAの曲はありません。

でも、
もしこのお話に合わせる曲を選曲したら、
CHAGE&ASKAではなくて、
ASKAさんの『DAYS OF DREAM』
この曲は、離婚がテーマとなっています。

人と人の別れにはいろんな状況がありますので、
お話はこの世の離婚ではないですが、
神様が決める別れを結果的に書いてみました。

どんな姿でも、
愛する人とは一緒にいたいなって思います。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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参考にした曲
ASKA
『DAYS OF DREAM』
作詞作曲 飛鳥涼
☆収録アルバム
ASKA
『SCENE Ⅱ』
(1991.6.5発売)



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