見出し画像

【超ショートショート】(168)~夢の中を歩いて~☆CHAGE&ASKA『なぜに君は帰らない』☆

夢の中を歩いた。
「あの、すみません。
どなたかいらっしゃいませんか?」
歩けては、尋ね、歩いては、また尋ねた。
でも、誰の声も聞こえなかった。

道の先に、小川に懸かる橋をみつけた。

その橋の前にたどり着くと、
ここでやっと、
ひとりの女性と出会った。

「あの、すみません。」
「はい!何ですか?(笑)」
「その、あの・・・」
「はい!そんなに緊張なさらず、
お話してください!(笑)」
「はい!(苦笑)」

女性は、
私を橋の近くにある木の下に座らせた。
そして、
微笑みながら、
私が話し始めるのを待っていた。

「あの・・・」
「はい!(笑)」
「ここに来れば、
私の亡き人に会わせてくれるって」
「亡き人?」
「はい。
もう居ない人に会わせてくれる神様がいるって」
「神様?(笑)」
「はい!神様!」
「うふふ(笑)」
「あの、あなたがその神様ですよね?」
「うふふ(笑)」
「あの、どうしても会いたい人がいるんです!」
「どうしても?」
「はい!」
「でも、私はこの橋を守るだけで、
神様ではありませんよ!」
「でも、あなたが、
あの橋を渡る許可を出す人ですよね?」
「まぁ、そうね。」
「橋の門番に、あの橋を渡る許可をもらえれば、
この世の人間でも天界に行けるって」
「でも、それはおよしなさい!」
「なぜです?」
「あの橋を一度でも渡ってしまったら、
もう元の世界には戻れません。」
「それでも構いません!お願いします!」
「そんなに言われても、止めた方がいいですよ!」
「どうして?こんなにお願いしてるのに!(涙)」
「それはね、あなたはあなたの人生を
生きる義務があるからです。」
「義務なんてどうでもいい!
どうしても会いたい人がいるんです!」
「ダメです!私には許可は出せません!」
「・・・私諦めません!
また明日、この夢の中に絶対来ます!」

そう話すと、
意識がなくなり、目を開けると、
自宅のベッドの上だった。

その日の夕方、
自宅に届いた一通の手紙。
差出人の名前も、切手もなく、
私の名前だけがある。
とりあえず、手紙を開封すると、
朝までいた夢の話が書かれていた。

~~~~~
あなたが見た夢の中の橋は、
誰でも簡単に渡ることができません。
もし渡りたいというならば、
それ相応の覚悟が必要になります。
そして・・・
~~~~~

この続きは、文字がにじんで読めなかった。

私には、
どうしても会いたい人がいる。

その人は、
どことなく自分に似ている、
どこも似ていない、
そんな絶妙なバランスで、
最初は心に住み着き、
気づけば一緒に食事をする仲になっていた。

そんな日々が
ずっと続いていくものだと思っていた、
あの日が来るまでは。

六本木の街並みが
クリスマスイルミネーションが
灯り始める最初の日。
待ち合わせに遅れたのは私。
でも、
あの人は待ち合わせ場所で、
多くの人に見守られながら、
救助を受けていた。

そのまま、
病院に担ぎ込まれて・・・。

あの日は、
その人の誕生日だった。
私は
ただ一緒にクリスマスイルミネーションを
見たかった。
ただプレゼントを渡したかった。
ただ一緒に手を繋ぎ歩いてみたかった。

病院に葬儀社がやってくると、
とても不思議な話をした。

「まだお若いのに・・・」
「そうですね。」
「また会いたいんじゃないですか?」
「えっ?」
「そんなお顔をされているので(笑)」
「・・・」
「僕、また会える方法を知ってるんですよ!」
「えっ?」
「知りたくないですか?(笑)」
「いや~(怪)」
「この手紙を枕の下に入れて、
このペンダントをして、
この本を持って眠ってください。」
「・・・」
「そうすれば、
大切な人がいる天界の入口に懸かる橋まで
夢の中で歩いて行けます。」
「夢?橋?歩く?」
「そうです。」
「それで?」
「それで、橋の前にいる神様をみつけて、
橋を渡る許可をもらってください!」
「許可?」
「そうです、許可をもらえれば、
橋を渡り天界にいる人に会えます。
僕はいつもそうして会っています。」
「いつも?」
「はい!ほぼ毎日です(笑)」
「誰に会いに行くの?」
「はい!彼女です。」
「そう・・・」

そして、
葬儀社の人が話したように、
何度も天界に懸かる橋の夢を見る努力をした。

だが、
もう何ヵ月もその夢にたどり着けなかった。

今朝が、
やっと入れた夢だった。

そういえば、
葬儀社の人が、
こんな忠告をしていた。

「いいですか?
これから言うことを守ってください!」
「何ですか?」
「それは、この夢に入るのは、
一年に一度だけにしてください!」
「一年に一度?」
「そうです。そうしないと、
僕のようになってしまいますから(笑)」
「僕のように?」

そう話すと、
胸ポケットから一枚の名刺を出した。

「わたくし、このような者でございます!(笑)」

その名刺には、

天界の案内人
天界探偵 えんま おう

とあった。

「探偵さん?」
「はい!」
「じゃあ、あの人はここに?」
「はい!そうです!」
「・・・(涙)」
「だから、あなたに会いに来ました。(笑)」
「会いに?」
「そうです!あなたの大切な人からのご依頼で」
「あの人が?(涙)」
「そうです。あちらで待っていらっしゃるので、
連れてきてくれないかと。」
「行きます!行きたいです!会わせてください!」
「では、先ほどの方法で、
夢にお入りください。」
「はい!」

私は、
就寝前に、天界探偵の注意事項を破り、
眠りに着いた。

翌朝、
目を開けると、
橋の前にいた神様が自宅にいた。

「あなたは騙されていますよ!」
「誰に?」
「あの天界探偵に」
「何で?」
「あなたを二度とあなたの大切な人に
会わせないようにしたいからです。」
「えっ?だって会わせてくれるって、
あの人が向こうで待ってるって!」
「それもこれも、
天界探偵が話したことは嘘です。」
「何で嘘と?」
「それは・・・」
「それは?」
「嘘だからとしか言えません。」
「何で?あなたの方が
嘘ついてるんじゃないですか?」
「いいえ、私は嘘をついていません。」

私は納得できないまま、
神様から逃れるように、
ふて寝の二度寝をするため布団にもぐり込んだ。

また目を開けると、
もう神様はいなかった。

机に置かれたメモが一枚あった。

~~~~~
あなたの枕の下の手紙を読んで見なさい!
神様より
~~~~~

でも、この手紙は探偵から
開けるなと言われていた。

朝食中、
部屋の掃除をする母親に
手紙を開封されてしまった。
すると、
手紙を見た母親が、
私を呼んで手紙を見せた。

「あなた、何考えてるの!(怒)」
「何って何?」
「見なさい!この手紙は何!(怒)」

強引に手渡された手紙を読むと、
まるで最後の手紙のような、
私の字にそっくりな
探偵が書いた手紙があった。

「神様が話していたのは
本当だったんだ!」

私の横で泣き崩れる母親。
私は、しばらく、
今がどこなのかと考えていた。

母親が正気を取り戻し部屋を出ると、
携帯がなった。
電話に出ると、神様からだった。

「これでおわかりでしょう?」
「はい!」
「あなたの大切な人から、
天界探偵からあなたを守ってほしいと、
依頼されいたのよ!」
「依頼?」
「そう!」

そして、神様が電話で、
一年に一度、必ずあなたのもとへ、
あなたの大切な人が会いに行く。
だから、その日を楽しみに待ちなさいと。
あなたに与えられた
人生の義務を果たしなさいと。
そうすれば、
いつか本当の再会の日を
迎える事ができるはずと。

今日がその日。
また六本木のクリスマスイルミネーションの
点灯式が始まっている。

「本当に会えるのだろうか?
待ち合わせ場所はここだったんだけどな(笑)」


(制作日 2021.11.18(木))
※この物語はフィクションです。 

今日は、
1993年11月19日発売 シングル
CHAGE&ASKA『なぜに君は帰らない』
発売から明日で「28周年」。

この曲をヒントに、
今日の個人的出来事をあわせて
お話を書いてみました。

またまた今日はミッキーマウスの誕生日で、
そのミッキーに似た愛犬が天に遊びに向かいました。

お話では「人」にしましたが、
「犬」のことでもあります。

住む世界がこの地上の中であっても、
地上と天の違いがあっても、
またいつか再会できると思えることができたら、
最初に出会う哀しみも、
自然と落ち着いていくのではないかと。

『なぜに君は帰らない』は、
男女の別れで、タイトルにある歌詞の世界。
この曲の男の人は今も彼女のことを
待っているのかもしれませんね。
もしそうなら、
幸せな女性だなって、
曲を聴き始めたときに思いました。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~

参考にした曲
CHAGE&ASKA
『なせに君は帰らない』
作詞作曲 飛鳥涼
編曲 十川ともじ
☆収録アルバム
CHAGE&ASKA
『RED HILL』
(1993.10.10発売)

YouTube
【CHAGE and ASKA Official Channel】
『なぜに君は帰らない』Music Video
https://m.youtube.com/watch?v=Kcv4kmufGR0

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?