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【超ショートショート】(78)~子どもの感性は神の化身~☆Sons and Daughters~それより僕が伝えたいのは☆

田んぼが一面の緑色になる夏の日。

田舎の学校に、
夏季合宿にやって来た子どもたち3人。

一人は女の子で、名を「薫(かおる)」という。
もう一人は男の子で、名を「航(わたる)」という。
最後の一人も男の子で、名を「翔(かける)」という。

夏季合宿の長を務めるのは、
田舎で一番の古株の、
皆から仙人と呼ばれる者。

仙人は、
田舎に来る子どもたちについて、
こう話していた。

「今年の子どもたちは〈神の化身〉じゃ。」

皆は〈神の化身〉の意味が解らなかったが、
仙人はそれ以上話をしなかった。

子どもたちが合宿先の
木造校舎の学校に到着。

儀式のように挨拶会が始まる。

(子どもたち)
「よろしくお願いいたします。」

(仙人)
「あー、よろしく。」


子どもたちが来て、1週間が過ぎる頃、
立秋は過ぎたとは言え、まだ真夏の日々。

いつもなら、
田んぼの稲も頭を垂れるべく、
実を大きくするときに、
秋の長雨、そして台風の出現が相次いだ。

子どもたちの合宿もできなくなり、
避難所として学校を開放。
その手伝いに、文句1つ言わずに、
子どもたちは人々を助けた。

薫が、
近所のおばあちゃんの家が気になると、
先生と一緒に見に行くと、

「変な臭いがする。」

「どんな?」

「土の臭い!
ねぇ、早くおばあちゃんを助けなきゃ!」

おばあちゃんの家の裏山が土砂崩れを起こし、
家を潰してしまった。
幸い、薫の嗅覚により、
事前におばあちゃんを救助。

「ありがとうね。薫ちゃん!」

航は、
雨の後、田んぼの手伝いに出た。

「おじさん!この葉っぱ、変だよ!」

「強風で倒れただけだろう?」

「いや、違うよ!ほら見て!
この白いものは何?」

航の指摘した白いものは、
台風が持ち込んだ「塩」だった。
農作物のほかに、
電線に付着して、火花をあげたり、
家にも付着して、金属を錆びさせた。

「航!よく気づいたな!」

「いや、別に。(笑)」

翔は、
空を流れる雲を見て、
天気予報にない雨を教えた。

「もうすぐ、すごい雨が降るから、
洗濯物をしまって!」

いつもなら、
無事に洗濯物をしまえた人から、
お礼の「ありがとう」がある。

だがある日、
翔は嘘つきになった。

翔がいつものように、
空の雲を眺めていたら、
不思議な雲の形を見て、こう話した。

「お~い!急いで逃げなきゃ!」

(仙人)
「何でじゃ?」

「あの雲は地震の雲だよ!
もうすぐここに地震が来るお知らせなんだ!」

翔の地震の話が、田舎中に伝わると、
誰も彼も、荷物を背負い安全な土地へ逃げだす。

そして、数日、
一人っ子一人もいない田舎にも町にも、
地震はやって来なかった。

「翔!お前、ワシらに嘘をついたのか?」

「田舎の人間だから、バカにしてるのね。」

翔は、ある日見た不思議な雲が、
今も1日のどこかで現れると話したが、
誰も信じてくれなかった。

それから3日後、
夏休みも残り1週間の朝、
親たちの迎えで、都会へと帰って行った。

子どもたちの始業式。
残暑厳しい夏の陽気の9月1日。

それは突然だった。

あの田舎を震源とする大地震が起こったのだ。

薫、航、翔、3人が通う小学校も、
大きくゆっくりと揺れ続けた。

(翔)
「先生!テレビをつけてください!」

先生が、いつもならつけてくれないのに、
あまりの地震の大きさに、
情報収集のつもりでテレビをつけてくれた。

薫、航、翔が見たのは、
あの田舎町の惨状だった。

田んぼは緑色。
でも、あちこちで発生した土砂崩れが、
家や畑を潰していた。

その夜、避難所から、
仙人が子どもたちの所へ電話をしてきた。

「おー、翔はいるか?」

(航)
「はい、います。」

嫌がる翔を無理やり
薫が受話器まで運んで来る。

薫の勢いに押されて、
電話に翔が出ると、

(仙人)
「おー、翔か?」

「はい。」

「お前に謝りたいことがあるのだ。」

「・・・」

「お前が地震の話をしただろう。」

「誰も信じてくれなかった。」

「そうじゃな、すまない。」

「別に謝ってほしい訳じゃ・・・」

翔の話を遮るように、
仙人がこう話した。

「翔のおかげで、
この町の誰一人被害にあった者は出ていないんだよ!」

「でも、テレビでは家や田んぼがつぶれている。
それで被害がないって、どうしてですか?」

仙人は、
翔たちが帰った後に起きた町の異変について話した。

しばらく雨も降っていないのに、
あちらこちらの山で小さな土砂崩れが毎日あったこと。

また、
田んぼのあちらこちらに穴が開いていたり、
湯気を出す穴もあったこと。

車を運転するものは、
道路側ふにゃふにゃと、毎日変わっているて、
平らな道が坂道のようになっていること。

などなど、住民が感じる異変は、
地震の起きる朝まで続いたという。

地震の朝は、
澄みきったきれいな青空に朝日、
そしてやさしい風と緑の匂い。
空を飛ぶ鳥も飼い犬も猫も、
あまりの穏やかな時間に安心仕切っていた。

そして、
あの大地震の発生。

仙人は、電話で、
田舎町の言い伝えを話した。

「この田舎には、
昔から地震の言い伝えがあるんじゃ。
子どもたちも、毎日拝みに行った、
小さな祠の神様がいたのを覚えてるか?
その神様は、3人居てな、
一人は風の神様、もう一人は海の神様、
最後の一人が空の神様。
この神様には、化身と言われる、
神様にそっくりな人間がいるというのだ。
もし、その化身の神様が現れたら、
大地震の知らせだと、だから急いで逃げろと。」

「でも、どうやって神様とわかるのですか?」

「それはな、名前だ。
あの小さな祠の神様と同じ名前の化身が、
必ず一緒に現れると。
そして、町の異変に気付き、人々を助ける。
それが確かな化身の証明となって、
人々が信用するだろうと。」

「でも、僕は外れた。」

「だが、翔の話したことは、
今日現実になった。
あの時、
もっと早くこの言い伝えを思い出していたら、
翔を苦しめることもなかった。
本当にすまない。」

「でも、化身って何ですか?」

「薫も航も翔も神様ってことだよ!」

「僕も薫も航も神様ではありません。」

「そうだな(笑)。
まだ子どもには難しい話だな。」

電話は、互いのわだかまりを取り、
笑いながら電話を切った。

翌日、
仙人が小さな祠の神様を訪ねると、
突然突風が吹き、
海もない田舎に海の香りがし、
空から、
さんさんと照りつける残暑の太陽の光の中から、
朗らかに微笑むお釈迦様のような面持ちの
神様が浮かび上がった。

「良いか?子どもたちの感性を信じなさい。
薫、航、翔は、私の子どもたちで、
この祠にいる化身。」


都会へ戻った化身と呼ばれる子どもたちは、
そんなこともよく理解せずに、
毎日、風の子、海の子、空の子、
として縦横無尽に遊び倒しては、
大人を困らせた。

だが、
その大人も、風の子、海の子、空の子だった。

成長と、知識の詰め込みで、
次第にその感性を失い、
自然の変化に対応できず右往左往し、
イタズラに命を危うくさせる。

太陽の光の中から現れた神様は、
最後に仙人にこう話した。

「人を見た目で判断してはならぬ。
強気な見た目は、すべてが嘘。
強気心の持ち主は、見た目にはこだわらない。
だが、1つこだわるとしたら、
それは、自分の感性を信じていること。
あの子どもたちがそうであったように、
どこにも大人が思う損得勘定がない、
純真無垢な感性から導かれた言葉は、
必ず真実を現す。
誰が真実を話しているのか、
よくお前の感性で見抜くが良い。」

仙人は、
人々が避難する学校に戻ると、
まるで人が変わったように、
誰彼問わず、皆の世話をし始めた。
それはまるで、薫、航、翔がやっていたことを
真似するように。

「仙人のおじちゃん。僕も手伝うよ!」

またここにも神の化身が現れたようだ。

この子どもの名は「鑑(かがみ)」
鑑の得意なことはものまね。

良いことをする大人のまねをし、
悪いことをする大人には、
正しいことをする大人のまねをして、
見せてやるという、
将来は役者の道を期待されている。

鑑が、小さな祠の神様に会いに行くと、
必ずそよ風が吹き、
「あそこに神様がいる」
と話すのが日課。

今日は、
また神様とどんな話をしてくるのだろうか?


(制作日 2021.8.20(金))
※この物語は、フィクションです。

今日は、
1993年8月20日発売
CHAGE&ASKA
『Sons and Daughters
~それより僕が伝えたいのは』
発売から今日で「28周年」

それを記念して、
この曲を参考に書いたお話ですが、
正直未完成です。

また、今度、新たな視点で、
この子どもの話を書いてみたいと思います。

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

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参考にした曲
CHAGE&ASKA
『Sons and Daughters
~それより僕が伝えたいのは』
作詞作曲 ASKA
編曲 井上鑑
☆収録アルバム
CHAGE&ASKA
『RED HILL』
(1993.10.10発売)
YouTube
【CHAGE&ASKA Official Channel】
『Sons and Daughter
~それより僕が伝えたいのは』
☆Music Video☆
https://m.youtube.com/watch?v=rHjMlE3dlsc
☆ライブ映像☆
https://m.youtube.com/watch?v=XOX7OG2kGAg

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