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【超ショートショート】(117)~影にゆれる男女(ふたり)~☆CHAGE&ASKA『華やかに傷ついて』☆

一つのふたりが別れを決めようとしている。

どちらが悪いと言えば、
おそらく男になるのだろうが、
もっと深い所では、
女も悪かったこともあるだろう。

ふたりが決めた最後の日、
女がちょっとした転倒事故に合い、
大怪我を被った。

女の両親は、
まだふたりが付き合っていると思い、
男に連絡。

男は病院に駆けつけた。

「もう、来なくていい。
両親には私から話すから、
あなたに迷惑はかけません。」

男が病院から帰ると、
女が両親にふたりが別れたことを話した。

母は涙を流し、父はどこか怒った顔をしていた。

ふたりは、
数ヵ月前に結婚の約束をし、
その報告を両方の両親にしていた。

女はふたりが別れた理由を話さなかった。
それが男を守るためだから。


翌日、
面会に男がやって来た。

「もう来なくていいと言ったのに、
きのう両親にも話したわ」

女が突き放すように
怒ったような口調で話す中、
男はこう話した。

「やっぱりもう一度やり直せないかな?」

女は、一瞬戸惑ったが、
一度決めたこととして、
首を縦に振ることはなかった。

そして、
その翌日も、またその翌日も、
男は女が退院するまでお見舞いを続けた。

退院を控えた前日、
ふたりはこれからのことについて話した。

「やっぱりやり直せないか?」

「どうしてそんなこと言うの?」

「俺が悪いのはわかってるけど・・・」

「けど、何?」

「けど・・・やっぱりお前がいいんだ!
ズルいのはわかっているけど、
どうしてもお前と別れたくないんだ!」

女は、返事に困り沈黙。
男との過去を見た時、
簡単に「じゃあやり直しましょう」と言える程、
そんな余力がまだ自分に残っているのかと思った。

もう何度も許してきた。
周りには、「あまい!」とか
「都合のいい女」とか言われてきたけど、
そう言われるのも疲れたし、
それでもいいと思っても、
気持ちが少し萎(な)えてしまってきているのを
感じていた。

女も男が嫌いな訳じゃなかったが、
自分では、男を幸せにできないのではないか?
そんな不安があった。

ふたりは病院の窓から夕景を眺めならが、
結論も出ないまま長い沈黙を、
看護師が運ぶ夕食まで続けた。

翌日の退院。
男は女を迎えに来たが、
女の両親と鉢合わせ。

男は父親と話をした。

「僕はもう一度やり直したいと思っています。」

「でも、君・・・」

「はい、すべて僕が悪いんです。
それでも、僕は彼女と一緒になりたいんです。」

「・・・あの娘は何と言ってるんだ!」

「何も」

「何も?」

「はい、まだ返事をもらっていません。」

女の父親が男と話したあと、
父親は病室で娘の気持ちを尋ねた。

「男はやり直したいと言っているが、
お前はどうしたい?」

「わからない。」

「もう、別れてるなら、
男のことが嫌いなんじゃないのか?」

「わからない。」

「わからない、わからないじゃあお父さんも
わからないじゃないか。」

「でもわからないの。
どうしたらいいのか、わからないの(涙)」

「・・・まだ好きなのか?」

「(泣きながら頷(うなず)く)」

「そうか・・・(困)」

病院の玄関で、
両親は娘を男に預けた。

「悪いけど、
これからお母さんと用事があるから、
娘を家まで送ってくれないか?」

ふたり、女の両親の背中を見送ると、
言葉もなく、男が荷物を持ち、
駐車場の車へ。

車の中でも会話という会話もなく、
女の家に着いた。

「ありがとう、ここで大丈夫。」

「いいや、部屋まで荷物運ぶよ!
重いだろう。」

「大丈夫、ひとりでできるから。」

男はそれ以上話をしないまま、
女の後ろ姿を見送った。

女は部屋に入ると、
その場で号泣。

女は、
もし本当にもう一度やり直す気が男にあるなら、
追いかけてきて欲しかった。
それを、ちょっと試してみたのだった。

結果は、女が求めるものにはならなかった。


部屋に戻ってから、
1時間が過ぎた頃、
玄関チャイムが1度、間隔を空けて
もう1度鳴った。

女がモニターを見ると、
男がいた。

「どうしたの?」

「これ買って来たんだ!
お前この店のケーキが
食べたいって話してただろう、
ずっと前に。
だからきのう予約して、
お前の好きなショートケーキを買って来たんだ!
だから退院祝いしないか?」

女は、玄関の前まで行き、
鍵に手をかけたまま、
ドキドキする胸と相談。

嬉しいけど、
この扉を開けたら、
また同じことの繰り返しになるんじゃないか?
でも、もしこのまま扉を開けなかったら、
もう二度と彼に会うことはなくなる?

女が胸と相談すること約10分。

「カチャ!」


(制作日 2021.9.28(火))
※この物語はフィクションです。

今日は、
1983年9月28日発売
CHAGE&ASKA『華やかに傷ついて』
発売から「38周年」になります。

なので、『華やかに傷ついて』を
参考にお話を書きました。

ですが、この曲はタイトル通り、
別れがテーマの曲です。

だから、
今日のお話の流れがよいのかはわかりませんが、
私のクセとして、
どうしても明るい結末にしたいと思っています。

この曲のMusic Videoがないので、
歌詞を少しだけ書いてみます。

~~~~~
(1番)
影がゆれる 別れを告げる
あなたの影がゆれる
何も言えない 言葉が浮かばない
夢を見てるようで

下手な言い訳 繰り返す人
責める気には なれないけど

恋の終りは その場限りだけでも
綺麗な理由を 欲しがるのです

飾れるものならば 飾れるものならば
華やかに 傷ついて
~~~~~

(ニックネーム)
ねね&杏寿
(旧ひまわり&洋ちゃん)
(Instagram)
https://www.instagram.com/himawariyangchiyan/

~~~~~~

参考にした曲
CHAGE&ASKA
『華やかに傷ついて』
作詞作曲 飛鳥涼
編曲 平野孝幸
(1983.9.28発売)


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