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お願いだから人のしあわせを自分基準で語らないでほしい。

姑から、

あの娘は勝手に苦労してる・・・。

と言われているということを夫から言われたことがあった。

その当時、私は高校の非常勤講師から常勤になって、土曜日も特進クラスの勉強合宿に出向いており、夫の単身赴任と相まって、生活に工夫が必要なことが多かった。
それをことさら苦労だと思っていたわけではなかった。

ただ、学校側からの期待と、同僚の先生との人間関係と、夫が赴任先から帰ってくるときに今までほど夫中心にはできなくて、確かに工夫は必要だった。
時間の使い方もお金の遣い方も変わった。
それに男性の意識は変わりにくい。
周りの奥様方は働いてもせいぜいパートさん。
しかも古巣の夫の会社にお勤めになる方が多かったように思う。

そんな中で、夫と同じかむしろ拘束が厳しい仕事について、夫は単身赴任でワンオペ育児。
平日に合宿があったとき、お義父さんが、

電話して、世話してやるように言うてやれ・・・。

と言ったのに、お義母さんが嫌だとおっしゃったそうだった。

なんとなくわかる。気持ちはわかる。
でも違う。

で、それを、

お義母さん、お義母さん、言うて来たら私も協力したげるけど、自分であの娘、苦労しとるがや・・・。

とおっしゃったそうである。
私がいつ、お義母さんに楯突いたというのだろうか?

単純に、私が周りからの受けが良かったのが、しかもお義母さんだけではなくて、妹さんと同じ年なのに、全然扱いが違って、そのことを不満に思っておられたと聞いた。


勝手に苦労してる・・・、って、別にそのこと自体を苦労だとは思っていなかった。

ひどい話、転勤先で、夫の会社と同業種の会社が倒産したとき、なにがしかの影響があったようで、

それならば私の出番・・・。

と思ったし、経済的なことも大事だとは言え、社会に出るという機会はもっと大事だった。

私が外に働き出始めた時に、そのそもそも倒産されたところの結構トップにあたる人の奥様が、

いったいあなたは、何を焦っているの?

と言われた。
いえいえ、別に焦ってはおりません。

とにかく私のような働く気満々の人間に、専業主婦させておく方がどうかしていたのだと思う。
いや、主婦業が全く嫌いなわけではない。

ただ、昼の日中、お茶会して人の悪口を言うことで、

私たち仲間よねえ・・・。

という構図を作り、誰かの犠牲のもとに自分の立場を守るというのが嫌いだったのだ。

それに弱い人というのは(この弱い人という定義もどうかと思うが。)、一人で何かできない分、誰かを頼るために、自分を守るために誰か強い人(本質的に強いわけではないだろうが。)に擦り寄って、何とか自分の立場を守ろうとする。

義母の場合なら、都会から来た嫁のせいで、自分の立場が脅かされるから、夫、息子、弟に、如何に自分がいじめられているかということをいつもいつも話していたのだということが今ならわかる。

もちろん感情論もあるだろう。
でも、あとで夫が言ったことから類推すると、いつもいつも、ああだこうだと耳元でささやかれれば、まるで洗脳されるみたいに、そうだと思い込んでしまうことだろう。

私にもある。
ないわけがない。

最近、若い世代の様子が変わってきている。というか、私の周りの若い人かもしれない。
私などよりずっと大人である。

先日もあった。
どうも私は、特に男子生徒にとって、時にかなわん相手になるらしい。
そりゃあそうだろう。
風情は、母親よろしく、包容力ありげであるが、教科指導に関しては、ある意味妥協がない。
部活で忙しい時や、それぞれのご家庭に事情があったり、生徒会などで活躍しているときに、無理を言おうとは思わない。
いらぬ葛藤をさせるだけで、その時が来たらしっかりという方が効率がよさそうだから。
でも、目標があるならその通りの行動をしなければならない。

かてて加えて、素朴で、ものすごく基本的なことを大事にする、教育県である。
都会の、小さいうちから勉強しておかなければならないところとは違う。
私の生まれ育ったところだと、もう中学くらいには差ができていて、高校からとんでもなく高い結果を望んだりはしないが、程よいレベルの国公立大学があるからか、いつまでも国公立志望で、それも結構ぬけぬけと、大きな目標を語る生徒が多い。
それにお付き合いしている私の価値基準もちょっと幅ができてきていると思う。

特に先日呆れたのは、ともすれば東京のトップの学校を語るときに、京都のトップの学校の話になったりする。
それを、

なんでその二つを一緒に並べて語るん?
全然違うやん。

と、どちらにも程遠い成績の生徒が言う。
しかもコツコツ型の生徒がだんだん実力をあげてきているのに対し、

次は俺のほうが勝つから。

とか、

俺が本気出したら抜かせますよ!

と言ってみたりする。

もちろん、周りの男子たちも、一浪したら、それこそ誰もが知っている大学に進学していたから、それもあるかもしれないが、本当にできる子たちを見てきた私から見ると、とんでもない話だったりする。

もっと広い世界を見ようよねえ・・・。

でも、彼の話を聞いていて、途中までは、

そうかなあ・・・?

と信じてしまっていた自分もいた。

なぜなら自分がそういうことを言わないから。

それに、自分の努力不足を誰かが○○で、あなたが一番というわけではない、とか、あなたより優秀な人もいますよ、的に語る人もいる。

誰も一番だとも優秀だとも言っていない。
私のライバルは、私だけ。
だって、世の中に優秀な人は本当にたくさんいらっしゃるし、自分の得意な分野でも広い世間に出れば、私など物の数にも入らないだろうことはわかる。

でも、そういうことを語る人って、たいてい自分の今の現状に満足していない。
あるべき場所にいなくて、それをどうしても認めがたくて、だからその間を埋めるためにあれこれ言っている。

正直痛い。
こんな年して、ずいぶんな年かさのくせに相当痛い。

本当に自信のある人は、相手の力量にちゃんと頭を下げる。
自分の実力をちゃんと認めて、ちゃんと努力する。

もちろん育ってきた環境もあれば、通ってきたところも違うから、非難ばかりできるわけでもないが、でも、そういうこと言っている時間がもったいなくはない?

そういうこと言っている時間、勉強するなり、なんなら家事のスキルを上げるなり、周りとうまくやっていける自分になるなり、ちょっとでも向上できる方にベクトルを向けた方がよくはないかしらん?

誰それに勝つったって、ライバルはもっともっと広いところで生きている。
学んでいる。

そういうの、井の中の蛙って言わないかしらん。

もっと大きな視野に立ってみようよ。

荘子の話がある。
なんだったかなあ。
小さい虫を食べようとしてる後ろには鳥がいて、その後ろにはその鳥を食べようとしている動物がいて・・・。

相対的な物事のとらえ方をする荘子の論を思うと、いつも私は、私よりずっとできる人のことを考えてしまう。
おそらく私の頭の中は、今いるコミュニティーより遠いところを思い描いている図になっているようである。

だから、ときに、痛い。



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