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因果から縁起への想像力のジャンプ


世界が歪んで見えるときは『チェインギャング』を聞け


歳をとると悲しいニュースを見る機会が増え、その火のような傷に対処するために聴く曲が定番化してくる。ぼくにとっては真島昌利(ましままさとし・通称マーシー)の『チェインギャング』だ。

真島昌利『チェインギャング』
https://www.youtube.com/watch?v=o2R9oVqOksA


マーシーは「キリストを殺した者は ぼくの罪のせいだ」と歌う。
「世界の歪みは ぼくの仕業かも」と歌う。
20世紀末の日本で生まれたのにキリストを殺した罪を背負うのだ。

?・・・因果関係が無茶苦茶だ。時空感が歪んでいる。


因果と縁起


唐突だが、ここで因果と縁起について鳥山明の『ドラゴンボール』で考えてみる。例え話だ。「岡田斗司夫が語ったプロットとストーリーの違い」を混ぜてあるので、仏教や物語論をきちんと知りたい人は、それぞれの専門家に。

【因果・ストーリー】ブルマと悟空が出会う。なぜなら悟空は祖父の形見の四星球を大事にしており、ブルマはドラゴンボールが出す電波?をキャッチするレーダーを持っていたからだ。

【縁起1・プロット】大昔、異常気象がナメック星を覆い、一人のナメック星人が地球に逃がされた。そのナメック星人は神となりドラゴンボールを造った。大昔、フリーザの配下にあったサイヤ人は目星を付けた星にサイヤ人を送っていた。地球には幼いカカロットが送られた。だからブルマとカカロットは出会った。このプロットはおそらく後付けだろう。ブルマとカカロットが出会う大きな枠組みが後から付けられる。

ぼくたちの認識している枠組みを支えている基盤は、あとから更新可能なのだ 。ぼくが小さいころティラノサウルスは直立していた。次第に背骨が地面と平行になり、2019年現在では羽毛まで生えている。研究が進んだ未来に、過去が変えられる。ぼくたちは、それを受け入れることができる。この認識力の柔軟さ(歪み)が、真島昌利とキリストを殺した者とを繋ぐ通路かもしれない。

【より大きな枠組みの縁起2】大阪大空襲を生き延びた手塚治が「生きていれば漫画がかける!」ことを知る。その後【手塚治虫】を中心にして日本漫画文化が大発生する。1970年代後半にジャンプの編集者【鳥嶋和彦】が当時デザイナーであった【鳥山明】を漫画家に転職させる。いろいろあってブルマと悟空が出会う。

これは漫画ではなく現実の出来事だ。次元が違う。しかし、ブルマと悟空が出会うことでワンピースもナルトも生まれた(・・・のかもしれない)。そしてワンピースやナルトを描くために出会った人々も大勢いるだろう。

【因果】は科学的に文章的に把握できる。しかし【縁起】は科学的に文章的に把握しにくい、またはできない。はるか彼方の宇宙で起きたこと、ましてや違う次元のことなど、知ることも考えることもできないからだ。しかし、それでも繋がっている。そして新たな繋がりを今でも生み続けている。因縁を知ろうとすること、作ろうとすることは人間の知性の特徴だ。


なぜ罪びとに繋がるのか?



この縁起(繋がり)を感じるから、20世紀末の日本で生まれたギタリストである真島昌利は、キリストを殺した罪を背負うのだ。自分がやることをやっていないから世界が歪むと悔いるのだ。

このページは京都アニメーションへの放火を思い浮かべながら書いている。らき☆すたハルヒけいおんは見ているが、萌えについての勉強として見ていたのでファンにはなれなかった。らき☆すたのこなたは面白い。可愛い。ニュースも深くは追っていない。京都アニメーションの細部に宿る神については、ニュース後の解説で知った。

これ以前にも恐ろしい事件はいくつもあったし、これからも起こるだろう。被害を受ける可能性がある側の工夫だけで防ぐには限界があるので、社会と縁が切れ、精神が崩壊し、行動が暴走する個人を産まない社会の雰囲気作りにも力をいれたい。橋下徹の「一人で死ね」という言葉は、意味不明な虐殺者に怒っている人々を惹きつけ動員し、保険に金を使わせる力は持っているが、社会を殺伐とした雰囲気から守る力は無い。

人間はたった一言で行動を変わる(ことがある)。犯人に、どんな一言を掛けていれば、あの凶行は起こらなかったのか?社会がどんな雰囲気だったらいいのか?真島昌利がキリストを殺した者に気持ちを寄せるのは、そういう道への意思だと思える。

事件後の解説を読むと、京都アニメーションは社会の雰囲気を柔らかくしようとしていた会社のようだ。しかし、宮崎駿や庵野秀明や山本寛は、アニメの人を捉える魔力を監視し、批判している面がある。これは宗教や芸術の世界で度々語られる偶像製作の禁止、偶像崇拝の禁止、偶像破壊の歴史と関係する。ワールドトレードセンターというアメリカ経済の象徴への破壊行為、廃仏毀釈、スーパーヒーロー、ジェームズボンド、AKB48などと関係する。人間はなぜ偶像を欲するのか?この問題についてはモーセを絡めて別のページで考えてみるので、今は保留。

だらだら書いていたら、あいちトリエンナーレで津田大介が芸術監督を務める「表現の不自由展」が権力やテロ予告で文化を潰す事例にまで発展している。令和いろいろ起きすぎじゃね?

個人や徒党でやれること


ブッダは死の間際、弟子に「怠(おこた)るな」と言い遺して死んだ。
乞食をしてでもやる作業。(ブッダ)
磔にされてもやる仕事。(キリスト)
毒の杯を飲むことで成せる何事か。(ソクラテス)

その行為の跡は、因果にとどまらず縁起に繋がり、後世の個々人の思考回路・精神回路にまで残る。知恵の網を編むこと。その網を活かすこと。決して癒えない傷を癒すには、「怠(おこた)るな」・・・これしかないのだろう。


(おまけ)キリストとギタリストって字面が似てるね。




掲示板で使えるモンスターアイコンが増えるよ。