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プロダクトマネージャー0.5年目の教科書

こんにちは!ひまらつです。

10年ほどモバイルアプリエンジニアをやってましたが、転職を機にプロダクトマネージャー(PdM)に転向し、ちょうど半年が経ちました。

PdMの仕事は何か、この半年の間に人に聞いたり、本を読んだり、現場で試行錯誤しながら少しずつ理解を深めました。このnoteでは半年前の自分に向け、PdMとしてどういう仕事をすれば良いのかをまとめてみたいと思います。

※私がやっているのはB2BのSaaSなので、B2Cだと内容がマッチしないかもしれません。また、半年足らずの経験での記述なのでアマい部分があったらご指摘ください🙇‍♂️

PdMの仕事とはなにか?

PdMはプロダクトの責任者で、プロダクトの成功に責任を持ちます。
プロダクトを成功に導く方法は色々あるので、ひとえに"PdM"といってもサービスによって微妙に仕事内容が違います。

プロダクトの成功とは何でしょうか?「ユーザー価値」「事業収益」「ビジョン」の3つの達成を追及することだと言われています。

3つの円の重なりの最大化を目指す

ユーザー、事業、ビジョン。この3つの重なる箇所を最大化することがプロダクトの成長であり、PdMが目指すものです。

「ユーザーファースト」という言葉を耳にするようになって久しいですが(自分も好きな言葉です)、これはユーザーを満足さえできればオールオッケーという意味ではありません。ユーザー価値を入り口にして事業収益とビジョンを同時に満たす方法を考え、上の絵の円の重なるところを最大化させよう、という意味のフレーズだと思います。
会社としては収益が伸びないと事業をそもそも継続できないため、気を抜くとユーザー価値を損なってでも売上を伸ばそうとしてしまう。「ユーザーファースト」はそれを防ぐためのカウンターパートとしての側面もあるのかなと思っています。

PdMの成果は、アウトプットではなくアウトカム

エンジニアとして働いている時は毎日コードを書いてました。機能追加でもリファクタリングでも、一日の最後には自分の仕事をわかりやすく振り返ることができました。
PdMに転向した当初、自分が意味ある仕事をできているのか不安を抱えていました。

PdMとしてお客さんの声を聞いたり、要望を整理したり、タスクの優先度を決めたり。毎日やることはありますが、それがプロダクトにどれほど貢献してるかは短期ではとても見えにくいものです。

エンジニアは「アウトプット」で成果を測れますが、PdMは「アウトカム」で成果を測ります。プロダクトがどれだけ伸びてるか、それがPdMの成果です。
短い周期で振り返るためにリリースした施策の利用率を細かく見たりはしますが、プロダクトの価値をどれだけ大きくできてるかは常に考えるべきです。
施策の一つ一つは当たったりハズレたりします。大事なのはそこからフィードバックを得ることで、ユーザーはなぜこれを使うのか or 使わないのかを学ぶ。ユーザー理解をどれだけ深められているかは、個人的に気にしているポイントです(でもこれも測りにくい)。

ユーザーインタビューを15回して始めて意味のある決定をして良い

PdMについて体系的にまとめられた名著「EMPOWERED」に、次の言葉があります。

私が初めて新しいB2Bプロダクトの責任者になったとき、マネージャーは私が意味のある決断を下す前に、30人の顧客に会うことを求めた。
(中略)
私は一般的に、プロダクトマネージャーのオンボーディングの一環として、少なくとも15人の顧客訪問を勧めている

「EMPOWERED 普通のチームが並外れた製品を生み出すプロダクトリーダーシップ」より
(太字は筆者によるもの)

私が働いてる会社は社員10人ほどのスタートアップで、PdMは自分ひとりです。PdMがどういう職なのかを理解する上で助けになったのが書籍でした。

プロダクトマネジメントは熱いテーマで、多くの本が出版されています。色々な切り口から書かれていますが、ほとんどの本に共通して書かれていたのが「ユーザーインタビューの重要性」です。
とにかくお客さんに話を聞く、顧客理解を深める、これを最初にやるべきだ、と。

最初は「そうそう大事だよね」くらいに思ってましたが、実際にやってみると見える世界が激変しました。インタビュー実施前はどこか他人の事業を回しているような感覚があったのですが、ユーザーインタビューの回数が10を越える頃から、価値を提供すべきお客さんの顔がクリアになりました。

機能の優先度をつける時はもちろん、細かい仕様を考える時も「こういう人たちが喜ぶな」とか、「この機能はちょっとToo muchだな」などが浮かぶようになりました。
また、プロダクト開発をしていると、エンジニア、デザイナー、マーケティングなど、職種によって意見が異なる場合がよくあります。これを「ユーザー」を軸に翻訳して調整するのもPdMの大事な仕事だと思っていて、その翻訳の能力がインタビュー後は向上した気がします。

(特に、自分がやってるのがB2BのSaaSなので、お客さんのニーズが明確なのもあったと思います)

PdMとPjM、POの役割違い

最初に情報を探すときに戸惑ったので言葉を整理しておきます。

「PdM(プロダクトマネージャー)」は、前述の通りプロダクトに責任を持つ職です。

よく混同されるのが「PjM(プロジェクトマネージャー)」で、これはプロジェクトの責任者です。日本では単にPMというとこれを指すことが多いです。
プロジェクトでコントロールするものはQCDと呼ばれ、それぞれ「Quality(品質)」「Cost(費用)」「Delivery(納期)」の頭文字をとったものです。
この中でもPdMとの最大の違いは「Delivery(納期)」でしょう。プロジェクトは期限が決まってますが、プロダクトには基本的に終わりはなく、永遠に改善していくことができます。

「PO(プロダクトオーナー)」はスクラムの役割のひとつで、プロダクトの方向性を決めたり解決すべきユーザーの課題に優先度をつけるという点でPdMとよく似ています。
PdMは上記に加えて「プロダクトの成功をどう評価するか」「プロダクトの価格はどう決めるか」など、一段広いところまで担当しているイメージです。

プロダクトマネジメント ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける」の一文を借りれば、「POはスクラムチーム内の役割で、PdMはキャリア」です。POは研修である程度スキルを育てられますが、PdMのスキルはユーザーと向き合いトライを繰り返すことで育てられるものです。

いろいろな背景を持つPdM

PdMはその仕事の多様さから、色々な職から転向があります。そしてその背景によって得意な領域が変わってきます。
背景がエンジニアのPdMは技術に、デザイナーならユーザー体験に、ビジネスサイドなら事業に。それぞれ詳しい部分が違います。

プロダクトマネージャーは様々は背景を持つ(pmconf調査レポートより)

プロダクトマネージャーは関わる領域が多いため、すべての領域を完璧にカバーすることは不可能です。自分の得意分野を活かしつつ、周りのメンバーと上手く協業していくことが求められます。

PdMを始めた頃はこの背景の違いを理解できておらず、世の中で活躍されてるPdMの先輩方を見て、「みんなこんなに多くの領域を理解してるのか…」と驚嘆していました。焦らず、自分のできるところからスキルを広げていくので良いというのが半年前の自分に送りたい言葉です。

PdMスターターにおすすめしたい本

最後に、半年前の自分におすすめしたい本を3冊紹介します。

1. プロダクトマネジメントのすべて

タイトル通り、「プロダクトマネジメントのすべて」が書かれてます。体系的にPdMについて学ぶことができます。
特に後半はエンジニアやデザイナー、マーケティングなどPdMが連携する各職種の特性が書かれており、サービス開発の経験があまりない状態で明日からPdM、みたいな人は一読するとかなりスムーズに入れると思います。

2. プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける

ビルドトラップとは「アウトプット」に捉われ、本当に大事な「アウトカム」を見失ってしまうこと。ビルドトラップに陥らないために、顧客に価値を届けることにこだわる、PdMが担当すべきは「なぜ」の部分など、目指すPdMの解像度が上がる本です。

3. INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント

ユーザーインタビューの大切さが何度も書かれており、PdMはとにかく「ユーザーの専門家になれ」と語られています。また、ユーザーについての学習はチームで行い、傭兵ではなく伝道師の集団を目指そう、というのも個人的には好きな一節です。

ここでは3冊挙げましたが、ALL for SaaS には toB と toC の違いを、世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? には数値偏重になるリスクとバランスの取り方を、逆説のスタートアップ思考 には質を求めるより量を求めた方が結局良質なものに行き着くことを、それぞれ教えてもらいました。
どれも本当におすすめの本です!

おわりに

技術の進化やエンジニアのレベルの向上により、サービスを作ること自体はイージーな方向に進んでいます。そんな中で大切なのは「なにを作るのか」「なにがユーザーにとって一番重要なのか」の判断で、それがPdMに求められるものです。

世の中をみると様々な成功事例がありますが、流行りに惑わされずユーザーと向き合い、ユーザーが困っている課題を解決することがPdMとしての第一歩なのかなと思っています。
長々と書いてしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。


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