⑮血の匂いの暴力『先生の先生による先生の為の言葉達・チャマ!』

声が出なくなった

私は

笑っていた。

何を言われても

笑顔でいた。

そうやって自分を

守っていたのかもしれない。

当時は

無意識だった。

中2の夏

タバコを

覚えた。

父の

タバコを

買うついでに

自分のも

買っていた。

周りにも

タバコを吸う

同級生がいて

いつの間にか

そういう子達と

仲良くなった。

家庭環境が

似ている子達。

移動教室の間に

先生達が

勝手に

持ち物検査をしていた。

私達は

あっさり

タバコを

没収された。

気に入ってた

たばこケースは

返して貰えなかった…

捨てたのかな…

酷くないですか…

缶のやつ。

放課後呼ばれて

声が出ない

私は

頷きながら

先生の目を

ずっと見ていた。

先生は

筆談を始めた。

「ご両親には言えそう?」

『お母さんはいません。お父さんは暴力を振るいます。』

『でも言わないと終わらないので言います。』

「大丈夫ですか?」
「いつも?」

『大丈夫。お酒を飲む前に言います。』

「分かりました。
お父さんに言ったら、
私に電話を下さい。
お父さんとお話します。
怒らないで下さいと
先生からお願いします。
それでも
暴力を振るわれたら
教えて下さい。」

「8時に電話を下さい。
そしたら○○だと分かるので。」

『分かりました。
暴力の事には触れないで下さい。
何されるか分からないので。』


先生は

心配をしてくれた。

帰り

車で送ってくれた。

その時

『○○、辛い時は空を見るといいよ。皆同じ空を見てるから、ひとりじゃないって思えるんだよ』

ふーん。

と思った。

大人って

こういう事

言うのか。

と思った。

私は単純に

星を見て

綺麗としか

思わなかったから。

辛い気持ちで

見る空は

真っ暗だから。

人の辛いは

度合いが違うから

同じ空では

ないよ。

ひとりだよ。

と思った。

先生が

どんな

人生を

送っていたのかは

知らないけど。


チラシの裏に

『タバコみつかりました。親も学校に呼ばれます。すみませんでした。お父さんに話したら電話するように言われたので、電話します。』

20時に電話をした。

父は、怒らなかったが

そばで見ていた

祖母が怒った。

イライラした。

言い返せない

私を

いいことに、

「タバコなんかのんでっから
喋れねんだ!」

って。

祖母を

押し倒したくなった。

手が出そうになった。

引っぱたきたくなった。

うるさい!

って言って。

この感情が出てくると

母の

鳴き声が聞こえてくる。

父に殴られてた時の

母の

悲鳴や

泣きながら

抵抗する声。

光景が

浮かんでくる。

そのお陰で、

私は

暴力を抑えられた。

そんな事をしたら

私は

この父と

同じ人間に

なってしまう。

父が

暴力を

し続けるのは

痛みを知らないからだ。

今でもそう思ってる。


耳を塞いで

部屋に逃げ

真っ暗な部屋で

腕を切った。

イライラの

感情のまま

傷も見ないで

ただ切った。

鉄の匂い。

血の匂い。

カッターと血が

擦れる

音。

痛みは感じない。

電気を

付けるのが

怖かったから

腕にタオルを巻いて

そのまま寝た。


翌朝

腕を見ると

フワフワしてて

切った通りに

赤い山脈が

たくさん出来ていた。


教室で先生に

「昨日は頑張りましたね。とても強い子だと思いました。」

と言われた。


父には

「お前は何がしたいんだ?困らせたいのか?わざとか?お前が何思ってんのか知らねーけど思い通りなんか出来ねーからな、お前は子供なんだからな」

「タバコ吸おうが何しようがいいけど火事だけはすんなな。で、婆さんに見つかんなな。うるせーから」

と言われた。


中学校の

卒業間近

チャマのお散歩をしていたら

首輪が外れて

少しだけ遠くに

走って行ってしまった時

ヤバいと思って

『チャマ!』

と呼んだ。


声が

出た。


チャマのお陰で

声が出た。

チャマは

戻って来た。

お友達に

声が出た事を

最初に

報告した。

「カラオケ行こう」

と言われた。

優しいなぁと思った。

ありがたかった。


でもそのお友達は

その後

私が好きだった

先輩と

それを知っていて

付き合った。

ごめん、告られたから。

って。

気持ち悪い

と思ってしまった。


祖母は相変わらず

部屋に入る。

祖父と父が

喧嘩をする。

力では父にかなわない。

ガタン

怒号

祖母の仲裁の声


まただ。

この家にいる限り

続くんだ。









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