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「今日とは違う景色を見るために」――“映画人”としての探究と矜持。黒木瞳(女優/映画監督)インタビュー

こんにちは。himalaya公式note編集部の佐藤です。

新型ウイルス禍の以前/以後で生活にさまざまな変化が起こりましたが、音声番組の収録現場でも収録方法の試行錯誤が続いています。himalayaにとっても試練の時期ですが、十分な感染対策を行いながら引き続き魅力的な新企画をどんどん提供していきたいと思っております……。

ということで、今回はそんな新企画の中でも特に注目のチャンネルをピックアップ。

すでに記事のタイトルでネタバレしていますが、あの女優さんがhimalayaに登場!……ならば、himalaya公式note編集部も黙っちゃいられません。

なんと、特別インタビューに成功いたしましたので、今回はその模様をお届けします。ぜひhimalayaの音声チャンネルとともにお楽しみいただければと思います。

新チャンネル『黒木瞳の映画ここだけバナシ』

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みなさんご存知、日本を代表する名女優の1人・黒木瞳さんが、himalayaで新チャンネルをスタートいたします。その名も『黒木瞳の映画ここだけバナシ』

女優として、そして近年では監督として、映画に深く携わる黒木瞳さん。そんな彼女が見つめてきた映画の“内側”を、多彩な映画関係のゲストと語り尽くす音声チャンネルです。

今回は、黒木さんの音声チャンネルのスタートを記念して、チャンネルのテーマでもある「映画」に対する彼女の姿勢や想いをインタビューで伺いました。

役をつくることは、“人物を理解すること”。

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――黒木さんは現在、女優としてだけでなく、監督としても映画に携わられています。映画に対するその情熱の源はどこにあるのでしょうか?

(黒木)
私の映画の原体験は、子供のころに見た『風と共に去りぬ』でした。素晴らしい作品で映画自体にも感動したのですが、それ以上に子供の私が強く感じたのが、「あのスクリーンの中に入りたい!」ということでした。今思えば、それが映画への熱が芽生えた瞬間だったかなと思います。

そして宝塚歌劇団の退団後、私は映画業界へ入ることができ、子供のころの夢は無事に叶いました。ただ、実際に“スクリーンの中の人”になってみると、今度は「もっとたくさんの方々に感動や元気を与えたい」「笑顔になってほしい」という想いがどんどん強くなっていったんです。それが、今日まで何十年にもわたって映画に関わり続けていられる理由になっています。やはり、映画を観てくださる方に喜んでいただくことが、今の私にとっての情熱の源であり、一番の原動力ですね。

――女優としての役作りについてお伺いします。役に入るまでに、いちばん大事にされていることは何でしょうか。

(黒木)
私の場合は、まず演じる人物のバックグラウンドを知ることから始めるようにしています。事前に監督とミーティングをして、その人が普段どんな服を着ているかとか、どんな髪型なのかといった、外見からイメージをつくっていきます。

いきなり感情をつくっていくよりも、こうした細かい人物像を積み重ねていくことで、少しずつその役の人物に近づいていけるかなと思っています。そして、実際の現場にいって、共演者の方と一緒にお芝居をしていく中で、よりリアルにその役に入り込んでいく、という感じです。

とはいえ、ときにはそれでも役作りに苦労することもあります。『東京タワー(監督:源 孝志)』という作品で役を演じたときは、撮影がはじまって3日くらい経っても役の女性がどんな人物なのかよく分からず、自分の中で腑に落ちなくて悩んだことがありましたね……。

――そのときは、どのようにして役に入っていくことができたのですか?

(黒木)
どうにも困ってしまったので、基本に立ち返って台本を何度も読むことで、より深く役の人物を理解しようと心がけました。それで夜中にずっと台本を読んでいるときに突然、「ああ、この人にはいつも“風”が吹いているんだ」ということに気がついて、モヤモヤが晴れていったんです。そして、セリフの言い方を「風に吹かれている感じ」にしてみよう、とひらめきました。

そうしたら、次の撮影から自分の中で違和感なくその役の女性になれた、ということがありました。そのときは、きっと役作りの“沸点”がちょっと高かったんですね(笑)。

“一歩前に――“。役者から、監督へ

多くの方にとって、黒木瞳さんといえば「女優」のイメージが強いのではないでしょうか。しかし一方で、2016年公開の映画『嫌な女』では、自らメガホンを取り映画監督としてもデビューされています。その契機や、違った視点から映画を見つめることの楽しさ・難しさとは……?

――最近では、ご自身でも監督を務めておられますが、どんなきっかけがあったのでしょうか?

(黒木)
すべてのきっかけは、『嫌な女』という素晴らしい小説と出会ったことです。その小説の映画化について、出版社に直接プレゼンして権利をいただいたことで、いろいろなことが動いていきました。

脚本は、西田征史さん(ex.ドラマ『魔王』『とと姉ちゃん』他)にぜひお願いしたいと思っていたので、原作を読んでいただいたうえで、私と2人で数年間かけて脚本づくりをやっていきました。

このときは自分が監督をするなんてまったく思っておらず、役者として出演する前提で進めていました。でも、途中でプロデューサーが何人か入れ替わっていく中で、西田さんから「この作品の世界観は黒木さんがいちばん知っているんじゃない?」という言葉をいただき、それをきっかけに「役者ではなく、監督をするのはどうですか」という話になったんです。

――それで、監督を引き受けることに。

(黒木)
最初は「とんでもない、そんな大それたことは絶対できません」とかたくなにお断りをしていたんです。でも、ある方から「今日と違う明日の景色を見たいのであれば、一歩前に出なさい」と言われ……。今から思うと怖いもの知らずなのですが、その言葉を聞いて「やってみよう」と思えたんです。そして、無事に配給先が決まり、実際の制作も始まっていったというのが、監督をやらせていただくことになった経緯ですね。

――実際に監督をやってみて感じた、役者と監督の違いは何でしょうか?

(黒木)
いちばん違うところは、映画をつくっているときの作品への向き合い方ですね。監督をやっているときは、それこそ四六時中、台本を見ながら作品のことを考え続けていて、他のことは何も考えられません。本当にその作品のことだけ。

逆に役者のときは、その日の撮影が終わったら作品のことはパッと忘れて、まったく違うことを考えたりします。人の集中力ってそんなには続きませんから、ボルテージが上がったいちばん良い状態のところで撮影の本番にいくのがベストです。なので、撮影のときにピークの状態に持っていくために、役が自分の中で出来上がったあとは、撮影の時間以外はできるだけ何も考えないようにしています。

ですから、とことん考え抜くか、スパッと頭を切り替えるかが役者と監督の一番の違いかなと思います。

――ご自身が監督する作品では、どのようにして出演者をキャスティングしているのでしょうか?

(黒木)
まず自分の中のキャスティングのイメージを書き出して、そのあとプロデューサーの方と打ち合わせをして決めています。すべて自分で決めるのではなく、全体のバランスを考えたり、実際問題としてオファーした役者のスケジュールもありますので、その都合も考えたりしながら、スタッフみんなで、なるべく理想に近い形でキャスティングさせていただいています。

映像がないからこそ、“本音が言える”。

普段は映画やテレビなどを主戦場としている黒木さん。今回はご自身初となる、Web媒体での音声チャンネル挑戦となります。今回の企画について、そして音声に対する印象などを伺いました。

――今回、himalayaで音声チャンネルを開設され、「映画」が大きな軸になっています。その背景を教えてください。

(黒木)
最初に音声で番組ができないかというお話があったときに、どんなテーマで話したら、リスナーのみなさんに楽しんでいただけるかなといろいろ考えてみました。人生のことだったり、美容のことだったり、女性としての考え方だったり、母としてのあり方だったり……。でも、それらはすべて「自分のこと」になってしまいます。

自分だけのことよりも、周りの方との関わりの中で生まれることをテーマにしたほうが、互いの相乗効果でより有益な、生きていくうえでのヒントなどを届けられるのではないかと思いました。

今日お話をさせていただいたように、私は小さいころから映画が好きで、これまで視聴者として、役者として、そして制作者として映画と向き合ってきました。とくに最近は制作者として映画に携わるようになり、映画づくりにはたくさんの人が関わっていることをあらためて認識したんです。

映画は役者や監督だけでなく、本当にたくさんのスタッフの手でできています。そういった方々に、同じく映画に携わる人間としていろいろお話をうかがえたら面白いのではないかと思い、番組のテーマを「映画」に決めました。

――今回は映像のない音声だけの企画となりますが、「声だけで表現すること」についてはどのような印象をお持ちですか?

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(黒木)
カメラがまわっていないので、すごくリラックスできます。映像や写真の撮影のお仕事だと、ずっとカメラを意識しないといけないので、つねに「見られている」という緊張感があります。ラジオや声だけのお仕事の場合だと、リラックスして本音が言えるという感じはありますね(笑)。

黒木瞳、音声の〇〇にも挑戦……!?

最後に、音声コンテンツで挑戦してみたいことについて、お話をしていただきました。

――今後、「音声」というフィールドで挑戦してみたいことはありますか?

(黒木)
声だけでお芝居をしてみたいですね。以前、『源氏物語』に出てくる女御(にょうご)を、すべて私がひとりで声のみで演じたことがあるのですが、そんな音声ドラマのようなものなどがができたら、面白いかなと思いますね。

また、今回の音声チャンネルでは映画がお好きな方はもちろん、そうではない方にも、映画の話を通してゲストの方と私の生き様を垣間見ていただけるような凄いチャンネルになる予感がしています。

* * *

今回は、himalayaで新チャンネル『黒木瞳の映画ここだけバナシ』をスタートする、女優で映画監督の黒木瞳さんのインタビューをお届けしました。

大好きな映画づくりのことを語る黒木さんは、初めて映画に出会った少女のころと同じような、真っ直ぐな視線と言葉が印象的でした。

また、映画監督への挑戦のきっかけとなったエピソードからは、「もしそうなったら生半可なものをお客さんに出せないぞ」という覚悟と、反面「映画に関わる者として、もっと映画を突き詰めていきたい」という好奇心・探究心が同時に垣間見えた気がして、映画への真摯な姿勢が強く感じられました。

そんな、まさに映画の“酸いも甘いも”知り尽くす黒木瞳さん。今回の音声チャンネルでは、さまざまな映画関連のゲストをお招きして、映画の深~い話をお届けしていきます。映画仲間同士では、インタビューでも語っていただいたとおり、思わず本音も飛び出しちゃうかも……!?

『黒木瞳の映画ここだけバナシ』は、2021年5月26日(水)配信スタート。himalaya独占配信です。ぜひ、番組をフォローしてお聴きくださいね。

よろしくお願いいたします!


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