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どうしようもない社会で、弱さと正義とで葛藤する人間。(自転車泥棒)

ビットリオ・デ・シーカ監督、1948年製作のイタリア映画「自転車泥棒」を観ました。

戦後、間もないイタリア。社会全体が貧しい時代に、ある男が自転車を盗まれる映画。その自転車は、ようやく手に入れた仕事をするために絶対に必要で、シーツを質に入れて何とか手に入れたものでした。

自転車泥棒への怒り、自分ではどうすることも出来ない貧しい社会のしんどさ、自分よりも良い暮らしをしている人々への羨望。

そんな負の感情を抱かざるを得ない状況だと感じました。

一方で、自転車を盗まれたアントニオは、常に、幼い息子ブルーの行動をともにしていました。

一人の人間としては、怒りやしんどさ、羨望から、仕事を守るために自分も誰かの自転車を盗んでしまうと思います。

しかし、息子の前で父親として、アントニオは、正しく振舞い、子どもに恥をかかせないように振舞い、希望を失わないようにしていました。

このように、一人の人間としての弱さと、人として正しくありたいという感情が交錯する、アントニオの葛藤を描いた映画だと感じました。


自分では、どうすることも出来ないことがいつの時代も山ほどあって、そんな社会で自分の弱さと正義とで葛藤する人間を巧みに描いた作品だと思いました。