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満月の夜、君は何を思う?

なんだかとてもポエミーなタイトルになってしまった。


今日、2023年10月29日は満月である。

私は空が好きだから、ふとした時に空を見上げて観察することが割とあるが、そうでない人たちも今日くらいは空を見上げたのではないだろうか。

「満月」という言葉を聞くと、小学生の時に出会った『まんげつのよるに』という絵本を思い出す。
木村裕一さんの、『あらしのよるに』シリーズの第7作、完結編である。

※ここから先はざっくりしたあらすじになるため、見たくない人はここでブラウザバックを推奨する。


雪崩に巻き込まれたオオカミのガブは生きているのか。

ヤギのメイは1匹で暮らしていたが、ガブに会えず生きる気力も無くし、弱っていってしまう。

ところがある日、ガブの居場所の噂を聞きつけ、走った。

そこに居たのはガブだった。しかし、ガブは記憶をなくしていた。

唯一覚えていたのは「ヤギの肉が大好物だった」ということだけ。

メイはガブを見つけるやいなや、嬉しさのあまり走り出す。

ガブはメイを見つけるやいなや、「なんて美味しそうなヤギだ」と走り出す。

ガブはメイを捕らえると、洞窟へ運び、干し草を食べさせてから満月の夜に食べようと考えていた。

メイは必死に思い出を語るが、助かるための嘘だと信じてもらえない。

「こんなことになるんだったらあらしのよるに出会わなければよかった」

かつての合言葉、「あらしのよるに」。

それを聞いた瞬間、ガブはメイとの日々を思い出す。

ガブとメイは新しい地の丘で一緒に満月を見る。

その姿はオオカミとヤギではなく、ただふたつの生き物の姿だった。


オオカミとヤギは普通は相容れない存在。
そんな2匹があらしのよるに出会い、常識を超えた仲を紡ぐ。

そんな大好きな友が自分のことを忘れ、欲望のまま自分を食おうとしてくる。完全に変わってしまっている。
ガブをずっと想っていただけに、メイの悲しさは計り知れない。

それでも2匹は合言葉で繋がった。
“ヤギ”と“オオカミ”ではなく、種族を超えた“ふたつの生き物”として。

人間だれしも、世間体や周りの目を気にして人付き合いをする部分がどうしてもある。

ガブとメイは常識や損得なしに、お互いかけがえのない友達であった。

この絵本は、読む度に生きていると忘れがちなことを思い出させてくれる。

歳を重ねて読むとまた深みが増す、大好きな絵本のひとつである。


今日の満月も、ガブとメイは仲良く2匹で見ていたらいいなあ。


今日は満月の夜。貴方は何を思いますか?

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