好きではないけど“一応出来る”
私は料理が好きではない。でも、一応出来る。
私は訳あって高校に通えなくなってから、1年は完全引きこもり生活、そこから1年は半引きこもり生活を送った。
今は苦手な場所でなければ外でも活動出来るようになったが、この引きこもり生活を送っていた期間は本当にしんどかった。
心の不調に伴う体の不調で、だんだん何もかもが出来なくなって、そんな自分を責め、また心を病む。
家の中で出来ることといっても限られているし、働くことも出来ず、それなのに生きているだけでお金はかかる。
「何も出来ていない」という気持ちが私を支配し続け、苦しむ毎日だった。
そんな時に、母が私に夕飯を作るよう頼んだ。
料理は得意と言えるほどではなかったし、好きでもなかったが、苦手意識はなかった。
ネットでレシピを検索し、その通りにすればだいたい外れることはなく美味しい料理が出来る。本当に便利な時代だ。
それから自然と私は毎日夕飯作りの係を務めるようになった。
実家暮らしで、働くこともできておらず、学校も辞め、進学も諦め、さらに引きこもりになっていた私は、家族に引け目を感じていたのもあり、それくらいはやろうと思った。
「何もしていない」という自己嫌悪を少しでも薄める為の方法でもあった。
初めは毎回ネットでレシピを調べてその通りに作っていたのだが、そのうち勘や目分量で作るようになり始めた。
お菓子やスイーツ、パンなんかはしっかり量らないと上手くいかないらしいが、料理は割と適当でもなんとかなる。
最終的には夕飯の支度に1時間ほどかかっていたのが、凝った料理でなければ30分ほどで完成するようになった。
そして、この夕飯係は、外に出て活動できるようになった今も私が担当している。
私は未だに料理は好きではない。でも一応出来る。
今思えば、例えこの程度でも、料理のスキルは後で身につけようと思うと大変だったかもしれない。
そして身につけていて絶対に損のないスキルだ。
あの時そこまで見越して夕飯を作るよう頼んだのかは分からないが、母に感謝である。
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