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学校閉鎖で共働きの親はどうするの? と言っている人々に知って欲しいこと

政府が全国の学校閉鎖の要望を出して以来、「共働きの親(現状、ほぼ母親を意味する)やシングルマザーはどうするんだ?」とSNSなどで叫ばれている。マスコミもこぞって困惑する母親(父親どこ?)の声を取り上げている。そのこと自体は当然のことだが、声を上げている非当事者の方々は日頃からこの国の働く母親が置かれている状況を想像したことがあるだろうか?

普段から、インフルエンザで明日から学級閉鎖、台風で警報が出れば休校、子どもが感染症にかかって登校停止、突然学校に行きたくないと訴え不登校などはよくあることだ。ワーキングマザーの日常は、常に非常事態と隣り合わせ、綱渡りだ。

これがうちの子どもが小学校低学年だった十数年前であれば、これほど大きな騒ぎにはならなかっただろう。子どもを預けて働く母親が圧倒的に少数だったから。今回、これだけ反響が大きいということは、それだけ働く母親が増え、社会で重要な役割を果たしていることを表していると思う。しかしそれにも関わらず、働く母親の状況はこの10年ほとんど変わっていないようだ。

リモートワーク進んでない
国がリモートワークを呼びかけても、満員電車はいっこうに空かない。私が外資系企業の社員で週2日の在宅勤務をしていた15年ほど前から、世の中には事務系の仕事であれば在宅勤務が出来るだけのITツールは十分にあった。今ではスマホも普及し、さらにリモートでの仕事の効率を高めるツールが整っている。東日本大震災の後、企業はリモートワークを含めたBCPを構築したのではなかったのか?これまで何をやってきたのだろう?

働く女性を支える職種は女性が多く、待遇・労働環境が良くない
保育士、看護師、介護士、教師などのリモートワークができない職業には女性が多い。彼女たちの多くは子育てをしながら働き、他の職種の女性たちを支えている。しかしこのような職種の待遇改善や柔軟な働き方に対する施策は進んでいないから恒常的に人手不足だ。(一部の病院では休校で看護師の手配ができないと言っているが、医師が足りなくなるという声は聞かない。)

ベビーシッター利用にも壁がある
ベビーシッター費用への補助などは実現されてきているが、日本のベビーシッター料金は高額なことに加え、子どもを他人に預けて働くことへの抵抗は当事者である母親たちにも依然大きい。私がアジアのワーキングマザーの同僚たちと話をすると、ナニー(住み込みのベビーシッター)やベビーシッターがいないのは、日本と韓国くらいだった。

統計的に男性は家事をほとんどしていない
日本の男性の家事に費やす時間は、10年間で6分しか増えていない(平成28年社会生活基本調査 総務省統計局)。妻と夫の 1 日の平均家事時間は、妻は平日 263 分、休日 284 分、夫は平日 37 分、休日 66 分だ。(第6回全国家庭動向調査 国立社会保障・人口問題研究所 2018)。

日本女性は世界で一番寝ていない
OECDの調査によると日本女性の睡眠時間は主要30か国で一番短い。ほとんどの国で女性の方が睡眠時間が長くなっており、女性の方が短い国は日本、韓国、インドなど6ヵ国しかない。その中でも、日本の男女差は最も大きい。(OECD Gender data portal 2019)

これらが、各国の男女平等の度合いを調査した「2019年の男女格差指数」(the Global Gender Gap)で、日本は153カ国中121位で過去最低を更新している要因になっている(World Economic Forum Global Gender Gap Report 2020)。

今回、声を上げた人には、激震が収まっても、このことを忘れないで欲しい。そして特に組織の中で決定権を持つ方々は、まず自分の立場でできることをして欲しい。世の中を変えるのは、ひとつひとつの現場だから。課題を認識して行動を起こす人々がいて、その後に施策や制度がついてくる。
そうしなければ、次の10年もきっと何も変わらないだろう。

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