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算数的教科探究「数と論理」2022春・夏

第1時「数ってなんだろう?」

みんな数って知ってる?
そう聞くと、「知ってる」という子がほとんど。
「一、十、百、千、万、…無量大数!」子どもたちはよく知ってますよね~、こういうところ!
無量大数が一番大きいの?と聞いてみると、
「まだあるよ、グーゴルとかね…」
説や真偽はともかくとして、知らなかった子どもたちにとっては新たな世界。
そんな知の魅力を友達から垣間見られるのも、学校のいいところです。

でも数って誰かが発明したものでさ、大昔は数なんて無かったんだよね。
数のない世界ってどんなだったんだろう?
この問いから一気に深めていきました。
「え、じゃあ今何歳なのかわからないってこと!?」
「背の高さでわかるんじゃないかなぁ…」
「そもそも何時かもわからないんじゃん!」
「太陽の高さとか」「水がかわくとか」「あ、砂時計!」
「自然はけっこうヒントになりそうだな…」
「お金も数字ないと困るよね?」
科学や言語にも繋がる壮大なテーマ。みんなしゃべりたくてたまらない!
そんなこんなで、みんなで石器時代までタイムスリップして学んでみることになりました。

砧公園に出て、1つ自分が決めたものを拾ってきてね。
石やドングリ、花など、子どもたちはそれぞれ自分の好きなものをガンガン拾い集めてきます。
「食」のテーマ学習をやっている時期だったので、気分は縄文人の採集体験!
1種類に絞って集めてきた子もいれば、2種類以上が混合している子も。
葉っぱの付いた枝。枝は1本だけど、はっぱは13枚…これは1??
この辺りが、この先のフックになってきます。

この中で、一番数を多く集めたのって誰?数は使わないで調べてみて。
「重さ!」
「ゆすってみて、大きい音がなった方!」
子どもたちはお弁当を食べながらも、いろいろと考えています。
この日の最後に発表してくれた子のつぶやき。
「まずさ、こうやって(地面に置き)重ならないようにつぶすじゃん?」
「それで、この2つの面積…広さ?を、比べてみたらいいんじゃない?」
「え、でもさ、定規だって使えないじゃんね?」
「重ねたらわかる!」
「ここに隙間あるからあやしいよ」
「隙間ができないように、しっかりしきつめてみよう!」
子どもたちの探究は、数量から徐々に幾何へ――。
ここでタイムアップ!
答えは出さずに次回に持ち越し。
中途半端で終わることで、好奇心のモーターは静かに回り続けます。

第2時「一対一対応!」

「ぼく、わかったよ!」
1週間後の授業の冒頭、ある子の発言からスタート。
「こうやって1つずつ並べていったらさ、余った方が多いはずじゃん?」
そう言って、ブラックボードに〇を並べていきます。
「なるほど、これなら数を使ってないね!」
みんな納得の方法でした。
これって、今度お泊りで使うお椀と人数の比べ方と一緒だよね。
ちょうど、お泊りのためにお椀を人数分買っていたので、実際に持ってきました。
お椀が人数分足りるのか確かめたかったら、一人一つずつ持ってみればいい。
実際に「一対一対応」を体感してみました。

じゃあ、どんぐりでやってみようか!
ということで、外へ。
早速並べ始めたのはいいものの…芝生の上だと見えにくい…
「じゃあシートの上でやろう!」
今度はコロコロ転がってしまいます。
「そこ、座らないで!」
「難しいなぁ…」
そんなとき、ある子が思いつきました。
「葉っぱに1つずつ乗せればよくない!?」
「いいね!じゃあ僕葉っぱ集めてくる!」
みんなで協力して並べていきます。
その場にあるもので工夫する。
役割を即興で作りながら協力する。
こんな体験が「数える」という行為を記憶に印象付けるんですよね。
とはいえ、葉っぱの上でもコロコロ…
どうしたものか…次週に持ち越します。

第3時「数が無いと大変だ~」

「これ、持ってきた!」
ある子が、スーパーで売っている卵のパックを持ってきました。
「なるほど、確かにこれなら転がらないかも!」
ということで早速、右の列と左の列に分けて、1つずつ息を合わせて入れていきますが…もちろん数が全然足りませんw
「2週目、3週目、…って、何週も入れたらいいんだよ!」
うんうん、それもありだよね。しかし。
「あれ!?こっちって入れたっけ??」
「やべ、3つくらい入っちゃった!」
数を数えて確認しようとする子に、他の子が「数使っちゃダメでしょ!」
あらためて、数のない不便さを体感する子どもたち。
細かい作業に飽きて、周りで遊び始める子も。
でも、同じ空間で友達がやり続けていて、それを傍目で感じているんですよね。
こんなに時間がかかるんだ、大変なんだ。それを感じることが大事。
最後にあまりが出た方を確認して、多分こっちが多かったんだよね、とみんなで確認…多分ですが。
「数が無いと大変だ~」
いつも身近にあって、なんなら算数嫌いだった子もいて。
改めて、数のありがたみを感じた子どもたちでした。

第4時「比べる」

前回は量を比べました。じゃあ、重さはどう比べる?
「手で持てばわかる!」
うん、でもわかりにくいのもありそう。人によって意見が分かれちゃうこともあるよね。
みんなであれやこれやと意見を出し合います。
すると、ある子がクラスにあった天秤を指さして、
「あれを使えば、数が無くてもどっちが重いかわかる!」
実はシェルパ、この展開を見越して、数日前から天秤をクラスに置いていたのでした。
「公園に行って、早速できるか試してみよう!」
ということで、みんなで天秤を作ることに。
シェルパがビニール袋をいくつか持っていくから、使いたかったら使ってもいいよ~とご紹介。受け皿の部分は、作ろうと思うと大変。この辺りの援助の塩梅は、いつもよく考えるところです。
公園に着くと、子どもたちは木の枝を持ってきて、中央になる部分を探ります。
これは、フィジカルラーニングでやってる「重心」の授業ともオーバーレイしました!
「この木、重心がまんなかじゃないよ!」
形状によって、重心の位置が変わることを発見。
木の両端を両手の人差し指の上に置いて、そこから同時に指を中央に向けてスライドさせると、自然と重心がわかるよ。シェルパの豆知識。
子どもたちは早速やってみて、
「おー。ほんとだ!人間ってすごい」
子どもたちは自作の秤で、どんぐりや石など、さまざまな物を苦戦しながらもはかって比べていました。
数字が無くても重さは比べられる!

第5時「比べられれば、並べられる」

「2つものを比べる」ということを繰り返すと、多くのものでも順番に並べることができる!
今回は、そんなことを体験してもらうことにしました。
まずは「情報カードゲーム」!
4人1組で、順番に山札からカードを引いていきます。
そのカードには「ライオンはクジラよりおかねもち」「クジラはウサギよりおかねもち」など、2種類の動物を比較した情報が書かれています。
ちなみにお金にしたのは、動物によるイメージのバイアスを少なくするためです…。
動物は全部で5種類。お金持ちの順番が一番早くわかったチームの勝ちね、とルールを確認してゲーム開始!
チームによってカードの出る順番が違うので、周りのチームに聞こえないように、同じタイミングで1枚ずつカードをめくっていきます。
「メモ使ってもいいですか!?」
「紙に整理していくとわかりやすい!」
書くことの有用性は、こんなところでも感じてもらえますね。
あまり差はでなかったけど、みんな頭を使いながら協力して取り組めたようでした。

続いて、同じ要領で、背の順で並んでみようという流れに。
頭を使ったので、今度は実際に体を使って学びます。
身体的なことを扱うという点に若干迷いもありましたが、異学年構成だし、子どもたちの許可もとれたので、ヒロック初の背の順チャレンジ!
やってみると、背の高さの比べ方(後ろを向いて背中をつけ合う)を知らない子も多く、想定外に時間がかかりましたが…友達同士で教え合ったり、第3者がジャッジしたりしつつ…なんとか完成!
ならんで早速ビデオ判定。結果は2人ほど入れ替え。笑。
それでも、1人1人の身長の数値が分からなくても、背の順ができることが新鮮だったようです。
実はコンピュータも、こうやって隣同士比べるのを超高速でやっているらしいよ、とここでもシェルパ豆知識。
何も昔の方法ではなく、今でも活用されている方法の1つなんですよね。

第6時「置き換える」

どうやら、その場にあるもの同士は比べられそうだ。
じゃあ、もしその場にないもの同士を比べるとしたら?
時間軸をずらして、一対一対応を考えてもらうことにしました。
ヒロックの子どもたちが、いつも通り自由行動でバラバラになります。
全員戻ってきたことを、数字のない世界でどうやって確認する?
それが今回の問い。
「木の棒でさ、自分のいたところに〇をつけといて、そこに入ればいいんじゃない!?」
これまで学んできた、一対一対応がしっかり生かされています。
早速砧公園に行きます。やってみることが大事。
しかし!ここで問題発生。
「芝生の上じゃ〇が書けない!」
その時、ある子がひらめきます。
「あ!ぼくたちのかばんを置いていけば、全員戻ってきたか確認できるんじゃない?!」
みんな、「それいいね!」と、全会一致。
その場にかばんを置いて10分間、バラバラになってみました。

10分後、来た子からかばんをしょっていきます。
最後の子がしょって、全員集まったことを確認!
自分がその場にいなくても、かばんに置き換えることで一対一対応が作り出せることを体感したのでした。
その後はスクールに戻り、昔羊飼いが、羊を石に置き換えて確認していたんだよと説明。
シェルパとしては、これが出てくることを期待しての授業でしたが、そこは子どもたちが考えた案が一番いいんですよね。
自分たちでやった後だからこそ、羊飼いのアイデアに
「頭いい!」
と、心から賞賛する子どもたちなのでした。

第7時「数字の発明!でも…?」

いよいよ人類の数字の発明に迫ります!
これまで、数のない世界をたっぷり体験し、数のありがたみを感じていた子どもたちにとっては
「いよいよかぁ…!」
と期待も高まっている様子。
まずは古代エジプトのイメージ動画を見て、背景を知ります。
「ピラミッドってすごいんでしょ!?」
「これは数字無きゃ造れないよなー。」
「ミイラの呪いって本当にあるの!?」
子どもたちは教科の枠に縛られることなく、関心の赴く方へ軸索を広げて学んでいきます。
そして、ヒエログリフを紹介!
1,2,3…と紹介していくと、
「…ん?線が増えていくだけ?」
と、ちょっと期待外れの様子。

しかし、10を紹介すると
「おお!変えてきた!」
テンションが上がってきました。
24などで例を示すと、
「なるほどー!いいね!」
と、暗号解読ムードに。
100,1000,…と紹介していくたびに爆笑!
「これ無理だわー!」
「書いてられないでしょ!」
ここでお約束の、ヒエログリフクイズ!
友達と協力しながら、ヒエログリフがあらわす数をみんなで必死に解いていきました。
早く終わった子には、自分でクイズを作ってもらいました。
自分が問題を作るのって、実はとてもよい学びなんですよね。
みんなで暗号解読ゲームを楽しみました。

このヒエログリフ、位という概念が無いからこんなにややこしくなっちゃうんですよね。
どちらかというと、今の紙幣(硬貨)と同じ構造になっています。
位がバラバラになってもわかるという良さは、今でも残っているんですね。
位取りのよさを感じるための布石でした。
ここでシーズン1はタイムアップ!
続きは夏休み明けです。
結局、3か月やってアラビア数字の2までたどり着きませんでした…笑

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