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セクシャリティガイダンスⅠ

元々は子どもが初潮を迎える前に、生理について教えようと思ったことがきっかけ。
そもそも生理って、公教育だと女子だけが学んでいるけど、だから余計大人になってもタブーになってるんじゃない?
それが原因で、男女格差も埋まらないんじゃない?
世界と比べても、ジェンダーギャップ指数ランキングが極端に低いのが日本。
男性でも、生理について知っておくべき。それこそ、先入観が出来上がってしまう前の子ども時代に。

一方で、生理って女性のことって思い込んでるけど、正確には「体が女性」ってことだよね?
心の性と体の性は違う。それって日本社会ではまだまだ当たり前になってない。
生理について扱うなら、その前段階としてLGBTQ+を知ってほしいよね。
身体と心の性を切り離したうえで、体の性で起こる男女の違いとして丁寧に扱いたいよね。
そんなこんなで大単元になりました。
事前に、世界で行われている包括的性教育と、日本の教育や社会の課題を保護者と一緒に学び合い、カリキュラムを行う了承をもらってのスタート。
セクシャルマイノリティ当事者を講師にお招きし、保護者や子どもたちとも一緒に認識を深め合いました。
いつかこの単元が、当たり前に実施できる社会、学校を夢見て。

第1時「男女?」

この世界にはたくさんの人が住んでいるよね。何人いるか知ってる?
「70億人くらいでしょ!」
よく知ってるね。じゃあその70億人をちょうど半分くらいに分けるとしたら、何で分ければいいと思う?
「国?」
「英語しゃべる人?」
「あ、男女!」
すると他の子がすかさず、
「どっちでもない人は?」
「…え?どっちでもない人??」
思ったより多くの子が、多様性を認識している様子。
「ニュースで聞いたことある!」
身体の作りで男と女がいて、心にも男と女がいて。
それが一致してる人もいれば一致してない人もいて、そもそもどちらでもない人もいて…
簡単に2つには分けられないかも、という話になりました。
まずはみんなの現在地点を知ることから。

第2時「ストーリーから入る」

実態がない話は、なかなか腹落ちしにくい。
そこで、わかりやすい絵本で、共感から入ることに。
紹介した絵本はジャスティンリチャードソン著『タンタンタンゴはパパふたり』(ポット出版)

ニューヨークにあるセントラル・パーク動物園で実際にあった話を絵本にした『and Tango makes three』の邦訳版で、仲良しのオスペンギン2頭がカップルになるという心温まるお話。
「別に男同士だって、好きなら結婚しておかしくない!」
「シロとロイ、子どもができてよかったねー!」
子どもたちにはすっと入ったようです。
その後、世界の同性カップルの写真を見たり、世界の法律の違いを紹介しました。
「なんで日本は同じ性だと結婚しちゃいけないの?」
「子どもできないから?子どもできないと結婚しちゃいけないの?」
子どもの疑問はとても本質的ですね。
知ることから問いは生まれ、問いをもつことがより世界を広げます。

第3時「男と女、何が違う?」

男と女、違いわかる?
「そりゃあわかるよー!」
ということで、引き続き子どもたちの現在地点を調査。
男女の特徴や好きなものを自由に出し合いました。
ジェンダーの影響が感じられることもあれば、意外な答えも!(肉好きが男、魚好きが女!)
子どもたちから出てきた意見は下の写真の通りです。

あまり体の作りの違いが出なかったので、お父さんとお母さんの体の違いについて思い出してもらいました。
・チンチン(ペニス)があるのが男、ない(ヴァギナ)のが女。
・女の人は胸が大きい。
・男の人はケガ生えてる。
「え!女の人だって生えるよ!?」
「そうなの!?」
子どもたちの文化圏の交流だけでも、十分世界は広がっていく。
水着で隠れる場所をヒントに、プライベートゾーンについても解説。
プライベートゾーンはみだりに人に見せたり、触ったり、触らせたりしてはいけないところ。+唇も。
絶体に、写真に撮ったり、インターネットに載せたりしちゃいけないよ?
これはデジタルシティズンシップ。
嫌な時は、ちゃんと嫌って言おう。たとえ相手が親でもね。
自分の体、大切に。

第4時「なんで男と女がいるの?」

なんで男と女がいるんだろう?
「赤ちゃんを産むためでしょ!」
そうなんだけども。
生き物には、オスだけ、メスだけって種類もいれば、そもそも性別がない生き物もいて、それでも赤ちゃんが産めるらしいよ?
「…えっ!?」
ここでは深入りせず、後で調べてみたいことはメモに残す。
疑問は流れてしまうから。文字で未来に託す。
ちなみに、途中でオスからメスに、メスからオスに変わる生き物もいるとか。
「性別って、結構適当でいいんだね…」
なかなかの至言!

ここで、小学校5年生の理科の単元「人のたんじょう」の動画を視聴。

興味を持っていて、それが動画であれば、学年なんてほとんど関係ない。
みんな楽しみながら食いついて観ていた。
みんなも、こうやって生まれてきたんだね。
精子と卵子って出てきたけど、この辺りに男と女がいる意味がありそう。
というところで、次回!

第5時「オスとメスに分かれた理由」

実は、子孫を残すだけなら、生き物は細胞で分裂できる。
だから、オスとメスに分かれていない生き物もいるんだね。
でも、人を含む多くの生き物は、オスとメスに分かれることにした。
その理由は大きく2つ。
1つ目は、1つから分裂すると「同じ特徴(遺伝子)になってしまう」という問題を解消するため。
「なんで同じ遺伝子だとダメなの?」
同じだと、寒くなったり、ウイルスが流行ったりしたらみんな死んじゃうからだよね。
「確かにー。コロナも怖かったもんね。」
2つ目は、掛け合わせる遺伝子を特徴によって振り分けるため。
女性がもっている卵子は、とても大きな細胞。
だから大事な遺伝子がたくさん詰まっているんだけど、反面全然動けない。これじゃあもう一つの細胞と出会えない。
そこで、もう片方に最小限の遺伝子で、動き回れる細胞を用意した。これが、男性のもつ精子!
「おー!かしこい!」
こうして、卵子と精子が出会うから、いろいろな種類の子どもが生まれるんだね。
ここで「受精」という言葉も説明。
「どうやって卵子と精子が出会うの?」
今回は生き物の交尾で説明。
性交に関してはセクシャリティガイダンスⅡで扱う予定。
そのための体の準備は、人によっても違うけど、早い子は10歳より前から起こるんだよ。
とっても大事なことだから、びっくりしないでね。
きっとみんなのお母さんも、経験してきたことだから。

第6時「生理って何が起こるの?」

女性が、体の中に卵子を作り始めることを月経と言って、生理とも呼ばれている。
じゃあ具体的にどんなことがあるのかって、気になるよね?
「気になる!」
これ、男の人たちはほとんど教わってこなかったし、知らない大人もたくさんいる。
今も日本では、男の子はほとんど知らない。
でも、それじゃだめだと思うんだよね。
知らないと、女の子のことをケアリング(配慮)したり、守ってあげたりできないじゃん?
「確かに。」
だから、世界の他の国みたいに、ちゃんと学ぶべきだと思う。
そんな切り口から、世界と日本の現状や課題について簡単に触れました。
そして、今回もやはり動画を視聴。

ちょっと恥ずかしそうにしている子もいたけど、だからこそ小さい時から学ぶこと、当たり前になっていることが重要だと感じた。
生理の影響は人によっても違う。
だから無理することはないし、よいも悪いもない。
気になる人はお母さんにも聞いてみてね。

こんな流れでセクシャリティガイダンスⅠは終了。
Englishの時間にも、多様性に関わる絵本を読み聞かせたり…

ダンスの時間では、性について考えるような題材で話し合ったりしました。

多様な人がいること自体に価値がある。
それは、生物学的にも説明できること。
男女に限らず違いがあって、だからこそ強いし、楽しい。
自分とは違う誰かのことを知り、気遣うこと。
それがまさにケアリングの精神です。
成長の中で、自分や互いの体の変化を肯定的にとらえてくれたら何よりです。

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