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算数的探究「数と論理」2022冬

第15時「なんで1年は365日なの?」

幾何分野へと発展させていくことをねらいに、まずは大前提の基礎から。
昔は時計なんてなかった。その頃って、どうやって生活していたんだろう?
ということで、みんなお得意のタイムリープ!
「太陽が昇って沈むから、朝と夜はわかる!」
「昼も、なんとなく太陽の高さとかでわかりそう」
太陽が出ていた時間を12分割した説を採用。諸説あり。
こうやって1日が繰り返すことに気付いたんだね。じゃあ、1年は?
「季節とか?」
「でも、エジプトとかって1年中暑いんじゃないの?」
「1年経ってもとに戻るもの…太陽の出てる時間とか?」
鋭い意見がどんどん出ます。
ここで助け舟。この頃は、大きな洪水が定期的に起こって、畑を耕していた人たちは困っていたんだって。
ここで、洪水について簡単に説明。
ある日村人たちは、大洪水が定期的に起こることに気付き、その間の日数を数え始めた。
すると、おおよそ360日ごとに大洪水が起こっていることを突き止めたんだね。
過去を知ることで、未来を予測できるようになる。
だから、大洪水の前に作物を収穫できるよう、種植えの時期を調整したんだ。これが1年365日の始まり。(諸説あり)
「昔の人、すげえ!」
「どうやって数えたんだろ?棒とかかな?」
子どもたちは、古代の人類の知恵に純粋に驚いていました。

第16時「分度器で測る」

いよいよ角度に突入。
「円の一周は360度。あっ、1年と一緒だ!」
そう、1度というのは、円一周を360等分して基準にしたんだね。
ここで、事前に準備しておいてもらった分度器の使い方を紹介。
拡大画面に映しつつ、実際に手を動かし、教え合いながら角度の測り方を習得していきます。
練習問題をした後で、
「よし!じゃあ今度は、スクールの中のものをいろいろ測ってみよう!」
ロッカーや本、机、パソコンなど、いろいろなものを分度器を使って測ってみます。
すると…
「あれ?90度ばっかりじゃん!」
測ってみるから気付くこと。
100じゃなくて90,この中途半端な数字の正体は…?

第17時「90度と四角形」

前回スクールにあるものを分度器で測ってもらったけど、何度のものが多かった?と聞くと、
「90度!圧倒的に90度。」
みんな口をそろえて教えてくれました。
90度っていうのは「垂直」とも言って、床に対してまっすぐになる角度なんだよ、と言ってみんなで確認。
この90度を4つあわせると…
「あ!一周になった!」
「90」という、これまで中途半端にしか感じなかった数字が意味をもった瞬間です。
ちなみに、90度を4つ繰り返すと…と言いながらブラックボードに図を書いていく。
「四角形!」
ここからは図形の話。
身の回りに四角形のものある?と聞くと、子どもたちは日常四角形のものに囲まれて生活していることに気付きます。
なんで四角形なんだろう?しばしディスカッション。
「四角形だと敷き詰めたり、重ねたりしやすい!」
「三角形だったら、ロッカーに飲み物入れられないよ」
捉えなおしてみることで、デザインの必然性に目が行くようになります。

第18時「長さ比べゲーム!」

今回は、あらかじめ切り分けておいた毛糸をもって公園へ。
2人1組でチームを作り、1本ずつランダムに毛糸を渡してから説明。
ちなみに1本の長さは1m前後。

⑴今組んでもらったチームは国です。
⑵そしてこの毛糸は、この世界でとても貴重な毛糸です。
⑶国に1本しかないこの毛糸、実は長さが違います。
⑷その中に1組だけ、同じ長さの国があります。その国を探し、毛糸を交換してください。
⑸ただし、この毛糸はとても高価なので、持ち運ぶのは危険。だから、横に並べて直接比べるという方法は禁止です。

早速、方法を考える子どもたち。
手を広げて「これくらい!」、枝に巻き付けて何周したか、石をならべて何個分か、地面に印をつけて…様々な方法で、ペアの国を見つけていきました。
無事すべての組み合わせがそろったところで、比べ方をシェア。
「長さを伝えるのって大変!」
「だって、石の大きさも違うんだもん」
手を広げた長さ!って言ってた人もいるけど、その長さって人によっても違うし、成長したら変わっちゃうよね?
でも、昔は王様の体の長さで実際に測ってたらしいよ。
「えー!」
地面に印付けてるとこもあったけど、その場にいないと比べられないし、印つけたものを持っていくとしても、大きすぎたら不可能だよね?
だから、「この長さを1mにしよう」って、昔の人たちは世界共通で決めたんだね、と話しました。
ちなみに、地球1周はぴったり4万km。(正確には多少誤差がありますが。)
これって不思議じゃない?
「え、なんで!?すごい偶然!」
偶然じゃないんです。その秘密は、また次回。

第19時「1mの感覚をつかむ」

前回、地球は4万kmだと話しました。
それはたまたまではなくて、地球の長さを基準にして、それを切り分けて1mを決めたんだよ。
「え!地球一周測った人がいるの!?」
「無理でしょ!海もあるんだから」
そう。一周は無理。だから、できるだけ長い距離を、何年もかけて命がけで歩いて測って、そこから計算して北極から赤道までの距離を出して、それを1万kmって決めたんだって。
「昔の人、すげー」
地球儀を見せながら説明します。
ここからここまでが90度、こないだやったね。
これを4倍するから、地球1周は4万km!
ちなみに1mってこれくらい、と1m物差しを提示。
じゃあ、スクールにあるもので、1mぴったりのものを探してみよう!
子どもたちは巻き尺片手に、様々なものを測っていきます。
「あった!カーペットタイル2つあわせるとぴったり1m!」
「わたしの身長は、1mよりちょっと長いなぁ」
縦だと測りにくいからと、仰向けになって友達と身長を測り合っていました。
こうやって、mという長さの感覚が育まれていきます。
ちなみに、指や足を広げた長さを知っておくと、定規が無くても長さを測れるから便利だよ、とアドバイス。
みんな自分の足を広げた長さなどを測り合っていました。

第20時「見えないものを見る力」

前回メートルについてみんなで学んだけど、こういうものを「単位」って言うんだよ、と説明しながら板書。
他にどんな単位知ってる?と聞くと、
「キロ!」
「ヘクタール!」
「インチ!」
「円?」
子どもたちの身近にある単位がたくさん出てきました。
それらが重さを表すものだったり、面積(広さ)を表すものであることを説明していきました。
ここで、「キロ」について説明。
キロというのは、日常的に体重を表したり、道のりを表したり、車の速さを表したりするよね。
実はそれは省略しているだけで、正確にはそれぞれ「キログラム」「キロメートル」「キロメートル毎時」なんだよ。
キロっていう言葉がくっつくと、1000倍の意味があるんだね。
ちなみに、1000分の1になる言葉って知ってる?
「知ってる!ミリでしょ!」
そうそう。だから、キロとミリは反対なんだ。
「じゃあセンチは?」
お、確かにセンチメートルってよく使うよね。センチはここ。
ちなみにデシリットルとか、聞いたことある?
ここがデシ。
今でもフランスでは、ワインをcLで売っているよ。
そんなやりとりをしながら、下の写真のようにまとめていきました。
速さの80キロっていうのは、1時間に80km移動できる速さということ。
みんなが車に乗ってて、高速道路でそのまま走り続けられたら、1時間後には80km先の、この辺りにいるってことだよ、と話しながら地図で説明しました。
「光ってめちゃくちゃ早いんだ・・・」
光や宇宙に興味ある子がつぶやいていました。
この辺りの感覚が分かってくると、日常で入ってくる情報の質がガラッと変わります。
実は次の日、みんなで動物園に行くことになっていました。
きっと体重とか足の速さが書いてあるから、しっかり見てきてねと話しました。
知識がつくと、見た目では分からないものまで見えてくる。
数字の力を、日常的に感じてほしいと願っています。

第21時「試行錯誤で、重さの感覚を研ぎ澄ます」

今回は重さの単位について学んでみようか。重さの単位って知ってる?
「グラム!」
そうそう。キログラムとか、ミリグラムもあるんだったね。
では問題。身近にある、1gのものって何?
「えー!パソコン?」
「パソコンは重いでしょ!砂粒とか?」
「1円玉!」
ピンポーン!1円玉が1gだね。
「そんなに軽いのかー」
「じゃあ、1円玉1000枚あったら1kgってこと?」
そうそう。でも、1000円のお札は1kgもしないよね。
「…あ!だからお札にしてるのかも!?」
いいねぇ。アメリカで銀行強盗があって、要求された金額を全部小銭にしたら、重すぎて持てなかったって事件が本当にあったらしいよ。
そんなエピソードもちょこちょこ紹介。
ここからは「スクールの中のものでぴったり5gにしようゲーム」!
電子測りのところに一列で並んで、順番に1回ずつ重さを測っていきます。
最初はパソコンで200g…あたりからスタート。
「4gかー!」
「あれ、8gになっちゃった!」
何回でも測っていいのがルール。
試行錯誤と調整を繰り返す中で、徐々に5gの感覚を身に付けていきます。
「やったー!10円玉が5gだった!」
「え!?50円玉は4gだったよ。…あ、もしかして、この穴の分!?」
「A4の紙が5gだったー!」
「でも、10円と紙って、持った感じ全然違うよね…?」
ここでちらっと圧力の話も。おもしろい発見。
あらためて、動物園で見たゾウの重さがありありと想像できるようになった子どもたちでした。

1年目はこれにて終了!
リットルなどは、2年目からの「数と論理Ⅱ」に引き継がれます。
何より、算数の得意な子も苦手な子も、みんなで楽しく取り組めたことが一番の成果!
正解や効率や公式の前に、もっともっと数の感覚を豊かにする学びが必要なのだと感じています。
子どもたちと、引き続き新しい算術を創造していきます。

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