見出し画像

赤井計算「青春コンプレックスを抱えたおじさんたちに聞く!」

今回の記事は、自分が過去に企画した同人誌『共感性致命傷説集 vol.1』に掲載した架空のインタビュー原稿です。

頒布したのももう2年前ですし、boothの在庫も既にないのでここに再掲します。

今後も、過去原稿をいくつか載せようと思っています。(当然ですが、自分で執筆したものに限ります!!!)

『共感性致命傷説集』はvol.2もあるのですが、そちらは以下のリンク先から無料でダウンロードできます。

それではどうぞ。

赤井計算『街場の感傷マゾ』


今回、二人の男性にインタビューをさせていただきました。共に30代を過ぎた独身男性であり、都内で会社勤めをされています。

1人目は社内でメダカの世話をしているAさん。元は周りと同じようにデスクワークを任されていたそうですが、少しずつその配分が減り、ある時軽い気持ちでエサの補充をしたことをきっかけにメダカ係になっていったという熱い話をインタビューの前に聞かせていただきました。

2人目は仕事の傍ら音楽活動をしたいとここ数年思っているBさん。20代の頃は趣味の楽器で地元の音楽イベントに出演するなど、精力的に活動されていたそうですが、最近は仕事の忙しさと体力の衰えから余裕がなくなり、今更始めた「どうぶつタワーバトル」を床に寝転んでプレイしていると休日が溶けていくとのことでした。

お二人ともいわゆる「青春コンプレックス」を抱えたまま30代に突入し、それを歪んだ形で拗らせ、そのはけ口としてアニメや漫画、ゲームといったフィクションではなく、リアルにいってしまった方々です。(編集部)


インタビュアー 赤井計算
2021年9月12日


青春時代の記憶


──本題の前にまず、お二人が具体的にどういった青春時代を送っていたか伺っていきたいと思います。では先にAさん、良いでしょうか?一応共学だったということでしたが……。

A:青春時代ですか……。なんか、クラス内でドッと笑いが起こることってありますよね?その時期クラスで流行ってたネタ……たとえば、ぼくが覚えているのだと「よっ!気をつけて帰れよっ」っていうのがあって。

B:なんですかそれ。

A:誰かが……だいたい、クラスのムードメーカー的な人がやるんですけどね。勢いよく立ちあがって「よっ!気をつけて帰れよっ!」って言うんです。そうすると一気に笑いが起きるんですよ。たしか体育祭のあとから流行り始めたので、なんかそういう流れがあったんでしょうね。

──覚えてはいないんですか?

A:体育祭は行ってなくて……覚えてないというか、はい。

B:体育祭の日は何してたんですか?

A:さぁ……何してたんでしょう。Bさんは?

B:体育祭はなかったと思いますね。

──あったとは思いますけど……。

A:ぼくもそう思います。……まぁ、そんな感じのクラスだけでウケる内輪ネタってありますよね。それで笑いが起きるたびに教室を見回して「自分以外に笑ってないやつはいないか?」って確認してました。青春……ってか、学生時代を思い出すとそういう記憶しかないです。

──Bさんはどうでした?

B:ぼくは、もっと普通でしたね。一番覚えてるのは……文化祭の打ち上げにいったことですね。超青春っぽくないですか(笑)。

A:そうですか?文化祭って意外と盛り上がってなくてあまり青春っぽくなかった覚えがあるんですが……。

B:それはオタクがTwitterで言うやつですね。「現役高校生に伝えたいこと」みたいな。「生徒会の権限はそこまで強くない」「屋上は解放されてない」と同じ類の。

A:それはともかく、打ち上げがどうしたんですか。

B:高校3年のときなんですけど、ぼくのクラスは飲食店をやったんですね。午前中のシフトで、調理室と教室を往復していたら靴を失くしてしまって。

──あ、調理室に入る際は上履きに履き替えないといけなかったってことですか。

B:そうです。それで、靴が無いと帰れないし、文化祭の午後は靴を探して過ごしたんですね。それでもなかなか見つからなくて、帰れないので仕方なく後夜祭に行ったんですよ。

A:後夜祭……。

B:そしたら有志のステージで、同じクラスのカースト高い人がⅬOVEマシーンを踊ってて。野球部とかってモーニング娘。とか……もう少し下の世代だとももクロですかね。そういう曲を文化祭のステージで踊って、後輩にステージ下でオタ芸とかコールとかさせてますよね。あれムカつくんですよぼく。

A:わかります。運動部だからキレが良いんですよね。マジでムカつきます。

B:本当に最悪です。

──その、最悪のⅬOVEマシーンがどうしたんでしょうか。

B:めちゃくちゃ感動したんです。ほんとに嫌いだったんですよ?そいつらのこと。『野ブタ。をプロデュース』に影響めっちゃ受けててみんな亀梨みたいでしたし。

A:そのくらいの年齢だと、ぼくは『池袋ウエストゲートパーク』の窪塚に影響受けてました。

──窪塚、かっこいいですからね……。

B:兄が窪塚の真似して学校でボコられたことがあったのでそれはしなかったですね。それはともかく、その亀梨軍団がぼくは本当に苦手だったんですけど、彼らのステージに本当に感動して「これが、輝いてるってことなんだ!」って思っちゃったんです。裸足で。

A:アイドルアニメの第一話ですね。主人公が憧れのアイドルと運命の出会いを……的な。

B:ほんとにそういう気持ちでした。それで彼らへの好感度が爆上がりして、そのあと教室でめっちゃ話したんですよ。彼らも文化祭ハイなのかいつもより機嫌よくて。ぼくのことをそのあとの打ち上げに誘ってくれたんです。

A:いい話じゃないですか!

B:そうなんですよ!それで、カラオケに連れてってもらって……行く直前にめっちゃセットリストを作りました。

──聞くのがちょっと怖い気もするんですが、そのカラオケはどんな感じに……。

B:スベリました。ウケるかと思って、台詞が入った曲ばっかり歌ったんです。ちょっとヤバい空気になってるのはわかったんですが、もう止められなくて。

──ちなみに何歌ったんですか?

B:「暴いておやりよドルバッキー」と「サクラ大戦」です。

──どんな台詞なんでしょうか……?後者はわかりますけど。

B:(おもむろに立ち上がって)「やぁ!オレ、ドルバッキー!みんなどうして嘘ばっかり言うのかニャ~。愛も夢も、口に出すもんじゃないのにニャ~。結局あれだニャ~。みんな、一人で生きるのも死ぬのも、おっかなくて寂しいから、せめて道連れを求めてるだけなんだニャ~。ネコの俺に言わせてるご主人様も情けないし、あ~、やるせね~ニャ~」

A:なんなんですか?

B:当時のぼくに聞いてください。

──筋肉少女帯ですね。そのあと……?

B:ぼくを哀れんだ亀梨の一人が酒を勧めてくれて。確かはじめてだったんですが、とにかく飲みまくりました。

A:それはそれで嫌な予感がするんですが……。

B:亀梨の誰かがぼくに彼女いるのかとか、童貞なのかとか聞いてきたっぽいんですよね。あんまり記憶はないんですが……それで、酔っていたぼくは逆に「お前はどうなんだ!」みたいなこと聞いて、そしたら向こうは色々話し始めて……ぼくはムカついたんでしょうね。17歳ですし。キレながら「セックスを返上しろ!」とか叫び出して、殴られたらしいんです。

──あ、記憶はないんですね。

B:ありません。気づいたらゲロまみれでした。

A:気づいたら拳が血塗れだった系イキリの最底辺ですよ、それ。

B:ぼくの青春時代はそんな感じでした。

──途中まで結構良い話だったんですけどね……。

青春コンプレックス


──ここからは「普段お二人が青春コンプレックスを持っているが故に普段なにをなさっているのか」についてお伺いしたいと思います。Aさんが援助交際で、Bさんは……貢ぎ行為ですよね。

B:ぼくは元々ドルオタで、その延長線上でそうなっていきました。

──最初はアイドルに貢いでいたのが、いつの間にか……ってことなんでしょうか。アイドルに貢ぐってのはその、グッズを買いまくったりという一般的な奴とは違うんでしょうか。

B:はい、ちょっと違います。初めは純粋に応援していたので確かにそういう感じだったんですけど、途中から「運営に隠れて貢ぐ」ようになってきたんです。というのも、大体のアイドル現場には色々ルールがありまして、たとえばぼくの通っていた現場では推しに飲食物と現金のプレゼントをするのは禁止だったんです。前者はスタッフによる中身検査が出来ないから、後者はそれが常習化すると運営に金を入れなくなるからですね。

──それで……Bさんはそれをやってしまったということなんですか。

B:はい。お散歩券(1枚5000円。30分間メンバーと散歩が出来る。)を使った時、スタッフさんにバレないようメンバーに5000円上げたんです。そしたら次の日かな?インスタで「臨時収入あったから友達とスタバ行きました!」みたいな投稿があって。たぶん学校帰りなんだと思うんですけど。それが……なんか、凄く良かったんです。なんというか、自分はこういう放課後に友達と寄り道して……みたいな青春なかったなって。

──辛くはなかったんですか?それって……。

B:辛かったです。当時を思い出しましたしね。でも、それが逆に良かった。推しが自分のお金で楽しんでるから嬉しい、って感覚は不思議なことにあんまりなくて……というか、推しが推しに見えなかったんですよね。その時は。「あぁ、彼女も普通の高校生なんだな」って思って。ぼくのクラスメイトにもそんな子たちいたよなって。当時はインスタとかなかったので、こんな風に他人が青春を謳歌している姿なんて教室でしか見ませんでしたけど……きっとこういうことをしてたわけじゃないですか。だからなんか、推し本人っていうより、昔のクラスメイトたちが彼女に重なって見えて。それからアニメとか漫画とか読んでもすぐに「このキャラあの子みたいだな……」って考えるようになりました。戻れない過去にいる彼女たちも、存在しない彼女たちもぼくにとっては似たようなもんですしね。

──どうしてそれが良かったんでしょうか。

B:なんでしょうね……「青春を謳歌する素の彼女と、かつて青春を謳歌していたぼくのクラスメイトたち」が重なって……なんというか、推しが遠くに行ってしまったんです。毎週のように会っていた推しが一気に、あの頃ぼくが疎外感を感じていた人たちと同じ場所に行ってしまった。そんなこと最初からわかっていたはずと言われたら当り前なんですけどね。「アイドルとしての彼女」が素じゃないなんて当然ですし。
 ぼくは、ぼくが彼女と同い年のとき、同じ教室にいたみんなが過ごしていた青春には入れなかった。よく考えたらぼくが現場に通っていたのはそれをやり直すためだったんですよ。でも、やり直せたように思っていた青春は……やっぱりそれはぼくがお金を払って、彼女たちが見せてくれる夢でしかなかった。わかってましたけどね。わかっていたはずだったんですけど、それを改めて突き付けられました。それが凄く心地よかった。
なんか、今までずっと焦ってた気がするんです。だって本当は気づいてるわけじゃないですか。いくら高校生の女の子とまるでタメみたいな会話したって青春は戻ってこないんだって。そこから目を逸らす為に若い会話して、若い表情つくって……やっぱりずっと焦ってたんです。全部夢だったとわかったら、その焦りがスッと消えて安心したんですよ。解放されたんです。

──現場に通うのをやめたりはしなかったんですよね?

B:はい。お金をあげるのもこっそり続けました。次は50000円あげた記憶がありますね。

A:高っ!それ向こうもビビりませんか?

B:いや、特に。

A:怖い世界だ……。

──インスタを見たときどう感じたかは伝えたんですか?

B:伝えました。それと「50000円の方も好きに使ってね」と。そしたら……確か新学期が始まる前だったんですよね。「これでペンとかノートとか買う」って言われたんです。彼女、そういうのも自分のお小遣いから出してるそうで。

──それは……どうだったんですか?

B:なんか違うな、と思いました。

──「なんか違うな」とは……?

B:インスタを見たら、確かに彼女が筆記用具を一揃い、勉強机みたいなところに広げてる自撮りがあがってたんですよ。でもそれはやっぱりなんか違ったんです。だってですね、ノートならぼくも高校時代に買ってたわけですよ。そういうのじゃないんですよ、ぼくが欲しいのは!!!

──なるほど。

B:それで気づいたんですよ。あ、嗜好品とかじゃないとダメなんだなって。もっと言えば、ぼくの金で、ぼくが過ごせなかった時間を過ごして欲しいんです。なんなら、これをアイドルに言うのは変ですけど、彼氏とディズニーに行ったりして欲しかった。

──そういうのは流石になかったんですね。

B:ありました。

──え、あったんだ。

B:さすがにそれははっきりわかったわけじゃないですけどね。インスタには「友達と行った」って書いてありましたけど……あれは彼氏でしょうね。結構オタ仲間でも話題だったんですよ。怒ってる人もやっぱりいましたね。

──気持ち良くなってたのはBさんだけだったんですね。

B:そうです。だからオタ仲間には申し訳ないことをしました(笑)。

A:笑いごとじゃないですよ。迷惑な変態だな。

B:だからそのあと「ぼくが渡したお金はなるべく遊びに使ってほしい」って伝えました。彼女にこっそりお金を渡して、インスタやブログの投稿とか見たり、個握の時に最近放課後なにしたかとか聞いて、ぼくの渡したお金がどんな風に使われてるかを確認するのがその頃の一番の楽しみでした。

A:気持ち悪いなぁ。

B:そのせいで、正直グッズとかは買わなくなっていきましたね。まぁ、推しもそれで良さそうだったので特に気にしませんでしたが……運営がなんで現金プレゼントを禁止してるのかがよくわかりました(笑)。

A:ほんとに迷惑な変態ですよ。

──それはどれくらい続いたんですか?

B:半年くらいですかね。一回、手紙にお金入れて渡したんですよ。そしたらスタッフさんが中を確認してバレて、その現場は出禁になりました。出禁が切れるまで待っても良かったんですけど、そのままなんとなくフェードアウトしていきました。それから1年くらい経ってからですかね……Twitterで趣味の界隈の人たちと頻繁に関わるようになって。といってもDMで話したり、一緒にキャスをするくらいですけど。そこで何人か若い、それこそ高校生ですね……そういう子たちとも仲良くなってですね。

──彼女たちにお金を?

B:いや、女性だけじゃないです。若い子なら誰でもお金を渡しました。

──危ない発言だ……渡し方は?

B:基本的にはアマギフですね。あと……やっぱり女性が多いです。彼女たちの方が自撮りとか、どこで遊んだとかを写真で上げたりすることが多くて。そうするとやっぱり渡しがいがありますからね。男性にあげると、わりと自分でも想像のつく使い方をするというのも大きいです。

──目的としては、推しに貢いでいた頃と同じなんでしょうか?

B:そうですね。ただまぁ、当時に比べるとだいぶ軽い気持ちで渡してると思います。何人もいますし、相手と実際に会ったことがあるわけでもないですしね。でも、金額とか頻度が段違いになりました。アマギフなんて軽く送れますからね。もうホイホイ送ってます。

──パトロンですよね、もう。どれくらい送ってるんですか?

B:どうでしょうね……一人当たりだいたい月1万くらいじゃないでしょうか?誕生日のときとかは、5万くらい渡した気もしますね。

──お金ではなくてなにかモノを渡すことってないんですか?それこそ、相手のAmazonほしいものリストとかからプレゼントを渡すようなことも可能ですよね。

B:それはなるべくしたくないんです。ぼくは最後まで、お金を渡すだけの男でありたい。

──なるほど。

理想の青春は、どこにあるのか


A:会ったりはしないってのがわからないなぁ。ぼくだったら普通にⅮMで「東京行くんで会いません?」とか言ってオフ会しますよ。

B:ぼくはお金だけ渡したいんです。お金を渡して自分の過ごせなかった青春に使われているのが見たいんです。

A:いやぁ、やっぱりわからない。ぼくもBさんも青春コンプレックスを抱えてるわけですよね。たぶん客観的に見ればぼくの方が理解しやすいと思うんですよ。リアルタイムで青春を過ごせなかったから、今お金を出して女子高生とかと遊んでいる。Bさんが最初にアイドルに貢いでたのと同じですよね。なんでそこからひねりを加えつつ拗らせてるんですか?

B:たぶん、理想の青春がどこにあるかなんじゃないですか?Aさんは最初に「クラスの内輪ノリを1人冷ややかに見てた」みたいな話をしてましたよね。ぼくはそういうタイプじゃないんですよ。もし冷やかかに見ていたとしても、本心は別です。Aさんがぼくだったら、文化祭で陽キャのステージが輝かしく見えるなんてことはないんだと思うんですよ。

A:そうでしょうね。たぶんぼくは、自分が本当に望む「理想の青春」が現実世界に身近にあったことがないんだと思うんです。そういうのはアニメや漫画の世界にあって……で、それとは別に同世代への劣等感や性欲といったものから来る別種の「理想の青春」がある。ぼくが援助交際とかをしているのは後者を満たすためであって、前者とは関係ないんです。前者は絶対手に入らないものですから、せいぜいそういった類のコンテンツに触れて満足しておくしかない。

B:ぼくの場合、Aさんが言うような2つの理想の青春は一致してるんです。ぼくが過ごしたかったのは高校時代のあの教室でぼく以外のクラスメイトが過ごしていた3-Cのあの青春なんですよ。それを過ごせなかったことを今でもずっと引きずっているので、たとえばぼくが仮に……絶対にやらないですが、援助交際をしたとしても、満足しないと思います。その相手はぼくと同じ教室にいたことはないから。

──だから、ネットでの貢ぎ行為はあんまり熱が入らないんですかね。

B:それもあると思います。アイドルの時はまだそれに気づいていなかったので。

A:ぼくは学生時代、クラスに一切「理想の青春」を見出さなかった。Bさんは見出していた。そこが大きい差になっている、ってことになんですかね。

──Bさんの「青春コンプレックス」の中に、同世代への劣等感ってどれくらい割合としてあると思いますか?

B:あんまり無いんじゃないかなぁ。不思議だと思われるかもしれないんですけど。「自分の努力次第で経験できたかもしれないのに、努力不足でできなかった」みたいな、自己嫌悪みたいな方が強いです。

A:ぼくの場合、そっちはないですね……ぼくたちってどうすれば良いんですかね?

B:まぁ、でもこうやって自分たちのことダメだとかコンプレックスのせいでなんとかとか言ってるのが楽しいんだから、一生こうしてるしかないんじゃないですかね。

A:それもそうですね。ただまぁ、自分らはこれで良いんですけど……現役高校生とかにはこうなって欲しくはないと思います。

B:ぼく、姪がいるんですけどね。彼女は普通にめっちゃ青春バリバリ過ごしている子で、ABEMAの「オオカミくんには騙されない」とか好きらしいです。

A:あー。良いですね。

B:めっちゃ泣いたりするらしいんですよ。結構面白いのかな、とか思ったりします。

A:ぼくらみたいな陰キャはすぐにABEMAを馬鹿にしがちですけど、そういう態度が人生を貧しくしていくんですかね。

B:もし今、ぼくが高校生とか大学生だったら絶対そういう「ダメなタイプのTwitter陰キャ」だった自信がありますどね……ABEMAとかひろゆきとか好きな同世代を馬鹿にしたツイートでいいね稼ぎとかしてそうです。もしそういう学生がいたら、早く辞めて……ABEMAが嫌なら、地上波のドラマとか観た方が良いと思います。……なんか変な話になってきましたね(笑)。

A:これくらいで終わりにしますか……いいですかね?

──はい、今日はありがとうございました。励みになります。

B:なんのですか(笑)。

街場の感傷マゾ・アフター

後日、Bさんにネットでお金をもらっている高校生(Cさん)にもお話を伺ってみました。Cさんは都内の高校に通う17歳の女性で、Bさんとは1年ほど前にTwitterで知り合ったそうです。Bさんがお金を渡してくるようになったのは8か月ほど前。Cさん曰く、Bさんから一番お金を貰っているのは自分ではないか、ということでした。(編集部)


──多い時でどれくらい貰ったんですか?

C:12万円ですね。これは誕生日の月でした。Bさん以外からも貰っているので、そういうのも合わせると20万円は超えてますね……あと、Bさんはお金しかくれないですけど、他の人はモノでくれたりするんで。そういうのも換算すると……結構いってます(笑)。

──Bさんから貰ったお金の使い道って、基本的にTwitterにあげてるんですよね?彼が一番喜んでいたのって、どんなときでしたか?

C:お台場で1日遊んだ時だったと思います。その日は彼氏と遊んでいて、ラウンドワンにも行ったし、映画も行ったし、あと大江戸温泉物語も行ったな。あと遊園地(東京ジョイポリス)と、チームラボと……とにかく遊びつくして。その時は凄かったですよ。午前中に3回くらい「ありがとう!ありがとう!」みたいなDMが来て、うざかったのでその日はブロックしときました(笑)。

──逆に、渡されたお金の使い方に文句を言われたことってあるんでしょうか?

C:ありますよ。渋谷のエクセルホテル東急のレストランでご飯を食べたときです。

──あ、それってダメなんですね。

C:聞いたかもしれないですけど、Bさんは自分が経験できなかった青春を謳歌している姿を見て自己嫌悪に陥りたいらしいんですよね。だから「普通の高校生が行かないような場所」は行って欲しくないらしいです。てか金あったらそのくらい行くけどって感じしますけどね。女子高生のイメージやばーって思いました。

──じゃあタバコとか酒とかもダメってこと……ですかね?

C:たぶんそうだと思いますよ。

──なるほど。Bさんみたいな人のことって、Cさんたちはなんと呼んでいるですか?

C:貢ぎマゾか、財布奴隷ですね。Bさんの場合は向こうから積極的に送ってくるので、前者が近いと思います。本人的には「青春時代の鬱屈が……」みたいな、なんか文学チックなこと言ってますけど……まぁ、私からすると他のお金くれる人たちと別に変わらないんで。

──貢ぎマゾ……どう思ってるんですか?Bさんのことって。

C:うーん、まぁお金くれるのは普通にありがたいです。あとスペースとかⅮMで喋ってるのも楽しいですしね。あの人結構いい大学出てるんでなんかわかんない授業のこととか教えてくれたりもしますし、ツイートも面白いんで好きですよ。

──それは……なんというか、良かったです。じゃあ、貢いでくるのをやめてもらおうと思ったりはしないんですかね?

C:今のところはあんまり思わないですね。私、「Bさんに○○円もらったー」とか「それでディズニー行ったー」とかツイートするんですけど、他のフォロワーから結構批判されたりするんですよ。私もですけど、Bさんもですね。「Cの金銭感覚がおかしくなったら責任取れるのかー」とか、「Bがいいカモだってことを詐欺師に教えてるようなもの」みたいな理由で。でも基本そういうのは無視で……あ、ただBさんはちょっと面倒くさいとこがあって、そこはちょっとウザいかもです。なんか「自分って気持ち悪い?」みたいなこと聞いてくるときがあって……そこまでストレートじゃないですけど。

──そういうときってどうやって返すんですか?

C:おじさん構文とか……基本ネタで返しますね。「Bちゃんは、可愛いヨ♡」とか言って。そうすれば相手もネタに乗っかるしかないじゃないですか。なんとなくはぐらかされたな、っていうのはわかるからしつこくして嫌われたくないだろうし。そのリスクをおかすより「面白い返事してやろう!!」みたいな安易な自己満足に飛びつく方が気が楽なんじゃないですか。

──これ、多分Bさんも読むと思うんですが……。

C:良いですよ、別に。いつもこういうこと言ってますし。てか、気持ち悪いって言って欲しい相手にはどうすれば良いんですかね?

──さぁ……。

C:なんか一部の男性って「自分たちは無条件に気持ち悪いと思ってもらえる」って勘違いしてますよね(笑)。なんでそんなに、ただ気持ち悪いくらいで他人に、しかも年下の女に特別な興味をもたれると思ってるんでしょうか?他人から褒めてもらうには何か立派なことをするか、ちゃんと関係を作って彼氏彼女とか友達になるか、あるいは店でお金を払わないとダメっていうのはわかってるのに、気持ち悪がってもらうのはタダだと思ってるの意味不明じゃないですか?(笑)。ちゃんとした関係を築いた相手じゃなかったら、気持ち悪いとか思うとこまで行かないですよ。

──こういった関係って、一般的には恋愛関係に発展して終わるとか、トラブルが起きて終わるとか、色々ありそうですけど……BさんとCさんの、今の関係性が続くのっていつまでだと思いますか?

C:そりゃあ、来年までじゃないですか。だって私、高校生終わりですし。

──あぁ……。

C:だって、Bさんが私にお金をくれるのは、私が高校生だからでしかないんでしょう?なら、来年までですよ。それでおしまいなんです。



「青春コンプレックスを抱えたおじさんたちへのインタビュー」……でした。このインタビュー自体は架空ですが、A〜Cの3人にはモデルとなった人物が複数います。この「架空インタビュー」という形式はかなり書きやすかったので、いずれまた別のテーマでも書いてみたいですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?