8/16 陰謀論
父の職場に「マイクロチップが埋め込まれる」という理由でワクチンを接種しない人がいるらしい。インターネットではよく見ていたけど、身近(というほどでもないけど)にいる人がそういった主張をしているのは初めて聞いた。その人は元々アトピーやアレルギーが多く、そのせいか身体に異物を入れることへの拒否反応がかなりあるらしい。なるほど。
陰謀論で最近ぼくが気になっているのは、昨年亡くなった俳優・三浦春馬の死去を巡る陰謀論だ。陰謀の内容自体はいつものやつなのであまり興味がないのだけど、「春馬くんのことを調べていくうちに反日勢力や工作員の存在を知り、またメディアやマスゴミは決して信用できないとわかりました!」と言っている人がかなりたくさんいたことだ。もちろん、元々かなり危うい情報源を頼りに生活をしていた人だった、という可能性もあるが、もし本人たちの書きこみをそのまま受け取ると「元々は普通に過ごしていたが、三浦さんの訃報について調べていくうちに陰謀論に片足を突っ込んでしまいズブズブ」ということになる。昨日、「靖国の絵馬の9割が三浦さん関連の内容だった」という内容のツイートを見て正直踊いた。しかし、三浦春馬陰謀論界隈の中には皇族が朝鮮人で~みたいな人もいたはずだが、そういう人はどういうポジションを取っているんだろう。しかし、一口に「三浦春馬陰謀論界隈」とまとめてしまったが、過激・荒唐無稽な言説とは距離を取った上で、報道や事務所からの発表に不信感をもって色々と調べている、という人も中にはいる。誰もかれもが荒唐無稽なことを言っている、というわけではない。ただ、周りからは一緒くたに扱われてしまう。そんな視線を浴びていると、本当に同じような言動になっていってしまう人もいる。
やっぱり、「自分がおかしな言動を繰り返している」と思われるのは辛い。そこに反発するように過激化してしまうことも多いし、また、なかにはそれが辛くてやめてしまう人もいるだろう。三浦春馬陰謀論界隈なら、まぁ、それで困る、という人は特にいない。もちろん、家族なんかはたまったもんじゃないだろうが。しかし、過激化されても離反されても困る場合がある。
自分の考えや思想を伝えるビジネスモデルを取り、いわゆる“信者”を抱えている場合である。過激化して第二のオウム扱いされても困るし、離反されては商売が成り立たない。ここを上手く処理したのがキングコング・西野の映画『えんとつ町のプペル』である。以下のあらすじを見て欲しい。
舞台はえんとつだらけで煙に覆われた町。町の住人は煙の向こうに何があるのかを知らない。しかし、えんとつ掃除屋ルビッチだけは星の存在を信じていたのだった。そんなある日の夜、空から赤い塊がゴミ山に落ち、そこからゴミ人間が生まれた。ハロウィンの日にルビッチはゴミ人間に出会い、「ハロウィン・プペル」と名付け友達になる。ルビッチとプペルは意気投合、ルビッチはプペルに対し、煙の向こうには星があると信じていることを内密に打ち明ける。ひょんなきっかけでプペルは星の存在を他の人に話してしまい、たちまち危険人物として異端審問官に追われる身に。プペルと共に行動しているルビッチも異端審問官のターゲットとなってしまう。とある夜、プペルの心臓が大きく動き出すと、海からボロボロになった巨大な船が現れる。この船は、ルビッチの今は亡き父親ブルーノが書いた紙芝居に描かれていた絵とよく似ている。星の存在を信じていたために異端審問官に消されたブルーノの想いも引き継ぎ、ルビッチとプペルはこの船を使って星を見る旅に出ることを企てる。異端審問官から逃げながらも、同じく星の存在を信じる鉱山泥棒スコップの力を借りて大量の無煙火薬を入手する。星を見に行くために実際に行動を起こしていたルビッチの説得により、これまで星の話を信じなかった多数の住人もルビッチを応援するようになり、船は無事に出発し、煙に包まれた空に向かって上がっていく。一難ありつつも、空を塞ぐ煙の周辺で計画通りに無煙火薬を爆発させることに成功。爆風により煙は晴れ、まばゆくキラキラした空がそこには広がっている。ルビッチは、空や星の存在を明らかにするという夢を叶える。
この映画を観た西野の支持者は、プペルを自分に、ルビッチを西野に重ねることができる。この映画は西野から支持者への「自分たちは無知や無理解からバカにされ、謗られるかもしれない。でも最後に正しいのは自分たちだから、自分を信じて欲しい」というメッセージになり得る物語だ。そりゃあ、何十回見てもその度に安心するし気持ちが良いはずだ。改めて、西野を支持することの根拠を得られるのだろう。
幸福の科学が何本撮っても作れなかったアニメを西野は作ったのだ。
西野スゲー。
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