よくグチってくれる卑屈なお兄さん

世界はそれをシャイと呼ぶんだぜ

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タカハシさんといっしょ

2020/5/12(火)つづき  実家の最寄り駅に着き、母の車で迎えに来てもらう。二十九にもなって六十代の親に運転してもらわないと家にすらたどり着けないこと、もろもろ含めて情けないなあ、と思いつつも、漠然とした将来への絶望に集中するのに忙しい。  母は口少なに、「助手席じゃなくて一応後部座席の対角に座って」と冷静だった。  たどり着いた実家の玄関にて、「恥ずかしながら、帰って参りました」と横井庄一さんギャグの絶好のタイミングだと今にして思うけれど、当時はまったくそんな余裕

    • 緊急事態宣言の車窓から

       このご時世、県境をまたぐ移動は自粛せよとの風潮ですが、新幹線に乗って実家に帰省してしまいました。すみません。  このすみません、もウイルス対策の意識が甘くてすみませんというより、逃げてしまい申し訳ございません、という意識です。なんだか重ねてすみません。  対象の相手もわからぬまま、じゃぶじゃぶ湧き出る申し訳ないという気持ち。 2020/5/11(月)  先週の月曜、2週間の休みを経て会社の上司と今後の仕事の進め方を相談するつもりでした。  でもどうにも朝から呼吸が浅い。会

      • 白湯に溶けぬ、金魚のエサ

        金魚のエサみたい、と一目見て思った。 茶色いその粉は、「白湯に溶かして飲んでくださいね」という薬剤師の指示に従っても、ほとんど溶解してくれない。おどろおどろしい暗い色の液体を、目をつむって一気に流し飲む。 人が口にすべきものでないような強烈な風味を感じ、後味が腐った紅茶っぽい、という感想を経由して、やっぱりほとんど金魚のエサだと結論づける。 まずい、まずい、と一人暮らしの狭いキッチンで声に出しながら、追加の白湯を口に含んだ。 不安を抑制する漢方の薬だなんて二十九年生きてき

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      • 金魚のエサ
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