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リモート慣れした社員は「自律心」が低下している、という話を耳にした。

最近ある大手IT企業の人事部長から、会社のリモート会議でビデオオフ(顔を出さない)にする社員が増えていると聞きました。

顔出しNG?


またそれに対して上司が顔を出すように指示するとパワハラと言われることもあるそうです。

この話を聞いて、私、一瞬目が点になってしまいました。
これは一体どういうことなんでしょうか。

顔も個人情報という今どきの考え方や上司から複数の部下への一方通行の伝達事項だけであれば顔出しは不必要という主張もわからなくはありません。

がしかし、ビジネスマナーとしての常識感や仕事への積極性への印象から見ても、この行動には当然ネガティブな意見が多いのではないかと思うのですが果たしてどうなんでしょうか。
もしかすると私の方が少数派だったりして・・・

その他にも人事部長の口からこんな話が。
最近の若手社員は、仕事のやり方などで「こういう場合どうしたらいいか」と意見を求めると、

「決めてください」

と答えるそうです。

さらに始業時間と終了時間の報告をしない社員がいるので上司が注意したら、この社員は、

「いつどのように働くかは個人の自由」

と持論を展開したそうです。
さらにこの勤怠報告をしない社員を全く注意しない上司もいるというから人事部長の苦労もいかばかりかと思います。


社員も社員なら上司も上司・・・

この会社の入社3年以内の社員の比率は28%だそうです。
そしてこの28%はなんと全員テレワークしか経験していないのです。

たまに出社してもフリーアドレスなので誰が同僚なのかもわからないし、上司の顔もカメラ越しにしか見たこともないので認識できず挨拶もしてこないと人事部長は嘆いていました。
同時に、そもそも自分から回りに声を掛けて積極的にコミュニケーションを取ろうとする意志が全く感じられないことが問題だとかなりお怒りの様子でした。

自発的なコミュニケーション

人事部長は、出社しないワークスタイルが生んだ弊害はこうした「自律心」の低下に現れているのではないかと考えたようです。

実はこの会社でテレワークについてアンケートを取ったところ、「在宅のまま働きたい」と答えた社員が8割だったそうです。

では「テレワーク慣れ」が引き起こす心理的な現象をいくつか考えてみましょう。

・服装に気を遣わなくなる
⇒服装によるオンオフの切り替えがないので業務時間中の緊張感が薄れる。
・挨拶の習慣がなくなる
⇒最低限の挨拶もしないでリモート会議を始めようとする。
・マナーを考えなくなる
⇒通勤電車に乗らないので他者への気遣いやマナーを気にしなくなる。
・会社への帰属意識が薄れる
⇒会社に行かないし、名刺を出すこともないので自分が組織の一員であるという意識が薄れている。
時間管理をしなくなる
⇒早朝も深夜も勤務時間と考えているので他者のスケジュールを無視してしまいがち。ゲームもし放題。
・チームワークができない
⇒自己完結型のワークフローで動くので協同作業ができない。指示待ちになりやすい。
・空気が読めなくなる
⇒メールのコミュニケーションに頼り過ぎているので言外のニュアンスを読み取れない。
・雑談をしない
⇒直接業務と関係ない話をしないのでアイデアが広がらない。

確かに人事部長が危惧するように、「テレワーク慣れ」は「自律心」の欠如につながっているように思えます。
当然心理面だけでなく実務面にも影響が出ているはずです。

自律心って何・・・

コロナが収束して会社が出社比率を上げようとしても、なんだかんだと理由を付けて「出社拒否」をするようになったら末期症状です。
人事部長はそうなる前に会社としても何らか手を打ちたいと私のところに相談に来られた訳です。


「レジリエンス」は「自律心」を高められるか。


このお題に対する私の答えは、もちろん「Yes」です。
しかしアプローチの仕方は2通りあるのではないかと説明しました。

「レジリエンス」そのものは、ストレスでダメージを受けた心が徐々に立ち直るプロセスにおける「適応力」と「復元力」を意味します。
ストレスと対峙するという限定的な状況で発揮されるセルフコントロールという意味の「自律心」につながります。
例えば仕事で失敗したときに、ネガティブな状態の自分のメンタルを上手にコントロールするマネジメント力を持っているかということです。

まいったなあ・・・でもなんとかしよう・・・

しかしストレスマネジメントに限らず、社会生活全般での自律的思考や自律的行動に働きかけるという意味ではもう一つのアプローチが適しています。

実は「レジリエンス」は「心理的資本(Psycap)」に含まれる4つの要素「HERO」の一つでもあります。
この「心理的資本」の一つとして働く場合は「レジリエンス」は社会生活全般における「自律心を高める」役割を担うことになるということです。

「決めてください」

こう答えた社員の「心理的資本」に欠けている要素は何か。

いまこそ「心理的資本」に着目せよ!


まず「心理的資本」とは何でしょうか。

これは近年アメリカの経営学者であるネブラスカ大学のフレッド・ルーサンス博士が提唱した「働く人のモチベーションやエンゲージメントを向上させる心理的力量」と言われる新しい概念です。

「心理的資本」(Psychology Capital)は4つの要素(HERO)から構成されています。

希望(Hope)
自己効力感(Efficacy)
レジリエンス(Resilience)
楽観性(Optimism)

フレッド・ルーサンス「こころの資本」

この4つの要素の頭文字を取って「HERO」と呼ばれます。
まさに「メンタルのヒーロー」という訳です。

この4つの要素が単体としてはもちろん、相乗的な相互作用によって仕事に対する自信や困難を乗り越える力を養う「心理的資本(Psycap)」を生み出していくという概念です。

一つずつ見て行きましょう。

希望(Hope)
私は「HERO」の中でも最も重要な位置と重さを占めているのが「Hope」だと思います。トップバッターであり主軸です。
「心理的資本」の基盤だと言ってもいいのではないでしょうか。
ビジネスコーチング系の専門家は「Hope」を「希望」ではなく「目標」と置き換えて説明することが多いようです。
現実的でやりがいのある目標と計画を設定し、初期の目標が達成困難になれば計画を修正してでもモチベーションを維持できる心理状態を指します。
しかし私の感覚だと「目標設定」という言葉自体が人事評価システムを連想させることもあり、あまりポジティブに捉えられない気がします。
そして「心理的資本」は「モチベーション」と違って「変化しないこと」が特徴と言われています。
やはり日本語としては「希望」が当てはまるのではないでしょうか。
例えば「10年後の自分の理想の姿」をイメージして、そこに向かうためにどういうステップを踏むべきかというシナリオを常に持っているからこそ「心理的資本」の基盤になるのではないかと考えます。

自己効力感(Efficacy)
「HERO」の2番バッター。「Hope」を実現するためには欠かせない強力な主力メンバーといったところでしょうか。
目指す希望(目標)に対してそれを実現するための自分の能力を信じる力です。
高い希望(目標)に挑戦することへ前向きに取り組み努力を惜しまないメンタリティが「心理的資本」になるという考え方です。
最近の若い人たちは「承認欲求」が満たされることでこの「自己効力感」を向上させているように見えます。
仕事にも「いいね!」マークを付けて評価するチャットシステムが存在するのもよくわかります。そして「自己効力感」は測定することも可能です。

レジリエンス(Resilience)
「HERO」の中で一番スポットライトが当たらない存在かもしれません。ピンチヒッター的な役割だからでしょうか。
しかし仕事や社会生活にはトラブルがつきものです。
そして自分の失敗が原因で会社に迷惑をかけた時には、どんなに落ち込んでいても気持ちをコントロールしてきちんと適切に事後処理ができるのが「心理的資本」としての「レジリエンス」なのです。
さらにその経験を生かして自己成長につなげることも「レジリエンス」のもう一つの力です。
このポジティブな「ストレス耐性」が「心理的資本」のバックボーンになっています。
またこのコロナ禍を通じて私たちはメンタルにも「サステナビリティ」が必要であることを学びました。
「人生100年時代」は「ストレス100年時代」でもあります。
最近「レジリエンス」にも「ライフキャリアレジリエンス」という捉え方が生まれました。「心理的資本」を強化する概念になると考えられます。

楽観性(Optimism)
この「Optimism」については、聞けばほとんどの人が「自分は持っている」と答えるのではないでしょうか。
しかしなんでもかんでも「どうにかなるさ」と考えることが「心理的資本」としての「楽観性」ではありません。
社会生活においては自分ではどうしようもない出来事も多く存在します。
その悲観的な状況の中でも、自分でコントロールできることを探して前向きに行動できるというマインドセットが「心理的資本」になります。
例えばパンデミックや災害などの想定外の事態に直面した時でも、自分にできることは何かを自律的に考えて行動しようとするポジティブな思考力です。

前進あるのみ!

この4つの「HERO」をよく観察してみると、「心理的資本」は「H」というゴールを目指して、「E」「R」「O」がスクラムを組んでその推進役になっているという構造です。「自律」にはまず確固たる「Hope」を獲得することが必要なのです。

セミナーやりませんか?


という訳で最終的に人事部長には、「自律型人材をつくるHEROセミナー」を提案することにしました。
サブタイトルは『社員一人一人の心の「HERO」を刺激して、サステナブルな組織に育てるために』です。

詳細は一般社団法人レジリエンスコンサルタント協会のホームページをご覧いただければと思います。
一般社団法人レジリエンスコンサルタント協会 | ストレスを力に変えよう (1rca.com)

「レジリエンス」は「自律心」を高められるか?

「顔を出さない社員」「決めてください社員」「働き方は個人の自由社員」の「HERO」を一度刺激してみてはいかがでしょうか、人事部長!
「心理的資本=HERO」こそがいまの時代の人材育成のキーワードです。

メンタルのヒーロー現る!?

「レジリエンス」は「HERO」の一員として、日本全国の人事部長を支えたいと思います。

(レジリエンスの焙煎士)

https://www.amazon.co.jp/dp/B07N6R8F29?tag=note0e2a-22&linkCode=ogi&th=1&psc=1


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