見出し画像

なぜ土俵は四角と円でできているのか

明日9日から、大相撲五月場所が幕を開けます。「スージョ」と呼ばれる女性フアンが増えている大相撲ですが、無観客の静かな場所になりそうです。

画像1


相撲の起源を尋ねると、古事記や日本書紀にも「力くらべ」の神話が登場しますが、一般庶民の娯楽として定着したのは江戸中期になってからでした。最近は外国人力士の活躍が目立ちますが、「国技」としての伝統は相撲のあちこちに散見できます。

巨体がぶつかり合う土俵ですが、一辺6,7mの正方形の土台に、16の俵で仕切られた内径4,55mの狭いエリアです。四角の土台は大地を、俵の円は天を象徴しています。土俵の中央には15㎝四方の穴があけられ、勝ち栗、昆布、洗米、スルメ、塩、榧(カヤ)の六品が埋められています。「鎮めもの」として神様に捧げる供物です。

画像2

土俵入りする横綱は注連縄(しめなわ)を締めています。ふた筋の縄でより合わされた注連縄は、陰陽合一を具現化したもので、太極を意味する小宇宙を表しています。注連縄には垂(しで)が下げられていますが、これは神の世界のシンボルです。四股(しこ)を踏むのは、地の負を鎮めて天の勝ち(陽)を祈る儀式で、地鎮祭と同じ意味があります。

五穀豊穣を願う「ハッケヨイのこった」

土俵上の闘いをさばくのは行司ですが、「ハッケヨイのこった」と叫んでいるのはなぜでしょうか。ハッケヨイの八卦とは、易の八卦のことです。八卦は乾(天)兌(沢)離(火)震(雷)巽(風)坎(水)艮(山)坤(地)で、宇宙の森羅万象を表しています。これらがすべて収まることで、五穀豊穣を願っているのです。

画像3

ごく最近まで占い師が「八卦見」「易者」と呼ばれたゆえんでもあります。

つり屋根の四方には黒、青、赤、白、四色の房が垂れ下がっていますが、これは方位を表しています。黒は北、青は東、赤は南、白は西です。「本日の赤ぶさ下審判は00親方」とアナウンスされますが、審判が陣取る方位を色で表しているのです。

画像4

大相撲にまつわるすべてが、東洋運勢学のルーツである易経や、陰陽五行論の思想を象徴しているのです。

戦いの机上演習「囲碁」

易経に関する伝統文化に「囲碁」があります。古代中国で陰陽説が実在した証明として、現在に息づいています。囲碁は古代中国の殷、夏、周の時代に、娯楽ではなく戦争の図上演習(シュミレーション)として、作戦を練る手段として用いられていました。

画像5

碁盤の寸法は1尺2寸で、1年12か月を表し、縦横360に刻まれた目は、1年360日。碁石の黒は陰、白は陽を表しています。円形の碁石は動いてやまない天、四角碁盤は不動の大地を表しているのです。天地を表す大相撲の土俵とも通じます。

画像6

中世の戦国武将が、囲碁に興じるのは遊びではなく、文字通り命を懸けた作戦を練っていたのです。

コロナ禍の政治家や行政マンを見ていて、痛感することがあります。大相撲に日本人の横綱が不在なのと同じように、政界に国家をけん引するリーダーがいないことを示唆しています。党利党略と利権漁りに明け暮れる政治家には、長期的ビジョンに基づいた国家観も想像力も欠けています。せめて囲碁に親しみ、深謀遠慮を鍛えて欲しいものです。

スライド15


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?