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カミングアウトの無い世界へ


第二の故郷TOKYO! ここが故郷?OKINAWA

26歳の頃、地元沖縄で会社を営む父親の元で働くべく、6年間の東京生活に区切りをつけ引き上げました。

前の記事に書いたように、20歳の時に性に対する葛藤や自分自身の在り方に悩んでる現実から逃れるために飛び出した東京。そこは、目に入るもの、接する人々、肌で感じるもの全てが新鮮で刺激的で、僕にとっては最高の環境でしかありませんでした。

ゲイの友達もたくさんでき、同じような悩みや葛藤なんかを共有し励まし合い、仲間と呼べるような友と出会うことができました。20代前半という、個人の価値観や感性が構築されていく大事な時期を、東京という刺激的な環境で過ごせたことは、僕の人生にとっては大きな糧となりました。東京が第二の故郷だ!と言わせてください笑

そんな東京生活に後ろ髪を引かれながら、26歳でなんとなく再スタートした沖縄生活。その現実は、まあ相当過酷なものでした。

・離れていたことで感じなかった母や家族の問題。

・”会社を継ぐ”という、ことの重大さへの心構え不足。

・6年のブランクを感じる交友関係。

・結局はオープンでいられないクローズドな環境に逆戻り。

改めてぶち当たった壁を上げたらキリがないくらい、この時は何もかも自暴自棄になっていて、とにかく沖縄に帰ってきたことを後悔する毎日でした。あえて自分で落とし所を見つけるとするなら、セクシャリティにおいてオープンでいられないことが自分の人生を謳歌できない理由、自分がゲイであることが沖縄ライフを楽しめない理由なんだと、何かと自分が同性愛者という事実が理由だと置き換えて卑屈するばかり。

この時は、、、いや、今もそうですが、

満員電車が恋しい、、、駅ホームのゴムの焼けるような匂いが恋しい、、、

くらいにまでになっていました笑 もはや故郷感ないじゃん沖縄っ!!

でも後から気づくのですが、単純にそれは、色んな覚悟が足りてなかったし、現実問題が想像以上にキツかった、ということでした・・・


『やる気あり美』との出会い

そんな中、僕の友人が活動している団体、やる気あり美に出会いました。

前回も紹介したのですが改めて笑

LGBTQをテーマに、いろんな角度から面白おかしく、時にはシビアな内容も、変にかっこつけず(もちろん相当試行錯誤されています笑)まっすぐ発信していく様が、僕の心にクリティカルヒット!! 是非のぞいて見てください。

そこの編集長である太田くんと何度かお話していくうちに、彼の人生観や生い立ち、物事の捉え方にとても感銘を受けました。本当に尊敬している友人の一人です、まじリスペクト笑 その中でも、彼のゲイライフで大きなきっかけとなったと言う、カミングアウト。某SNSにて、カミングアウトの投稿をしたのです。彼がとった行動から得たものや気づいた事、そしていまの活動内容などを聞いていると、

『彼のようになりたいな、、、カミングアウトかあ、、、僕にも必要かも。』

と思うようになっていきました。僕もSNSはヘビーユーザーで家族や友人、色んなつながりのあるツールですので、そこで発信することによって、理解してくれる人もいれば、去る人もいるだろうし、それでも自信もって自分らしくいられるのなら最高じゃん。それが今後の沖縄生活において、僕にとっての理想だな、、、と。

そして太田君との話し以外にも、僕にとってやる気ありみの発信するコンテンツは、ゲイとしてではなく、一人の人間として学びになることがとても多かったのです。やる気あり美のLGBTQの内容にとどまらず、生きていく上での物事の捉え方や落とし込み方、その他の奥深い内容の数々から、メンバー全員の感性や太田くんがとった行動がどれだけ大きかったのかと、更に関心しました。

ぜひのぞいて見てくださいね!また宣伝笑


当事者のぼくより達観してる、同級生の言葉

それからというもの、早速カミングアウトの内容を下書きをし、あとは投稿するだけ、というところまできていたのですが、親しい友人達にこういった内容が媒体から伝わってしまうのは気が引けたので、彼らには直接伝えてから投稿しようと思い、何気ない飲み会を開催してはカミングアウトをする、というのを繰り返していました。今思うと、なかなかすごいことをしていましたね笑

幸いにも、カミングアウトをした友人達は理解を示してくれて、またこれまでとは違った濃い時間が流れるようになりました。そのうえで、実はカミングアウトの投稿をしようと思ってる、つながってくれてる人にも伝えていこうと思っている。と話をしていったのですが、一人の友人が、興味深い反応を示したのです。

『わざわざしなくていいよ。カミングアウトって必要ない事だと思う。』

・・・ん?・・・まさかの反応でした笑 

これまでの友達は、『え、全然いいじゃん!』とか『すごい行動だね!尊敬するよ!』と、理解をしてくれたうえで優しい言葉をかけてくれましたが、彼は、受け入れはしてくれたものの、その後の持論が違いました。

彼曰く、

同性愛者の人だけがそのリスクを背負うのはおかしいと思う。HIKOはHIKOだし、わざわざ発信してもしなくても周りは何も変わらないと思うし。ただ受け入れられない人もいるはずだしそれは仕方ないことだから。リスク負わなくていいんじゃない?

度肝を抜かれました笑 なんだこいつ、、、超かっこいいじゃん。

彼はバスケ部時代の同級生で、今でもよくつるむやつなんですが、ここまでマイノリティーについて落とし込んでるとは思わず、なんなら変な偏見を持っていたのは僕の方だったのです。カミングアウトをする事にただ反対したのではなく、同性愛者だけがリスクを負う必要がない、まだ理解できない人がいる現代社会をも見据えての言葉。僕が全然考えきれないところまで掘り下げていて、真剣に正直に話してくれた彼の姿勢には、感謝と尊敬の意しかありませんでした。


カミングアウトするリスクを同性愛者だけが背負うのはおかしい。

それよりも、社会が早く変わっていくことが必要。

全員が全員、マイノリティーについて疎いわけではないし、

なかにはしっかり考えてくれている人がいる。


そんなことを、彼の言葉で気づかされました。また新しい価値観に出会わせてくれた彼には、本当に感謝しています。


おっさんずLOVEへの反応

当時話題になっていた【おっさんずLOVE】。田中圭さん扮するノンケ(異性愛者、同性愛者ではない人)が、ゲイの後輩、ゲイの上司の想いに板挟みにあいながらも、本当の愛に気づいていく純愛ドラマです笑 描写の中には男性同士のキスシーンや、純愛ドラマあるあるの気持ちのすれ違いやハッピーエンド。ゲイの僕としてはキュンキュンたまらない内容でした。

さっきとは矛盾してブレブレなんですが、これもまた僕の方が持っていた偏見だったのでしょう。この時代、同性愛者の内容でも”誰もがみんな”面白く見ているものだと思っていたのです。昨日放映された内容をおもしろおかしく会社で話していた時のこと、その中のパートのおばさんが、

えええ気持ち悪いっ!男同士がキスしてるのとか見てられないっ!

と笑 

当事者が近くにいるかもしれないのになんて言い様っ!このご時世で理解無いとかどうなんだよっ!!と、、、しかし、と同時にこないだの友達の言葉を思い出しました。

受け入れられない人もいるはずだし、それは仕方ないことだから。

よく記事やツイートなんかでも見る内容なんですが、親戚にカミングアウトした時も、以下ような言葉を言われました。

同性愛者は理解できるし否定もしないけど、いざ自分の子どもや家族にいるとなると、正直、戸惑う部分もある。

でも、本当そうなんです。今でこそ、LGBTQの情報がたくさんある世の中で周知や理解をしてくれる人も増えてますが、それと反面、反射的に同性愛を受け入れられない人、実感がない人たちもまだまだたくさんいるのです。だからと言ってそういった人達の価値観に偏見を持ってしまう事は、本末転倒です。

人それぞれの意見や見解は、何故そう思っているか、

何がそう思わせているのか、社会が今どうあるのかを意識し

把握し、照らし合わせて捉えていくことが、

他人を受け入れていくポイントなのかもしれません。



個性として受け入れる姿勢

『HIKOがゲイかどうかなんて、HIKOの星座を知ったくらいの事』

これはこないだの記事にも書きましたが、カミングアウトをした際に友人が言ってくれた言葉です。とても理解のある、暖かい言葉でした。


人間というのは多種多様で、いろんな考え方や哲学、そして個性を持った人がいますね。そういった人達と接していると、気づきがや学びが多く、本当に日々勉強になります。

個性というのは色んな要因で変化するものだと思いますが、そういった変化から生じる価値観の相違は、それこそ『人それぞれ』で間違いないです。人と接するにあたり、その『人それぞれ』に気づき、敬い、尊重し合う事が何よりも大事なのではないかなと思います。それが異国感の文化、人種、宗教、政治感、セクシャリティ等においても。

そして、個性や感性に関わる要素として、『性対象』もそのうちの一つだと思います。逆にいうと、『性対象』がなんなのかだなんて、その人の個性の一つに過ぎません。

もちろんそのことで悩んだり苦しむことなんて、無いことに越したことはありません。一方で、良くも悪くも、その経験がその人を構築する個性の一つになるのかな、と思う部分もあります。

異なる見解や価値観があったとしても、

理解できない人がいることを理解していく姿勢もまた、

今の世の中には必要ではないでしょうか。


カミングアウトが無い世界へ

これまで話してきた、やる気あり美の太田君、カミングアウトをして達観した意見を述べてくれたバスケ部同級生、おっさんずLOVEへの拒否反応を示してくれたおばさん。カミングアウトについて彼らの話しや反応で、たくさんの気づきがありました。

カミングアウトをすることで、気持ちや精神が救われる人や人生が大きく変わる人もいれば、逆に受け入れられない人を作ってしまうのも事実。でも、現時点での社会じゃ誰も間違いじゃない。LGBTQの人たちが近くにいて、友達にいて、家族にいて、子どもにいて、というところまで実感できいないのが現状で、あくまで情報の一つにしか過ぎないのだと思います。

でも本当に、本当に身近なところで、一人の人間として生きている当事者がいます。同性愛という一つの個性を持って生きてる人がいます。ただ、それで苦しんでるかもしれません。悩んでるかもしれません。まだまだ悩まざるを得ない社会だから。

多くの人が、『性対象も一つの個性』という認識をもつことができ、どんな人でも一人の人間として敬い、尊重し合っていくよう努めれば、そのうち社会全体が変わっていくと思います。その為に僕もこういった発信をしたり、経験談を話したりして、より”身近”に感じてもらいたいと思っています。


そして一番の理想は、


カミングアウトをする必要のない世界が訪れること。


これにつきると思います。

達観した同級生が言っていた、『カミングアウトってする必要がない。』という言葉。本当に大きな気づきになりました。

LGBTQの話題の中では、どうしてもネガティブな事柄も起きます。カミングアウト、孤独、差別、いじめ、アウティング、自殺、結婚ができない。

こういった、絶対に起きてはいけない事柄が無くなるくらい、同性愛の存在が社会の中で当たり前になっていって、個人個人がありのままに、生き生きと、自信をもって生きていける世の中になることが、一番の理想だと思います。


当事者の私ができること

カミングアウトについて色々と思い悩み、考え抜いて、最終的に僕がとった行動とは。。。

大々的なカミングアウトはせず、かと言ってそれを隠さず、

ありのままでいること。

大々的なカミングアウトをする前に、家族や友人、大切な人や身近な人には共有することができ、幸いにも受け入れてもらえました。みんな真剣に向き合ってくれて、一緒に悩んでくれて、こんな僕に寄り添ってくれたことに本当に感謝しています。ただ今の社会だとまだまだ、当たり前ではないので、より身近にいるということを、発信し続けようと思いました。

SNS上では、あえてカミングアウトはせず、恋人との日常を自然にアップしたり、同性愛の内容のコメントを入れたりと、今まで出さないように気を遣っていたことを、逆に意識せず、包み隠さず発信するようにしています。

お世話になっていた塾の先生や、友達の親御さん、音楽の先輩方等、改まって話すのではなく、自然と会話の流れで『彼はどんなことしてる人なの?』『同棲で生活は順調?』など言ってくれる人もいました。

一番嬉しかったのは、SNS上でしか繋がっていなかったノンケ(同性愛者ではない異性愛者)と思っていた人と初めて会った時に、『実は自分もそうで、HIKOさんのスタイルに憧れて思い切って会いたいと連絡しました。』と言ってくれた時です。こうやって自分のスタイルが誰かのポジティブなきっかけになってくれることを目の当たりにした時に、この選択をしてよかったなと、とても励みになりました。


ただ、これは良い例に過ぎません。僕の発信を受け取って、去っていった人や、色んな意味でショックを受けた人もいると思います。その人の受け取り方が間違っているとも思いません。それは僕が僕らしくいるうえで生じてしまう相違だったのだと思います。だからと言って彼らに偏見を持つのではなく、しっかりと受け止めて、その葛藤も乗り越えていく。新しい出会いもあれば別れもあるのは、同性愛問わず、誰にでも言えることです。

自分の理想の空間に自分の身を置いておくために、日々学びや気づき、成長を心掛けながら行動して、その先にある晴らしい出会いや経験をしていきたいと思っております。そのためには、自分の同性愛という個性に自信をもって、そして発信して、少しずつでもいいから、社会が変わっていく流れに貢献できたらなと思います。


そう、カミングアウトをする必要の無い世界を目指して。





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