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【オーダーメイド物語】誕生日の物語#04

淡く透き通った赤と緑が混ざり合う、悲しいほどに美しく不思議な空を写した不思議な泉。
そのほとりに腰掛けてうつむけば、ほとりほとりと落ちていく私の涙の雫が水面に触れて花になる。
私の中から生まれてくる深い深い悲しみが、そうして少しずつ姿を変えていくのを眺めながら、想いをなぞる。
妖精たちが編み上げたレースのように繊細な愛だった。
慈しみ、育み、ゆるりと稔らせた愛だった。
けれど、あのひとはもう、どこにもいない。

「なかないで」「なかないで、いとしいひと」

さらさらと花たちが囁く。

「やくそくを」「やくそくをたがえることはないわ」
「だから、うたを」「うたをきかせて、いとしいひと」

あの人が残してくれた紅玉のペンダントを掌に包んで胸に抱き、望まれるまま、魂が求めるままに、かつてあの人が教えてくれた導きの歌を紡いでいく。
旋律は泉に咲く花たちとともに空へ舞い上がり、私は枯れぬ涙を花に変えて歌い続ける。

そうして、幾つの夜を超えたのか。
淡い赤と緑に揺れる泉が、いつしか虹の光をたたえる花園へと姿を変えた時。
あの人が、一度は世界のためにとその身を賭して消えた精霊の王が、私の前に再び降り立った。

*誕生石・誕生日花*
ウォーターメロントルマリン:重なる幸せ
ルビー:情熱・勇気・自由・威厳
アリウム:深い悲しみ・正しい主張
ルコウソウ:繊細な愛

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あなたの誕生月&日の石と誕生日花をキーワードにつづる少し不思議な物語
正式なリリースの前にFacebookでモニター募集させていただいた34編を順次公開いたします


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