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ジュニア育成の本質とは何か?

まだまだ若いと思っていたら、いつの間にかにアラフォーになり、家族も出来ていました。

子供の頃描いていた大人像よりもだいぶ未熟な気がしていますが、そういうものなのでしょうか。そういった家庭環境の変化もあり、次第に、社会的にも「自分が後進を育てる立場」と考えるようになってきました。元日の暇な時間に、ふと、ずっと昔から言われ続けている「ジュニアゴルファー育成」について考えていました。

改めて「ジュニアゴルファー育成の本質とは何か?」を、アメリカのジュニアゴルフ出身の僕の視点から整理してみましたので、アウトプットしておきます。途中長いですけど、重要なことが含まれている気がするので、個人的な記録を含めて書いていますので、読み飛ばしながら読んでみてください。

結論から言えば「その国のゴルフ文化の成熟度」だと思っています。
将来に文化を紡いでいくのは、いつの時代も例外なく、若者だからです

日本のジュニアゴルフの現状

ジュニア=プロゴルファー志望と見られることが多いと思います。ジュニア料金制度やジュニアスクールが広がったとはいえ、ラウンドしようと思えば、3000円〜10000円の料金はどうしてもかかってしまいます。競技に出始めれば、送迎や用品、試合に出かける遠征費用を考えれば、その出費は「将来への投資」と捉えても、致し方ないところもあります。いくらゴルフが教育に良いからといっても、実状を踏まえて言えば、遊びや学びのためにそれだけ金銭的、時間的コストをかけられる家庭は限られます。子供たちもまた、その期待や重圧を知りながら、その期待に答えたいと必死に頑張ります。多くのジュニアゴルファーにとって、もはや「ゴルフは遊びではない」のです。この競争に誘うことが、「ジュニアゴルファー育成」とは、僕は考えていません。

日本にも大きなコストをかけずともゴルフが出来る環境を提供してくれるところは多くなってきていますが、僕がアメリカで経験させてもらったジュニアゴルフ生活は、とても恵まれたものでした。日本とアメリカでは、国土も環境も違うので、単純に日本に置き換えられるとは思っていませんが、社会の育みの大きさは、アメリカがとても成熟しているので、私事で大変恐縮ですが、あえて紹介させていただきます。

コミュニティーが育むジュニアゴルファー

12歳の時、家族の仕事の都合でアメリカに強制連行されました。学校に行っても友達が出来ないし、言葉もわからないので、ストレスが多い日々を過ごしていました。そんな日々の、ストレス発散の一つがゴルフでした。

家から5分の距離にあるゴルフコースでは、ボール1カゴ5ドルで芝生から打ちっぱなしが出来ました。放課後か土日、週2回くらいのペースで練習場に連れて行ってもらったと思います。レンジでボールを打った後は、パッティンググリーンでアプローチとパット遊び。むしろ、こっちの方がメインのような感じで、日が暮れるまで遊びました。そのような光景は、珍しいものではなく、とても歓迎されていました。

コースデビュー

ドライビングレンジである程度球が当たるようになり、パッティンググリーンで覚えたアプローチとパットがある程度上達したころ、父がショートコースに連れて行ってくれました。ショートコースと行っても、本格的なパー3や短いパー4があるコースです。なかなか思うようにはプレー出来ませんでしたが、カートに乗って広いコースをプレーする開放感と高揚感は、今でも忘れません。大人料金が30ドルくらい、ジュニアゴルファー料金は確か9ドルでした。その後、4、5回ほどショートコースを体験し、いよいよ18ホールのゴルフ場に連れて行ってもらいました。そのコースも、大人と同伴すると、トワイライト(午後2時以降のプレー)は、10ドルくらいでした。土日のピークタイムは、午前中です。午後2時以降は、スタートする人が疎らな時間で「入ってくれれば、単価低くても全然歓迎だよ」といった時間でした。
しばらくは、そのコースで月に2、3回のペースでプレーしました。お古のレディスクラブを持って、レディスティーからプレーしていました。そうしていると、中学生くらいの少年たちが、自らカートを乗り回しながら、とんでもなく早いプレースピードで、青ティーから、250ヤードを楽々超えるようなドライバーショットを放ち、コースをプレーしているのを目撃しました。のちの高校ゴルフチームのチームメイトでした。

初めての競技ゴルフ

結構な確率で赤ティーから90を切れるようになった13歳から14歳になる夏、初めて地元のジュニアの試合に出場しました。
最初はあまり乗り気ではなかったのですが、ハーフターンの時に配られるホットドッグとコーラが嬉しくて試合に出始めました。

白ティーからプレーして、確か90前後で回ってたと思います。その夏は良く練習したので、夏の最後の試合で奇跡的に78が出て、3位くらいに入賞しました。これで自信が付き、ホットドッグ目的ではなく、競技をしたいと思うようになりました。

高校入学とカントリークラブへ

14歳になった9月から高校生活が始まったのですが、たまたま同じクラスに以前ゴルフコースで会った青ティーがいました。「お前、赤ティーからゴルフしてたやつじゃないか」と馬鹿にされましたが、そいつに「お前ゴルフやるならトライアウトに出ろ」と高校ゴルフチームの存在を教えてもらいました。

ここ(アメリカの高校ゴルフチームの話)で高校の話を書いてますので、時間がある方は、そちらも合わせて読んでみてください。

ゴルフチームに入ってみると、青ティー含め、ゴルフチームの半数以上が、「キシミーベイ」というところで練習をしているということを知りました。
キシミーベイカントリークラブは、僕が住んでいた家から車で約15分ほどのところにあるメンバーシップ制のカントリークラブで、まだ出来て6年ほどしか経っていない、当時としては比較的新しい、住居コミュニティー型の中流カントリークラブでした。そこでは、週に1回、4〜5時間程度のカート洗いやボール拾いの無償業務をこなすことで、子供から年配者まで、平日または休日の午後ならいつでも無料でゴルフが出来る、という制度がありました。

ヘッドプロを紹介してもらい、土曜日午後のボール拾いのシフトに入ることになりました。平日の放課後は、母に送迎してもらい、午後3時ごろから日が暮れる7時か8時くらいまで毎日のようにキシミーベイに入り浸り、チームメイトらとラウンドを繰り返しました。
空いているホールを縫いながらプレーすると、午後3時からでも36ホールくらいは十分にプレー出来ました。

アメリカの高校生のレベル

それだけラウンドしていれば、どんなに才能がなくても、ある程度上手くなります。同じ高校のチームメイトや、他校の高校生合わせて12名ほどがキシミーベイに在籍していましたが、全員平均70台でプレー出来る力がありました。当時の僕は、17歳になるまでに地元の試合を何度か勝ち、運良く地区予選を勝って、所謂「世界ジュニア」にも出場しましたが、その12人の中では特別に上手い方ではなかったです。全員がそれぞれのことを「大したことない」と思っていたと思います。

それも、州レベルの選手とたまに試合で一緒になると「次元が違う」と感じたからでしょう。
キシミーベイに居た僕らは皆、それなりに上手かったですが、高校を卒業した後、大学ゴルフチームまで進んだ選手は、1人しか居ませんでした。実際に、統計として、ジュニアゴルフ経験者が大学のゴルフチームに入る確率は16分の1だそうです。地元の有名なジュニアだけ、大学から声がかかり、スポーツ奨学金で大学に行ったり、学業の成績で大学に進んでトライアウトからゴルフチームに入ったりしていました。

大学ゴルフに進めなかったジュニアゴルファーはどうしたか

基本的には、皆、一時的にゴルフを辞めました。週に1回、ラウンドをするようなことがあっても、競技レベルで続けることはありませんでした。その後、12人中、3人がPGA of Americaのメンバーになりました(いわゆるプロ)。大学卒業後に、ゴルフ関連の仕事に付き、PGA of Americaのプログラムを進み、PGA of Americaのメンバーになりました。彼らは技術を教えることもありますが、仕事の殆どは、ゴルフコースやショップ、プログラムのマネジメントをする仕事です。ゴルフに携わる仕事全般をPGA of Americaは司っているのです。ゴルフが好きで、キャリアにしたいと思った仲間のうちの3人は、この道を選んだということです。残りの9人は、不動産屋、消防士、海軍など、さまざまな道に進みました。アラフォーになった今は、週末にゴルフを楽しみ、時には子供たちを連れて一緒にゴルフをしています。僕たちが、そうしてもらったように。

ジュニアゴルファー育成と循環モデル

さて、長くなりましたが、超シンプルですが、下記の循環こそが、ジュニアゴルファー育成の目的です。結果として、キシミーベイにいた12人は、今もゴルフを楽しみ、後進指導などをしています。そんな実体験を通して確信していることですが、基本的には、18歳未満(高校生まで)のジュニアゴルファー育成を社会が無理なくサポートすることで、スムーズに、自然と、ゴルフ普及の循環は流れていくようになります。


ステップ1:動機と誘い
・「タイガー・ウッズ」「藍ちゃん」「遼くん」「渋野日向子」などのスターを見て「やりたい!」
・親に連れられて始める

ステップ2:体験
・スナッグゴルフ体験会
・ゴルフ体験会
・無料体験レッスンなど

ステップ3:導入(ジュニアスクールに入会)
・定期的レッスン(練習場やショートコースなど)
・コースデビュー

ステップ4:家族などでゴルフ
・ジュニア料金が設定されているゴルフ場
または
・ジュニアゴルフスクールの仲間とゴルフ

ステップ5:競技への導き
・レベルに応じたローカルゴルフトーナメントへの出場(市内、県内のイベント)

ステップ6:競技の追求
・より高いレベルの試合への導き(地域の大会)
・資金的負担の軽減(奨学金制度の活用など。今後の課題)

ステップ7:進学または休止期間
・より高い教育を受けるための手段としてのゴルフ(大学への進学など)
・ゴルフが上手いということで、高等教育を受けられるチャンス
・ジュニアゴルフを終え、一時的にゴルフから離れる場合も

ステップ8:プロになるか、アマチュアとして楽しむか
・トーナメントプロを目指す志と技能があれば挑戦
・その他ゴルフ関連の職業に従事する(ゴルフのプロ)
・他の業種を選び、趣味でゴルフを続ける

ステップ9:それぞれの形でサポーターとして後進指導
・自分の子供などをゴルフに誘う
・ジュニアスクールなどで教えるまたはサポートする
・資金援助または環境整備を手伝う


ジュニアゴルファー上がりの社会人ゴルファーの重要性

ゴルフを生業としている人も、していない人も含み、ジュニアゴルファー上がりの社会人ゴルファーは、後進指導に必ずと言っていいほど積極的です。
なぜなら、自分たちが通ってきた道を、後進に対して、さらに良くして繋いでいきたいと考えているからです。
あまり恵まれた環境になかった人は、後輩たちには良い環境を提供してあげたいと思うでしょう。
その人口を増やしていくことが、裾野を広げていくことの重大性であり、ジュニアゴルファー育成の本質だと考えます。


まとめ

現在、恵まれた環境にあると思っている人は、その環境かそれ以上のものを子供たちの世代に遺したいと思う。

どんな分野であっても、親が子に願う気持ちと同じように、将来に繋げようと思う気持ちこそが、ジュニア育成であり、子供たちへの教育だと思います。どのような文化を遺していきたいか、それこそが目指す山であり大義で、それぞれの業界に従事する人たちが討論すべき事柄だと、常々考えています。

それぞれの分野で、どのような世の中を理想とするか?その理想は、一丸となって目指していけるものか?誰が統率をとっていけるのか?
答えは一つではなく、さまざまな自治体や業界によって、目指す山の大きさは違うはずです。

2020年に第1回大会が実施された「柏オープンゴルフ選手権」をフラッグシップイベントとして活動する「柏ゴルフフェスタ」および、柏市内のゴルフ事業者の間では、ぼんやりと目指す山の方向を共有しつつあります。柏での活動についてはまた改めて書きます。


余談

以上で完結です。ここからは有益な情報がありませんので、僕にビールを奢ってくれる人用の欄です。核心だとは思いますが・・内容には全く期待せずに購入してください。

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