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ほふく前進と、受心した夢

その日の朝は珍しくとても体調が良かった。

わたしは新築した家でシックハウス症候群になってしまい、気管支喘息を患い寝込む日が多かったので、スッキリとした晴れやかな気分で目覚めたことで体調としてはとても心地よかったのを覚えている。


気分よくすっと目が覚めると、天井の電灯が回っている。

すぐにめまいだと気がつかなかった。

なに?なに?と思い、ぐるぐる回る電灯をおもしろがって見つめていると、急に船酔いのような吐き気に襲われた。めちゃくちゃ気持ちが悪くなった。

ところが、起き上がれない。

周りの景色がすべてグルクルと回っているので、自分の体をどう動かせばよいのかわからなくなってしまった。けれども吐き気はますます強くなるいっぽうだった。


そうだ!目をつぶろう!

目をつぶったまま起き上がる。

よし!

目をつぶったまま立ち上がる 。

   … めっちゃふらつく。

ひゃー立てないぃぃぃ

仕方がないのでうつ伏せに倒れてみる。

よぉ…し

ほふく前進!

おいっちにー、おいっちにー、

トイレにむかって、

おいっちにー、おいっちにー

(ゲボは噴射寸前)


先に起きていた夫が、1階からあがってきた。

で、

「ど、ど、どうしたっ?大丈夫かっ!?」

ってなるよね。普通。うちはならない。


何?という感じで無言で足元のわたしをただ見下ろす夫…

しゃーないから、「めまいで立てない。トイレでゲボ吐く」と、具を呑み込みながら苦しく言ってみる。

ふぅ。。。んと、

わたしをまたいでクローゼットにむかった。

ムカつくーっ。ま、いいけど。


げろげろげろー、

そして、おいっちにーおいっちにー、

なんとかベッドに。

でもすぐにまたベッドで吐き気

おいっちにーおいっちにー、

げろげろげろー  

……その繰り返しだった。

「やっぱ、治んないから寝てるー!」と、1階の夫に叫ぶ。

「わかったー!いってきまぁす♪」と夫。

少しは心配すれよ!と思うけど、ふだんから具合が悪いたちなのでしかたないか苦笑

そして、とりあえず、寝れば、この強いめまいがおさまるかも、と、ふたたび寝たのだった。


そしてしばらくして、


夢を見た。


以前借りて住んでいた家の物置の前にわたしは立っていた。

おもむろに物置を開けると、そこには見知らぬ少年の遺影が置いてあった。

その写真を手にとったとたん夢は終わった…


ガチャ。

1階で音がしたので、はっきりと目が覚めた。


ぎし、ぎし、と階段を登る音。


やばい、やばい、

わたしは、めまいが落ち着いたのを確認すると、ベッドから降りて、ふらふらしながらも急いで階段にむかった。

こんな昼間に階段のきしむ音!間違いない!


泥棒と対峙するならベッドよりも、階段!

そうとっさに判断した!

うまくいけば、ひと蹴りで階段したに突き落とせる!チャンスは一瞬だ!

と、

階段にフラフラになりながらも突進するとそこには夫がいた。

「会社、早退した」

普通、そこで妻は「わたしのために?❤️」ってなるよね。でも、瞬間に、目の前に、夢で見た写真が現れた。

「お葬式?」と言うと、「あ?わかる?」と夫(あきらかにわたしの不思議言動に慣れているヤツ)

「いま、夢でみたから」

まだ、フラフラする身体を壁によりかかせながらわたしは言った。

夫は喪服を探しながら、言う。

「昨晩、同僚のお子さんが亡くなった。夕方すぐにお通夜をするから手伝って欲しいって連絡あったと会社に頼まれた」


そっかぁ…

そういうことだったんだね…

わたしは、そのお子さんを受心してしまったんだね…


わたしは納得してふたたび寝ることにした。

勝手に結びつけたけれど、それはそれで自分への自己暗示になって、からだが安心するだろう思ったからだった。

案の定、もう2度とぐるぐる回るめまいはおこらなくなり、少しだけの揺れがかすかに残るくらいまでに回復したのだった。


少年とわたしにはなんの面識もない。夫もその同僚と特別親しかったわけでもない。だから、これらのいちれんのことに意味付けは無意味かもしれない。

でも、やはり、突然の体調不良と夢のことはいまだに忘れられないでいる。それをわたしは『受心した』と今でも思っている。

そして、その後、夢のことは夫以外には言ってないけれど、めまいのことは友人たちに話すと「病院にいくべき!」となり、大学病院で精密検査を受けたのだった。

そしておもいもよらない診断がついたというわけです。↓

↓受心について

↓受心気質のわたしに似てしまったかもしれない…