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ひろってはいけない心のおとしもの⑥


朝からセンセーショナルなことばかりでスタッフみんなも驚きの連続だった。

店にくる客がみんながデパートの飛び降りの話をもちこみ、そしてスタッフからふたつもあったことを告げられて驚く、ということが一日中繰り返した。


ほぼ同時に2本むこう裏の別のデパートから飛び降りた人がいたという事実…


○○デパートから飛び降りた人は、運よく街路樹がワンクッションになって一命はとりとめたらしい、というのは後日わかったことだった。

ところが、わたしの働く店のすぐちかくの△△デパートから飛び降りた人は即死で、どういうわけかしばらく放置されてしまうことになってしまった。

主任は「助かる見込みがないからだ」と当時は言っていた。


あとからわかったのは、ほとんど同時刻と思われるタイミングでデパートの屋上から飛び降り自殺があったことで情報が錯綜したらしい。

しかもふたつのデパートは道2本差なので、住所が近いことで、まさか別件があったとは消防局も思わなかったのだろう。


結局、主任は、救急車の到着をあきらめて指名客もいるので店にもどってきた。

とりあえずどなたかがその男性に毛布をかけたらしい。そのあとも彼は長く放置されてしまった…


わたしは複雑な気持ちで働いていた。


あんなになにか落ちてくるような気がして上を見上げていたけれど、


落ちてきたのが…  まさか人だったなんて…


全く想像できなかったことだった。