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オタサーの姫にもなれない

3月29日にNSCの卒業式がありました。

オンラインでの開催だったというのと、来月頭にある芝居公演の稽古をしていたので、NSC近くのガストで受けました。自分たちのテーブルの周りをネコチャン配膳ロボットが駆け巡る中、スマホにイヤホンを差し込んでお話を聞きました。

「君たちはこれからプロになります」
『青く光るトレーからお料理をお取りくださいにゃ』
「厳しいこともたくさん言ってきましたが」
『失礼するにゃ〜』
「頑張ってください!」
『(デン♪デンデ♪デンデデンデン♪)』
楽しい卒業式でした。

数ヶ月前に、とあるオーディションを受けさせていただきました。そこで求められていた人材は、

①アラサー
②恋愛が上手くいってない
③スクールカーストで言う2軍

といった感じでした。

ワシやないか

正直、勝ち確だと思いました。恋愛経験ほぼゼロ、カースト1軍の子たちを斜に構えて見てきたという自負も自信もあります。

これまで培ってきた(培わざるを得なかった)こじらせ経験を時系列順に片っ端から思い出してゆき、iPhoneのメモにしたためました。読めば読むほど、キショ~となりました。しかし、こんなどうしようもない、誰に言っても引かれてしまうような黒歴史も、芸人になればそれが手札になる。人生に無駄なことなんてないんだなとしみじみ思いました。

想像していたよりも文字量が多かったので、当日は文字に起こしたエピソードたちを両面印刷して持って行きました。

バカウケ

めちゃくちゃウケました。エピソード自体が面白かったのか、はたまた私のトークスキルが急に花開いたのかは分かりませんが、相手の呼吸整えを待つ時間さえあるくらいウケました。

その日はいつもとは違う駅に降りていたのですが、馴染みのない景色を見逃さないようにしながら機嫌よく帰りました。珍しく、音楽もラジオも必要ありませんでした。

めちゃくちゃ落ちてました

2軍にスポットライトが当たる数少ないチャンスでさえ、私は選ばれることがない。「真の2軍」であることが証明されました。2軍であることを分からせるために、ありのままの2軍をお見せしようと励んだ結果「分からせすぎた」のかもしれませんし、そもそも趣旨を理解していながらもそれを表現する際のスキルも無さすぎました。

駄目だなぁ。

なんか、薄々感じてはいましたが、世渡りとかコミュニケーションとかそういった類のものに対する能力が低すぎます、やっぱり。

〜自分語りフェーズ〜

学生時代、ずっと1軍を妬んできました。自分たちのノリに周りを巻き込んで、それに乗れない者には「ノリが悪い」と、さも自分たちが正義だと言わんばかりの身のこなし。それでも奴らは馬鹿みたいに楽しそうで明るくて、私は奴らを下に見ていないと羨ましくて気が狂いそうでした。

「絶対、あんな風にならないぞ」と自分を暗示させながらも、心臓に近いところからは「絶対、あんな風になれないぞ」という本質が身を突き破ろうとしてきます。

リーダーシップだってあるし、空気を作る力もある、強引だけれどエネルギーに満ち溢れているんです。結局人々は、そのとてつもない光に集まってゆくんです。

好きな人、なりたかった役職、認められたかった場所、任されたかった仕事、自信を持っていたはずのもの、私が欲しかった全てを掻っ攫い、それを青春と呼ぶ1軍が、私は心底大嫌いでした。今思えば、全部全部、被害妄想なんですけどね。

このオーディションのおかげで、私は1軍には絶対になれないということがはっきり分かりました。でももしかして、2軍でもないのでは?という疑惑も発生しました。てことは、3軍?

大学に入って、「オタサーの姫」という言葉を知りました。いわゆる「紅一点」のことで、男性ばかりが集まりがちなオタク系・インドア系のサークルに属する女性のことを指します。

貴重な存在であること、また男性側の女性に対する免疫が低すぎることから、彼女たちはお姫様扱いを受けます。言わば、3軍の中の1軍です。

あれになれるかどうかを一度考えてみたのですが、いやいや、絶対に無理やんと思いました。

3軍が嫌とか下に見ているとかではなく、恐らくですが、姫は姫でその場においての立ち回りが上手いんです。

彼女たちは人を選んでいるものの、自分を可愛く見せる方法を知っているし、男性たちに対して「それに応えてくれる」という自信を持っている。だから惜しげもなく素直に可愛いに徹することができるんじゃないでしょうか。

その自信が大切なんです。
種類なんて関係ありません。どんな形であれ、自分から放たれたものは認めてもらえるという信頼が、身体の緊張をなくしてくれるんです。彼女たちは可愛いです。

本当はカーストなんて関係ありませんでした。そんなの野暮野暮の野暮です。どこでもいいんですよ、好きな場所で好きにしたらいいんです。何もかもがどうでもいいんです。そんなものに縛られてないでください、卑屈にならないでください、お願いだから。

24/2/7/13:50
他人というのは、いつも私を苦しめてくる。街を歩いているときの視線が怖い。なんでこっちを見てくるのか、なんでこっちを見てくれないのか、私を見るな、 私を見つけてほしい。真反対の感情がなぜ同時に現れてくるのか、本当に意味が分からない。でもどちらも怖い。それは恐らく、自己否定による他人への恐怖と自己否定による自己顕示欲ゆらいのもので

iPhoneのメモ

さもなくば、ひょんなことからこの思考に陥ります。認められたことがないから自己肯定感が低いし、認められたことがないから自己顕示欲が強すぎる。この感情(感情か?)のピークが去年の今頃です。

〜自分語りフェーズ〜

声優の養成所を尖って辞めました。そして、未来が見えないことがこんなにも苦しいのならば、未来が見えることを始めようと、もう就職しようと考えていた時です。コントに出会ってしまいました。人が作ったものをやるより、自分の負の感情や抱えているものを作品にして昇華できたら、これって生きる意味になるんじゃないかって思ったんです。

なかなか決心できずに、5月入学という形になりました。でも、本当に入って良かった。

知り合いの輪が既に出来上がっていたため、ピンでネタ見せをすることになり、そこで1本目のコントを作りました。忘れもしない初めてのネタ見せの授業、変な汗かきまくり震えまくりでネタを披露しました。そしたら、私のことを知らないであろうクラスメイトや先輩たちがすごく褒めてくれたんです。めっちゃ面白かったって。同期がすごく優しいんです。ここを自分の居場所にしたいって、強く思いました。

最近になってようやく、他人たちが私自身を見てくれているような感覚が芽生え始めました。自分だけでは自分が本当にこの世に存在しているのかが証明出来なかったから、他人たちが私の中身と接してくれているという事実が、私に輪郭を付けてくれています。幾分か、生きるのが容易くなってきました。

自分を頼ってくれる人がいて、自分も頼れると思える人がいるというのは、NSCに入る前の自分では考えられないことで、奇跡に等しいように思います。今、生きている自信がとてもある。嬉しいです。

他人のことがこんなに大切なのは久々です。みんなで売れたいね、そうなったら凄く楽しいよねって思います。みんな辞めないでよね。

明日から1年目になります。全人類の懐をお借りして、謙虚にやっていきたいと思いますので、なにとぞご贔屓に。

今年の目標: 話術の向上、コミュニケーション能力を平均値へ
馬場豆知識: 姫になること自体には興味あり

馬場光

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