キングダム韓非子から学ぶ経営者・管理職のための組織論 #1

韓非子とは

  • キングダムにも登場した法家・韓非子が生涯をかけてまとめた中国古典

  • 人間は利己的であり愚かでうそをつく生き物であるという性悪説を前提に会社組織をどのように管理し導くべきかについて教えてくれる実用書。

  • 人間の本質を楽観視せず、ルールと賞罰の徹底によって組織が目的を達成することができるという法家思想。

  • 会社・組織を運営するうえでさぼり・なまけ・そんたくなど人の性質がゆえに起きうる問題を解決するヒントを教えてくれます。

外儲説 第32

第一類

明君は実用を持ってものを良し悪しを判断するのに対して、暗君はことばの巧みさや流暢さを誉め、人の行いが高尚(上品である)ことを敬う。よって周囲の人がいうことなすこと全て大きすぎることになり実用的でなくなる。
[例]
墨子が3年かけて凧をつくったが1日で壊れてしまった。弟子は「先生は木で作った鳶(トンビ)を飛ばすことができるとはなんと器用なのですか」と褒めたたえました。しかし墨子は言いました。「私は荷車をつくる大工にも劣るよ。彼らは朝飯前ほどの時間で車を作り大きな石を運ぶここともできるし、そして長年使うこともできる」大工の仕事こそが真に器用であり価値がある仕事である。
[ビジネス]
報告資料のデザインや色などにこだわりすぎ時間をかけていないでしょうか?本当に大事なことは中身であり、その資料が売上や改善に効果があるかです。上司が部下の報告資料の見た目を誉め、そして指示ばかりしているとますます外側に時間をかけることになり意味のない仕事になるので注意が必要です。

第三類

相手のためにやっているのだという気持ちが潜んでいると、かえって相手を非難したり恨んだりすることになる。むしろ何事も自分の利益のためにやっているのだという気持ちでいればすらすらとうまく物事はまわるのである。
[例]
人は幼いころに父母に愛されて育てられないと大人になってから恨む。また子が大人になり年を取った父母の面倒をみないと、父母は子を責める。親子はもっとも親しいはずなのにそれでも恨んだり責めたりするのは相手につくしてやったのにとか気持ちがあり、自分に対しての恩返しが十分でないと考えるからである。
それに対して主人と雇われ農夫の場合では、主人がご飯をうまくし衣食住を提供しお金を払うのは農夫を愛しているからではない。土をより深く耕し、草をより丁寧にとってくれると期待するからである。同時に農夫が一生懸命に働くのも主人を愛しているからではない。よりおいしいごはんやより多くの賃金をもらうことを期待しているためである。お互いが自己の利益のためにしようと考えることでお互い上手に仲良く関係を続けることができるのである。
[ビジネス]
経営者として人を雇うときはお金を払っているのだからと恩着せがましく考えず、自分の収益を得るために人を雇っていることを認識しお互いの利益関係をうまく回すことが一生懸命に働いてもらうことにつながると知ること。
従業員があなたに従うのは恩や忠義ではなく、生活に必要なお金であり、昇進などの機会である。組織の上司として部下にかかわるときは、組織上の上役であることだけでは人は指示に従う積極的な動機はなく、部下の求める利益が何かを知ることが重要。

第四類

利益のある所に人は集まり、名誉を得ることができるから戦士は死を惜しまずたたかうのである。よってルールにそっていない褒美を与えると真面目に働くことを怠けるようになる。
[例]
趙の王登が王様に二人の男を紹介し、大変賢く・学問も博識であるためぜひ召し抱えるようにお願いした。そこで王様は二人に重職を与えようとすると家老が「会ったこともなく功があるわけではないものを重職につけるなど他のものから不平がでるでしょう」と諫めました。しかし王様は聞く耳を持たなかった結果、二人の男の故郷では真面目に畑仕事することなく、家を捨て都市で勉学に励もうとするものが半分にもなってしまった。
[ビジネス]
仕事の中身以外である人の好き嫌いや噂話で従業員の昇進や昇給を決めていると、従業員は真面目に仕事で成果を出し評価されようとする努力をすることがなくなる。上司のご機嫌を取り忖度し、仲間で固まりいい噂を上司の耳にいれることでお互いに助け合い、自分にとって都合の悪い人の悪口をいうのである。結果上司は耳をふさがれている状態になる。

第五類

詩経に君主が真に自分でやって見せねば臣民は信じないという意味の句がある。しかしそもそも君主が人の職分を明確に定めず、誠実に働くように動かさないのが誤りである。ただ臣民の職分を君主が自分でやってみて治めようとしてもいつまでも心安らかになることはできない。
[例]
魏の昭王があるとき役人の仕事を実際にやってみたいと思い大臣に相談した。大臣は[もし実際にやってみたいのならばまずは法律の条文を覚えることからはじめる必要があります]と答えました。そこで昭王は法律を習い始めますが10枚と読まないうちに横になって眠ってしまいとても読み通すことができませんでした。すなわち昭王は政治の大権を担っているにもかかわらず、臣民が担うべき役割をしようとすることは道理にあわないということです。
[ビジネス]
日本の会社世界の中では上司は部下より多く、より長く働き、そして当然すべての情報・知識を知っているのが当然であるという風潮があります。また部下に仕事をやらせるために上司が部下と一緒に部下の仕事を率先してやるという姿勢をとることもあるかと思います。
しかしそれは職務分担ができておらず、お互いが上手に仕事をする循環を作れていないということです。結果として社長・上司はいつまでたっても疲弊し続けることになるのです。社長・上司の役割はそれぞれに存在し、部下の仕事を率先してやってみせることは一見いい行いのように感じますが、部下の成長を阻害しやる気をそぎ真面目に仕事しなくなってしまうのです。

第六類

小さな約束事が守られるから、大きな約束事も守られるのである。故に明君は信義を小さなことでも大事にし守るのである。賞罰が守られないと禁止事項や命令は守られることがない。
[例]
ある男の妻が市に子供をつれて出かけた。しかし子供が泣いたので「先に家に帰りなさい、そうしたら豚料理をたべさせてやろう」といい子供を帰しました。その後家に帰ると男が豚を調理しようとしていたので妻は「ただ子供をだましただけですよ」ととめようとした。男は諫めて「子供は純粋でうそをついてはならない相手である。もし豚を食べさせなかったら親は子供にうそをつくことを教えることになり、子が親を信じなければ教え育てることはできない」といい豚を調理しました。
[ビジネス]
褒美であれ罰則であれ躊躇することなく事前に定めたルールに沿って実施するのが大事である。成果をあげたのにボーナス額を出し渋る、昇進の機会を遅らせるなど褒美が守られないと従業員のモチベーションは著しく低下する。また罰則はルールをまげて軽い罰則などにすると、恩義を感じて一生懸命働くかと思いきや、まったく逆でルールは曲げてもいい、悪いことをしてもそこまでひどい罰則はないということを学習し真面目に働かなくなる。振り上げた刀は最後まで振り切るのが結果として組織にとって良い結果をもたらす。


この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?