見出し画像

遠距離の仕事チャットは「待つ」が大事

アフリカ・ケニアでモノづくりを始めて6年目。
一年のほとんどを日本で過ごす中、現場から1万キロ離れていてもモノづくりを続けられているのはチャットのおかげです。

日々の業務連絡や経理報告などをチャットでもらえるのは本当に便利で、インターネットがある時代に起業して良かった!とつくづく思う反面、顔が見えないチャットでの連絡は何かとトラブルも付き物。

製品の品質管理という繊細な話し合いに加え、文化の違い、そして英語のちょっとしたニュアンスの違い… 文字で浮かび上がる相手がどんどん苦手になってしまって、スマホの通知音を聞くだけで心拍数が上がってしまうほどノイローゼ気味になった時期もあります。

本当は、現場と密接な関係で仕事ができることが魅力でこの仕事を始めたはずなのに、現場が苦手になってしまったら本末転倒!ノイローゼの脱出と現場との円滑なコミュニケーションのために、様々な対策を取ってきましたが、中でも大切だと感じているのが「待つ」という姿勢です。

今回は、私がやらかしてしまった過去の失敗エピソードを紹介しながら私が学んだ遠距離チャットの使い方を書きます。

疑心暗鬼が生んだ失敗

画像1

2016年頃の話。当時はまだ生産工程を手探りで進めているところが多く、ケースバイケースの案件や「このルールはどうするのか」といった相談が頻繁にチャットで送られてきていました。

責任をもって導かなければ!と躍起になっていたのでしょう。ケニア工房の就業時間である8:30~17:00(日本時間の14:30~23:00)はスマホにかじりついて、通知音が鳴ったら即対応するように心掛けていました。

その日もケニアから注文の1.5倍の量のバスケットが届いてしまったと連絡が来て、カラフルなバスケットが並べられたテーブルの写真が送られてきました。納品は多ければ良いということでもなく、急なことに頭を抱えながら写真を見ていると、注文した覚えのないデザインがチラホラ。

「そのピンクのボーダー柄、今回注文してないはずだけど何?」
「誰の指示でそれが追加されたの?」
「他の注文が混ざってしまっているのでは?」
と矢継ぎ早に質問する私に、当時のちょっと短気な男性スタッフが応戦。

「ひかる以外誰が指示を出すっていうんだ?!」
「作り手を疑ってるのか?一生懸命作ったんだぞ!」
「多くできたんだ、いいじゃないか」

私が送った注文表には記載がないデザイン。
それでも、私が指示を出したというスタッフ。

堂々巡りがしばらく続いた後に、同じチャットに入っていた女性スタッフが静かに参入:
「あの… ひかる、2週間前のチャットまで遡ってみて…」

言われたとおり見てみると、そこには私からの追加注文の指示が。。。

元々の注文表を送った後、現場から染料の都合で一部変更の要請があって私の指示で変えていたのです。

何のためのチャットバトルだったのか… 自分が情けなくて泣きました。

写真で違和感を見つけたときに、ひと呼吸置いて考えていれば。覚えていなかったとしても、「これ注文表に掲載していないんだけどどうして変更されたんだっけ?」と聞いて少し待っていれば。焦らず相手を信頼していれば…

間を持たせることで防げたトラブルを自ら招いたことに後悔した一幕でした。

「やさしすぎる上司」もまた失敗する

画像2

時が立ち2018年。この頃には、生産のマニュアルもかなり作り込まれてきたので、日々の業務で質問される回数も減りました。スタッフの顔ぶれも少し変わり、私は主に工房マネージャーさんとチャットするようになりました。

現場のマネージャーさんをサポートしつつ、日本でのマーケティングにももっと集中しよう!と思いながらも、やはりケニアから質問がくれば、相手が不安に思わないように、と相変わらず即答を心がけていました。

ところが… ある時期から、チャットの通知音(ピコン) だけではなく、ワン切りの着信音(ビー!!)が鳴るようになります。それも、頻繁に。

ネットが不安定なことが多いため、普段あまり電話はしていない分、ビー!!っと着信が入るとかなり緊張します。でも要件を見てみると「届いたかごの糸が少し太いとスタッフが言っている」「○○さんが今日は遅刻すると連絡してきた」とおよそ緊急とは思えない連絡ばかり。

つまり、私が少し気付くのが遅れるだけで「ビー!!ビー!!ひかる、見てる?!」の催促でワン切りされていたのです。

これはさすがに、と思ってルールを決めても止まらない通知。万が一の緊急事態を考えると、スマホを消すことも、ブロックすることもできず、どうしてこうなったのだろうと途方に暮れている頃に極めつけの事件が起こります。

「○○さんが結婚式を挙げるためしばらく休みを取るので、その間業務が回るように指示ください。ビー!!ビー!!」

「え?私が?なんでお休みする本人やチームで考えないの?」と仰天している私に「休みの間のことを考えるのはひかるの仕事だ」との返信。

あー・・・そうか、私は答えを出すマシンとなってしまったのだ・・・とこの時やっと悟りました。良かれと思ってスピード感を持って返していたことが、現場のスタッフにとってはいつでも何でも考え、答えくれるAIと化してしまっていたのです。

チャットが来ても、まずは「待つ」!

ここでちょこっと告白すると、実は私は前職でチャット上でのカスタマーサービスの仕事をしていました。スピーディな解決を求めるお客様が多い業界で、いかに早く質問の意図をくみ取り、答えられるか、が勝負でした。この前職での経験が、ケニアとの会話では少し弊害になっていたのかもしれません。

ましてや、翌日会って直接話す、ということが簡単にできない距離。相手の声色や微妙な表情の変化、視線、が見えないテキストでの会話。
(いずれはビデオチャットを取り入れたいのですが、諸事情でまだ実現できていません。)

誤解が生じやすいテキストでの会話で、いかに相手を尊重しつつ、良い方向に会話を持っていけるか…

色々考えた末に私が今意識しているのが、最初に書いた「待つ」という姿勢です。

画像3

どんなチャットが来ても、よほどの緊急事態でない限り、一度返信を待つ
どう答えるか考えながら、コーヒーを一杯飲んで深呼吸する余裕を作る。
このちょっとしたを作ることでたくさんのメリットがあります。

1.状況を冷静に判断する時間がとれる
早とちりや勘違いを防げて、過去の記録を見たり、情報が不十分な場合は判断するために次にどういう質問をすれば良いか見極められるようになります

2.文章を深読み過ぎないで済む
私の場合、どテキストをパッと見た時の方がじっくり読み返すよりも深読みする傾向があります。「ひかるも」→「も、って何?!」といった具合に。時間を置いてから見ると、たまたまそういう書き方になったのだろうと冷静に見ることができるので、深読みも防げます。
※因みに、ケニアのスタッフは学校で英語は勉強していますが、第一言語ではないことに加え、ケニア英語の独特な言い回しもあるので、余計に直接的な表現になることもあります

3.現場も少し考える時間ができる
現場でも、「とりあえずひかるに聞いてみよう!」とパッとチャットを送ってしまうことがあります。でも、数分経ってから「わざわざ聞くことじゃなかったかも…」と気付くことも。実際に時間を置くようになってから、私から返信がないことでチーム内で再度話し合うことも増えました。

間を置くことで、トラブルが減るだけでなく、現場スタッフにとって学びの機会が増えるのだと知れたのは大きな発見でした。同時に、今まで私、どれだけ過保護に接していたのだろう・・・という反省も。

画像4

2020年8月現在。
実は今、普段のマネージャーさんは産休に入り、代理マネージャーのスタッフとチャットのやり取りをしています。代理と言っても、マネージャーらしい視点で考えなければいけない立場。慣れないながらも、諸々の報告書などを丁寧に送ってきてくれて、私の色々な宿題にも頑張って応えています。

それでも時折、ちょっと投げやりな「ひかる、どうしたらいいのー?!」チャットはやはり届きます。

反射的に返信してしまうことも、まだまだありますが…(←未熟!)
まずはスマホを閉じて、深呼吸をして。待つ、をしてから返信することをこれからも心掛けたいです。

余談

最近、Forestというアプリを入れました。例えば、30分と設定してスマホを閉じると、その間にアプリ内で木が育ちます。設定時間内にスマホを見てしまうと、木の成長が止まるシステム。

元々はスマホ依存解決用のアプリなのですが、チャットへの衝動的な返信を防ぐのに一躍買ってくれています♪

このまま、森を育てられるのか・・・

―――
かご専門店ORIKAGO 代表 岡本ひかる
___
ORIKAGOのHP: https://www.orikago.com
運営会社アンバーアワーのHP: https://www.amberhour.com

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?