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Viewpoints | ビューポインツ とは!?(ビューポインツシリーズ①)

Viewpoints | ビューポインツ

皆さんは聞いたことありますか?

「シックス・ビューポインツなら・・・?」(*1)
「全く聞いたことない!」

私がワークショップをしているとき、参加者の方に聞いてみると
こういったお返事をよく聞きます。

そうなんです。日本ではほとんど聞かない演技術の一つです。

でも!!この演技術を知ったら、

俳優であるあなた、
演出家であるあなた、
演技コーチであるあなた!!

絶対興味が湧くはずです!
そして自らの仕事に応用してみたくなるはずです。

自由・平等・クリエイティブ!
これがビューポインツの魅力です。
一緒にビューポインツの魅力を探っていきましょ~!


ざっくりした定義

ビューポインツとは、アメリカで生まれた演技術です。
主にアン・ボガート(Anne Bogart)と、ティナ・ランドー(Tina Landau)という、二人の女性の演劇人(演出家・コリオグラファー)によって近年作られました。(*2)

何故ビューポインツは作られたのか


二人が(主にアン・ボガート)がこの演技術を作ったのは、俳優やパフォーマーのこんなことに危機感があったからです。
(もしかしたら今の日本の俳優の状況と重なる部分もあるかも?)

・俳優が演出家に何を求められるかを主軸に演技をしていること。
このことが、演出家を上位とする俳優と演出家間の上下関係を強化してしまい、俳優同士、演出家と俳優間のコラボレーションを止めてしまいます。
例えば、俳優が演技をするのではなく、演出家や観客に、求められていることを自分がうまくできていると「アピール」してしまうことに見られます。
⇒その結果、演技がさび付くのと同時に、作品の可能性を探っていけなくなり、作品の発展を妨げてしまう。

・スタニスラフスキーの演技システムが、誤って使われることで俳優に与えてしまう悪影響。
例えば、悪影響として、演じるキャラクターが「何をしたいか」(日本語で【目的】と呼ばれるもの)ばかりを求めてしまうことがあります。
また、アメリカ版スタニスラフスキーの技術、「感情の記憶」の影響で、自分が感じていれば観客も同様に感じる」という考え方が俳優の間で広がり、「感情的」であることを作り上げようとする俳優が増えてしまった事。また、同時に「感じなければ、動けない」と考えてしまう俳優が増えてしまった事もあります。
⇒これらすべて、俳優が自由に演技する権利や、様々な演技の可能性を奪ってしまう。

・俳優の演技術の基礎を構築するためのトレーニング術に欠けていること
技術は、俳優がなそうとしている作品を創るために必要不可欠です。技術があることで、俳優は自らのクリエイティビティを反映させ作品を創ることができる。でも、当時アメリカでは、俳優のための基礎的な演技トレーニング術が欠けていた。
⇒これでは、俳優が作ろうとしている作品は実現できず、さらに、俳優は自分の演技に満足できない。。

これらに対する危機感のため、二人はビューポインツを作りました。

ビューポインツの特徴

そんな背景から作られたビューポインツは
俳優にこんなことを実現させてくれます。

・自由!

ビューポインツは、俳優を「○○しなくてはいけない」「○○でなくてはいけない」から解放してくれます。
この「ねばならない」という気持ち、俳優の皆さんは必ず経験したことがあるものではないでしょうか。
自分は「面白いことをしなくてはいけない」「感動させることをしなくてはいけない」「奇想天外なことをしなくてはいけない」・・・
これらすべて、俳優の、あなたの無限の可能性を奪ってしまっています。

ビューポインツは、そのプレッシャーを取り去り、その瞬間、自らの身体から、他の俳優の身体から、または周囲の環境から「勝手に何かが起こること」を信じさせてくれます。

・クリエイティブ!
ビューポインツはすべての可能性を歓迎します。
間違ったことや正しいことは存在しません。あるのは、あなたが何を選択するか、しないか、それだけです。無限の可能性の中から、他でもないあなたやあなたの仲間の俳優たちが選択していく。それだけです。

・平等!
ビューポインツはここまで話したような特徴によって、俳優間、または俳優と演出家間のヒエラルキーを和らげることができます。俳優は、誰かに言われてその演技をするのではなく、自らが選択し、作品の可能性を探り、発展させていきます。ここでは、俳優は誰かの言うことを聞く人ではなく、自ら提案する人となります。

具体的な技術内容


じゃあこんなビューポインツ、具体的にどんな技術かというと・・・

パフォーマンスの要素を細分化した8つの「見方(ビューポインツの日本語訳)」を、実際に身体を通して習得していきます。そしてそれぞれを習得した後、最終的にはそれぞれ分けて意識せず、様々な「見方」を自由に直感的に扱えるパフォーマンスができるようになる技術です。

その見方は2つに分けることができます。
一つはTime | タイム (時間)、もう一つはSpace | スペース (空間)です。

・Time | タイム は、その名の通り時間に関わることです。
そしてこれらに含まれる「見方」は、いずれも時間に関する4つです。
Tempo | テンポ (スピード)
Duration | デュレーション (一つの動きに要する時間の長さ)、
Kinesthetic Response | キネステティック レスポンス (自分の身体の外で起きることに対する筋肉の反応)
Repetition | レペティション (演技スペースで起こることの繰り返し動き)

・Space | スペース は、演技スペースに関わることです。
含まれる「見方」は
Shape | シェイプ (ムーブメントの形)
Gesture | ジェスチャー 
Architecture | アーキテクチャー (演技スペース上の物理的な環境)
Spatial Relationship | スぺ―シャル リレーションシップ (何かと何かの距離の関係)
Topography | トポグラフィー (ムーブメントによって作られる想像上のスペースの形)

俳優は、これらの見方を、実際にエクササイズを通して経験し習得していきます。

結果、自由で、クリエイティブな演技を、平等な関係のもと、行えるようになります!

この見方を使って、俳優がウォーミングアップしているのビデオがYoutubeにありました!ぜひ見てみてください!みんな即興で行っていることが重要なポイントです。


おわりに

いかがでしたか?これまでビューポインツをご存じなかった方が
面白そう!
と思ってくださったらとっても嬉しいです!

この技術、私が演技トレーナーの訓練と研究をしていたロンドンでは人気のある技術だったのですが、日本ではまだあまり知られていないことが歯がゆいのです。。だって、多くの俳優の方の支えになるだろう技術ですから!

私が運営するワークショップで、今度ビューポインツをじっくり体験できるクラスをします!気になる方はぜひこちらのフェイスブックページを見てみてくださいね!相談や質問だけでも大歓迎です。

それでは~!

*1 シックス・ビューポインツは、ビューポインツの基となった、マリー・オーバリー (Mary Overlie) が作った技術です。ビューポインツと共通している箇所もありますが、異なる箇所も多くあります。
*2 マリー・オーバリー (Mary Overlie)が元の技術、「シックス・ビューポインツ」を作りました。それを基に、アン・ボガート(Anne Bogart)と、ティナ・ランドー(Tina Landau)が、彼女たちの視点に基づいて発展させたのがビューポインツです。

参考文献

Bogart, A. (2002) Conversations with Anne. New York: Theatre Communications Group, pp.471-487.
Bogart, A and Landau, T. (2005) The viewpoints book: a practical guide to viewpoints and composition. New York: Theatre Communication Group.
Dennis, R. (2013) 'Viewpoints, creativity and embodied learning: developing perceptual and kinaesthetic skills in non-dancers studying undergraduate university drama', Theatre, Dance and Performance Training, Volume 4(3), pp. 336–352.
Dixon, M, B and Smith, J, A (eds). (1995) Anne Bogart: Viewpoints. Lyme: Smith and Kraus.
Hodge, A. (eds). (2010) Actor Training. Oxon: Routledge.
 

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