28歳、宇宙への挑戦。
11月4日で28歳になりました。高校を卒業して10年、もう20代も終わりが見えてきました。最近は、高校生ぐらいのときに見ていた芸能人やスポーツ選手の方々が40~50代になって、若手で勢いがある方が同世代か、もはや下の世代になっていることに衝撃を受けるようになりました。。。
自分の周りを見ても結婚したり、海外に行っていたり、ライフステージが変わる人が増えている印象で、自分は今でも高校生のときの目標を追いかけているので、「これで良かったんだっけ?」とふと思ったりもします。それでも、目標に向かって動いているときが一番充実しているなと思うので、その環境にいられることがありがたいなと思いますし、自分のやるべきことをやっていればそれでいいなと考えています。
さて、前置きが長くなりましたが、今年の5月に「株式会社ALTILAN」(アルティランと読みます)を創業しました。ALTILANは、「人類が太陽系内を自在に移動し、星を単位とする生き方が当たり前になっている世界」をビジョンに掲げ、誰もが自由に宇宙を航行できる宇宙船の開発を目指しています。自分の夢をそのまま投影した会社で、ここで人生を賭けたチャレンジをスタートすることになりました。
誕生日という節目に、なぜ会社を設立するに至ったか、どんな経緯があったのか、そして何をしようとしているのか、書いていきたいと思います。
改めて、自己紹介。
ALTILANという会社の説明をする前に、永利という人間がなぜ宇宙に取り組もうとしているのか、何が背景にあるのか、改めてご説明したいと思います(もうご存知いただいている方は次のチャプターまで飛ばしてくださいませ)。
小学生の頃から宇宙は身近なテーマで、両親に連れていってもらっていた日本科学未来館(今より宇宙の展示が多かった)や、国立科学博物館、そして今は無き「JAXAi」などに通い詰め、自分にとって一番ワクワクするのが宇宙でした。よく聞かれるのですが、「宇宙に興味を持ったきっかけ」は明確には覚えておらず、気づいたら宇宙が一番好き、という人間になっていました。
そのなかでも、自分は土星の衛星「タイタン」という星に魅力を感じています。前のnoteでも既に書きましたが、中学のときに初めてタイタンを見て、地球そっくりの星があると知ってから、なぜこんな星があるのか?どうなっているのか?という好奇心がずっと自分の中にありました。
その後、高校生のときに参加した「サイエンスキャンプ」が1つの転機になりました。学技術振興機構主催のプログラム(宿泊型研修)で、全国各地の研究機関や施設に高校生が集まり、さまざまな先端技術・研究に触れることができる機会として提供されていました(今は終了)。
そのなかで、自分はJAXA筑波宇宙センターで開催されたプログラムに参加し、初めて宇宙好きの人たちに出会いました。ここで、宇宙兄弟の名シーン「ここにいたんだ 誘ったら 喜んでついて来てくれそうな 連中が・・・」という感覚をまさに味わったのを覚えています。
そこから特に学外の活動で宇宙に関することに多く取り組むようになり、学部時代には学生団体の代表やJAXAの派遣学生としてのIAC(国際宇宙会議)への参加など経験させていただきました。
より詳しいことは過去のnoteでも何度か書いていますので、そちらもよろしければご覧くださいませ。
これらの活動を通して、自分は宇宙という領域に、何かのスペシャリストというより、ジェネラリスト(プロデューサー)のような立場で関わりたいと思うようになり、大学院、そして今のキャリアを選択することになりました。
大学院では、システムズエンジニアリングという学問を先行しました。こちらも年始のnoteで書きましたが、有名なアポロ計画を成功裏に導くために作られた、複数の専門分野を横断的に扱い、それらを束ねて複雑かつ大規模なシステムを成立させることを目的する学問なのですが、これが今の自分の活動におけるすべての土台になっています。
特にシステム思考の「全体俯瞰と構成要素の繋がりを意識して、多視点から構造化して可視化する」という考え方は、仕事をするうえで、結局ここに集約されるなと感じています。大学院では、システム×デザイン思考という、What to make(何をするのか?)とHow to make(どう実現するのか?)の両方をカバーし、イノベーションを生み出すための方法論を学びました。
今もSPACETIDEなどを通じて続けている宇宙に関する活動と、大学院で学んだシステムズエンジニアリング、システム×デザイン思考を持って、宇宙ビジネスに挑戦しようとしているのが、永利という人間です。
ALTILANを設立するに至った背景
自分のバックグラウンド、専門性をもって、宇宙ビジネスに挑戦することを決意したわけですが、なぜ会社を設立することに至ったのか、その経緯をご説明したいと思います。
大きくは5つのトピックがあります。
就職活動で迎えた転機
浜松への移住
浜松×宇宙の活動
同期とのやり取り
会社設立の承認
1. 就職活動で迎えた転機
自分は宇宙に携わることがしたい、という思いは中学・高校生ぐらいから一貫して持っていたので、いざ仕事に就くというタイミングになったときも、当然のことながら宇宙業界を志望していました。いろんな方に言っていますが、それこそJAXAに入りたい、というのが一番に考えていたことでした。
しかし、実際は思うようには就職活動は進まず、JAXAも含めて、当初希望していたところからは1つも内定をいただくことができませんでした。システムズエンジニアリングという学問の特殊性(学問自体が新しく、日本ではまだまだ学んでいる人も少ない)をどう武器に変えていくか、という部分で自分の伝え方が足りなかったなと思っています。
とにもかくにも、就職活動を始める前までに描いてきたプランは崩れてしまったので、自分の持っているもの、経験してきたこと、想いなどをすべて洗い出したうえで、どうしたら宇宙に関わることができるのか、その中でもタイタンを目指すという活動ができるのか、人生でも一番と言ってもいいぐらいに考えました。
これはそのときに、実家に貼り付けたホワイトボードに書いていた内容です。このときも今も考えていることは大きく変わっていないなと思います。結局のところ、やりたいことがあって、それが今の世界・社会でできる環境がないなら、自分で実現できるようにならないといけないと気づきました。そこで、今働かせていただいているRelicに入社することを決めたのです。
当時のことはnoteでだいぶ長めに、しっかりと言葉に残してあります。
2. 浜松への移住
将来は宇宙の領域で、自分のやりたい「他の星(というかタイタン)への探査」を実現できる力を身に着けようと就職して2年ほど働いていたのですが、そろそろ宇宙に関する仕事がしたいと思うようになってきました。少し仕事にも慣れてきて、自分の目標のことを改めて考えるようになっていたときでしたが、そんなタイミングで浜松に移住する話を提案されました。
東京で生まれ育ち、親戚も関東圏にいた自分としては、地方に住むというイメージは正直全くなかったのですが、宇宙ビジネスの観点で見たときの浜松という地域のポテンシャルに魅力を感じ、ここで挑戦する価値・意義は大きいと思ったので移住することを決めました。
このあたりの話も、前にnoteで書いておりますので、よろしければご覧くださいませ。
3. 浜松×宇宙の活動
2023年1月から本格的に浜松での活動を開始し、しばらくは地域への理解と、生活に慣れることに時間を費やしました。少し落ち着いてきた6月頃(思ったより時間かかりましたが)、自分が浜松で興したい宇宙ビジネスの構想をまとめ、商工会議所に持っていきました。これが初めて宇宙ビジネスをやる、という決意を外に示した瞬間でした。いきなり何かに繋がることはさすがにありませんでしたが、「宇宙というドメインを切って話を持ってきた企業さんは初めて」ということで、思っていた以上にポジティブな話になったのを覚えています。
これを受けて、社長にも事業の構想と会社を創りたいと思っているという話を持っていきました。しかし、そのときはこれでは難しい、というフィードバックをされました。当時自分が考えていたのは宇宙領域におけるビジネスマッチングで、それではポテンシャルがあまりない、成長してもそこまで大きくならないのでは、ということでした。たしかにその通りで、ただマッチングするだけでなく、もっと全体的な事業の創出支援まで広げるべき、と考えて事業案を練り直しました。
ちょうどその頃、経済産業省 中部経済産業局主催の「Meet up Chubu」への登壇者の募集があったので、作り直した事業案をもって一度外に出してみようと考え、発表の機会をいただきました。初めて自分の構想を外に向けて打ち出したのですが、この発表を機にいろんなものが加速度的に動き出していったように思います。
同様の構想を描いている方にも繋がることができ、自分の方向性が間違っていないことも裏付けられましたし、意外と受け入れられるものなんだと気づくことができました。それと同時に大きかったのが、誰かが宇宙ビジネスを始めたい、立ち上げたいと構想されたときにサポートします、では足りないということでした。地域の産業構造に起因する部分も含め、誰かが始めるのを待っていてもなかなか前に進まないということが見えてきたのです。
自分が旗を立てて、宇宙ビジネスの創出をリードしていく必要がある。その活動を、宇宙ビジネス参入の機会としてご提供する。単純にご支援するだけではなく、どんな宇宙ビジネスを創りたいか、そのビジョンを打ち出していくべきだ、ということに気づいて、構想や取り組みのイメージがアップデートされていきました。
4. 同期とのやり取り
事業内容をブラッシュアップし、もう一度会社を立ち上げる提案を社長に持っていこうと練っていたタイミングで、共同創業することになる澤にも声をかけました。
澤とはRelicの新卒同期で、宇宙が好き、将来的には宇宙に関する事業を作っていきたいという共通点がありました。最初に存在を知ったのは自分の最終面接のタイミングで、社長から「内定を出した人に同じことを言っている人がいる」という話をされたときでした。自分たちは新卒2期生で、1期生の採用が6人だったこともあり、正直キャラ被りしているのなら自分は採用されないかな、と思ったのを覚えています。
結果的には内定をいただくことができ、入社に至るのですが、そこで改めて宇宙が好きということで話をしたのが初対面でした。最初は宇宙ビジネスに関心を持っている人が自分以外にもいる(しかも同期11人の中で)ということに驚き、宇宙の話ができるのも嬉しかったのですが、同じ宇宙好きとはいえ興味範囲が少し違ったのもあって、何か一緒にやるとは当時は全く想像していませんでした。
それでも、宇宙に興味があって、しかも同期として一緒の会社で働いているということはすごい確率の出会いであり、常に頭にありました。なので、宇宙ビジネスに関する事業、もとい会社を立ち上げるという話も、とりあえず一回は話してみようと思って声をかけました。
ただ、月や火星よりも先を目指す探査という、宇宙ビジネスの中でもまだまだ”事業”というより”研究・探索”の色が強い領域へのチャレンジであり、まだ企画をし始めたぐらいの段階で何の成果も保証もなかったので、正直なところ「何を言ってるの?」ぐらいに言われるかと思っていました。
しかし、それを「率直におもしろい」と言ってくれました。自分からするとまさかのリアクションでしたし、嬉しさと驚きが混在しているような感情になったことを覚えていますが、自分のビジョンに共感してくれる人がいる、というのはとても大きな自信になりました。
ここでさらにブーストがかかり、「自分たち」で会社をつくって挑戦しようという動きに変わっていきました。何がどう繋がっていくか、本当に分からないものですが、こんな初期に味方が増えるなんて思っていなかったので、率直に嬉しかった出来事でした。
5. 会社設立の承認
外への発信による事業内容のアップデート、同期との一緒に挑戦しようという会話を経て、改めて社長に会社をつくりたい、という思いをぶつけました。
このとき、前回の相談から早くも半年が経っていましたが、大きく内容も状況も変わっていたなかで、前とは全く違うリアクションをいただくことができました。思えば、社会人になってから、自分でこうしたい、こういうことをやりたいと明確に打ち出して相談したのは初めてだったと思います。
結果的に、宇宙ビジネスに挑戦する機会をいただけることになりました。入社当時、まさかRelicにいながらにして宇宙ビジネスに挑戦することになろうとは全く予想もしていなかったですが、自分たちの想いや考えを汲み取り、挑戦する機会をいただけるのは逆にRelicだったからとも思っています。
そして、約4か月ほどの準備期間を経て、株式会社ALTILANの創業に至りました。こうして、人生最大の挑戦が始まりました。就職活動をしていた24歳の頃は、40歳ぐらいで宇宙ビジネスに挑戦できればと考えていたので、27歳で立ち上げるなんて驚きでしかありません。それでも、走り始めた今は、このタイミングで挑戦を始められたのは本当に良かったなと思っています。
ALTILANで目指していること
さて、そんな経緯で立ち上げたALTILANですが、何を目指しているのか、どんなことをやろうとしているのか、改めてご紹介させていただきます。冒頭にも書きましたが、ALTILANのビジョンは
を実現することです。
ALTILANは、人が宇宙に飛び出し、当たり前のように宇宙を駆け回っている世界・時代を本気で創りたいと考えています。それこそ「スター・ウォーズ」や、(個人的に好きな作品である)「彼方のアストラ」のような世界観を現実のものにしたいと思っています。あんな世界を見せられたら、自分も行きたいと思ってしまいます。自分が生きているうちに、宇宙に行きたい。それも宇宙ステーションや月・火星だけではなく、いろんな星に行ってみたい。そういった思いで動いている会社であり、メンバーであるのがALTILANです。
そして、その世界の実現のために、ALTILANでは宇宙船を開発することを目指しています。笑ってしまうような話かもしれませんが、本当につくりたいと考えています。まだ要件定義の途中ではありますが、ALTILANがつくりたいのは、SpaceXのStarshipのような大型の宇宙船ではなく、数人単位で動かせる、ある種の「自家用車」のような宇宙船です。
小回りのきく、小さな宇宙船で、いろんな星を飛び回れたらどんなに楽しいか。きっと新しい発見や驚きに満ち溢れているはずですし、想像だにしなかった新たな世界・価値観と出会えると思っています。
また、いろんな星を飛び回れるようになるということは、人類の活動領域を拡大するということであり、人類の新しい可能性を見出すことにも繋がると考えています。この先、人が宇宙に進出する時代は必ずやってくると思います。その一翼をALTILANが担えればと、そう考えているのです。
もちろん、いきなり宇宙船を作ろうとしても難しいことは分かっています(技術的にも、事業的にも)。だから、要素技術を1つずつ開発・確保しながら、徐々にゴールに近づけられればと考えています。そのために、まずは技術実証・獲得に繋がる宇宙機の開発に挑戦しようと考えています。
そして、この挑戦を浜松を起点として、いろいろな製造業の方々とのコラボレーションによって実現したいと構想しています。今後も右肩上がりに成長を続けると見込まれる宇宙機器産業ですが、その参入には大きな障壁があります。どんな宇宙ビジネスをつくるべきなのか、どんな技術が求められているのか、その技術は宇宙でも使える信頼性があるのか、、、いくつものハードルがあると思っています。
このハードルを超えるのに必要なことは、宇宙ビジネスのコンセプトと要件定義、そして、トライアンドエラーの機会だと考えています。そして、宇宙機器領域のビジネスに入っていく第一歩として、ALTILANの挑戦をお使いいただきたいのです。
我々の持つ宇宙ビジネスに対する理解と、事業開発の経験、システムズエンジニアリングの知見があれば、宇宙領域における事業構想・事業企画、プロジェクトマネジメントが可能だと考えています。
ぜひ、宇宙ビジネスへの挑戦をご一緒いただきたい、ご一緒させていただきたい、そう思っています。
最後に
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。まだまだ始めたばかりの挑戦ですが、本気で取り組んでおりますので、何かご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお声がけいただけますと大変幸いです。
また、12月にはイベントを2つ予定しております。まだリリースを出すまでに少し時間がかかるので改めてお知らせさせていただきますが、1つ先行して公開いたします。
登壇者の方々も決まってきておりまして、浜松はもちろん、全国的に見てもなかなかないイベントになるのでは、と自負しております。
また、もう1つのイベントについても11月中旬にはリリース予定ですが、とてもインパクトのある内容になっています。どうぞご期待くださいませ。
引き続き、noteを含めて発信していきますので、これからもよろしくお願いいたします。
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