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PDCAを回すことの大切さを祖父に教わった。

先週末は帰省で千葉県の実家に行った。
コロナの折、行くほうも来られるほうも悩みに悩んだが、80歳を目前にした何事にも慎重な両親が、短時間でもいいから来たらどうか、と言うので、顔を出すことにした。skypeでのテレビ電話で顔は見ているものの、直接会うのはお正月以来となるヒカルに、よほど会いたいらしい。

東京のど真ん中で普段過ごしているヒカルにとって、おばあちゃんの家はあこがれの場所だ。広い庭には、祖母が丹精した木々や植物の緑。そこにびしょびしょになりながらホースで水撒きする楽しみ。障子の柔らかな明かりに反射して光る、ゆらゆらと金魚の泳ぐ水槽。近くの公園に行けば、蝉取りがいやというほどでき(まさに入食い状態)、ボール遊びが禁止されている都内の公園と違って、草の生えた地面でサッカーも野球もできる(お相手がこの母で申し訳ない・・・)。大学まで体育会ラグビー部で鳴らし、会社の運動会のリレーで8人抜きをしたこともある祖父は、心臓の手術をしてから激しい運動はできないが、キャッチボールやサッカーを通じて、ヒカルに的確なアドバイスをくれる。

これまでになく、雨続きの帰省。外に行けないヒカルを捉えたのは、パターだった。リビングルームから続く和室には、祖父の練習用にゴルフのパターのセットが置かれている。プラスティック製のグリーンを模したゆるやかな坂道の先にホールがあり、うまくボールが入れば穴から下に抜けてこちらに戻ってくる仕組みになっている。普段祖父が練習しているものなので、当然本物のゴルフボールとパターである。

ヒカルは何打か打っては、「入った!オレ天才!」とか「あれ、うまくいかないな~」などと言っていたが、そのうち六打連続でホールに入れることを目標にし始めた。ところが、そう簡単には入らない。次第に不貞腐れ気味になるヒカル。

そんな様子を口を出さずにじっと見ていた祖父が、声を掛けた。
「打つ前に、素振り、してるか?」
ボールがまっすぐ飛ばない理由の一つ目は、立った時の両足が、ホールに直角かつ水平に揃っていないから。どちらかの足が前に出ていたりして曲がっていると、球も横に流れてしまう。二つ目に、打つ前の「引く」動作がまっすぐできていないから。まっすぐ引くことが出来たら、力を入れずに振り子のように球に当てればいい。ヒカルは言われた通り、足をチェックし、素振りでまっすぐ後ろに引けているかを確認してからボールを打った。すると、「入った!!!」

「どうして自分の球がまっすぐ飛ばないのか、その原因を考えずにいくら打ってもダメやな」
「な、こうしたら、全部入るやろ」
次々ボールを打って見せ、そのすべてがホールに吸い込まれていく。まさに百発百中。

スポーツ万能な人、としか思っていなかった祖父は、実はこつこつPDCAを回す人だった。自分の父親ながら、50歳になるまでそのことに気づかなかった私である。
ヒカルはひねくれた性格で人の言うことを聞かない質だが、祖父の言葉には素直に耳を傾けるのが不思議。おじいちゃん、もっともっと長生きして、ぜひヒカルに、いろんなことを教えてやってください。




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