春巻き
梅の季節が始まると、何も手がつかなくなる。
梅は完熟すると自分で落ちる。
完熟=タネが成熟→子孫を残す準備ができた
ということなので、梅は完熟すると樹から離れて土へ着陸する。
梅の生存戦略である。
自然の中ではとても理にかなっているこの行為。
しかしながら、農家にとってはこの落ちるのが厄介だ。
樹の上で完熟するのを待てば、フルーティーでトロッとした食感の梅干しになる。
しかし収穫のタイミングを間違えば、梅は全て落ちてしまって今年の梅干しはなくなる。
だから梅畑が梅の香りで充満してきた頃から収穫を始めて、毎日様子を見ながら収穫をし、選別をして梅を漬ける。
この繰り返しの日々に忙殺されて、何も手がつかなくなるのがこの時期である。
昨日、ようやくその作業がひと段落した。
その間も毎日食事はしていたのだが、ゆっくりと買い物などできるはずもなく、家にあるものでなんとかしのいでいたが、昨日はゆっくりとスーパーを見て回って、お惣菜コーナーで見つけてしまった。
春巻き。
この食べ物は、みんなが大好きなのに、いつも忘れてしまうやつ。
外食をしても、「今日は春巻き食べに行くぞ!」などとは絶対にならず、たまたま行ったお店のメニューに「春巻き」とあれば注文するくらいのもの。
こんな主役級のうまさなのに、影が薄すぎる春巻き。
今日はそんな春巻きをご紹介しよう。
春巻きの皮は、ギチギチに巻きがちだが、ゆるく巻いたほうが良い…とどこかの料理人が言っていたので、それを守っている。
春巻きの皮が重なっているよりも、皮と皮の間に空間が開いているほうがパリッと仕上がる。
春巻きの最大の武器は、あのカリカリの皮だ。
フニャッとした春巻きなど、春巻きではない。
夏と秋を通り過ぎた、冬巻きだ。
ここさえ間違わなければ、中の具などどうでも良い。
春巻きは皮さえ美味ければうまいのだ。
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