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ちょっと不思議なお話⑨


 わたしが小学1年か2年の時。

 父の実家に暮らしていたため、寝る時は祖母と一緒に寝ていた。でも、だんだん自分の部屋が欲しくなり、唯一空いていた仏壇のある部屋をわたしの部屋にして1人で寝てみたいと家族に話をした。

 仏壇以外には、荷物もそんなになかったと思う。簡単に片付けて、わたしの寝るスペースを作ってくれた。

 これで1人部屋が出来た!!

 わたしは自分のランドセルを持ち込んで、自分の部屋っぽくした。

仏壇には手を合わせて「今日からよろしくお願いします」と挨拶をした。


 祖母の家の裏は古い井戸があり、仏壇のある部屋のちょうど外に位置していた。神社がすぐ近くにあるため、ちょっと不思議な雰囲気のある土地に家は建っていた。

 


《1日目》

 はじめて1人で寝ることにワクワクしていた。

 寝る前には「どうぞ今日からよろしくお願いします」と仏壇にもう一度ご挨拶をして、布団をかけた。家族に電気を消してもらい、目を開けても真っ暗。扉が閉まる音がした。

今日から1人部屋だ……

ウキウキしながら目をつぶった。

するとすぐに何か変な感覚になり飛び起きた。

「ん……?」

真っ暗な中、周りを見回す。誰もいない。扉も閉まっている。

気のせいか。

もう一度布団をかけて寝た。

やっぱりおかしい!!

何かを感じる。

わたしは目を開けて手や足を動かした。少し重い。でも、動かせる。

なんだろう?この感じ?

それは突然やってきた。

「わーーー!!!」

わたしの足元に穴が開きはじめたのを感じた。

どうしよう……

わたしは布団を剥がして必死で敷布団につかまった。どんどん穴の圧力がわたしを吸い込もうとする。

「おとうさーん!!おかあさーん!!」

叫び声はたぶん出ていない。

わたしの周りは、部屋の暗さではない暗さに変化していく。

必死で敷布団につかまるが、吸い込まれるような感覚には逆えず、

「わーーーーー!!!」

わたしは穴に吸い込まれた。



《2日目》

「あのね、やっぱりあのお部屋は仏壇があるから寝てはいけないお部屋なのかなぁ?変なことがあったんだよ……」

家族に話だが、たぶんそうなんだ……くらいな感じだった。

せっかく寝る場所作ってもらったのになぁ。でも、やっぱりあのお部屋な寝てはいけないお部屋なのかなぁ?

 

 わたしは学校から帰ると、そっと仏壇の部屋を覗いた。

ただいまー!

特に変わった様子はない。布団の下を見ても穴なんて開いてない。

 わたしは玄関に行って靴を履き、家の裏にまわった。井戸の中を見る。落ちないように古く錆びた金属の何かがのせてある。その隙間から水が溜まっているのが見える。いつもと変わらない。

外から仏壇の部屋を見てみる。壁にも何も変化はない。

裏の山になっているところもちょっと登って、家を上から見てみた。やっぱり何か変わったことはなかった。


 夜。

「おやすみなさい」

今夜は扉は少し開けておいてもらった。自分が通り抜けられるくらいの隙間がある。大丈夫だ。何かあったらお父さんの部屋に駆け込もう。

 わたしは仏壇に手を合わせ「今日もありがとうございました。今夜も寝させてください。よろしくお願いします。もし、ダメだったら言って下さい」とご挨拶してから、布団に入った。

 それはすぐに起こった。

やっぱりまた……

昨日よりも何か大きい気がする。足がほとんど穴に吸い込まれている。息苦しい。怖いというよりも苦しい。どう呼吸していいかわからない。

穴はどんどん大きく深くなる。

必死で敷布団につかまる。どうしたらいいんだろう?目を開けても真っ暗だ。

「助けてーーー!!!」

声が出ない。

もう限界だ……

「わーーーーー!!!」

わたしは足元から吸い込まれた。



《三日目》

「お願いしたけど、やっぱりあのお部屋はダメみたいだよ」

 今夜何かあったら……と言われたのか、自分で決めたのかは覚えていない。

とにかく3日目の夜。

わたしは何かあったら、もう前のお部屋に戻ろうと決めていた。


 学校から帰ると「ただいまー!」と仏壇の部屋を覗いた。何も変化はない。

「穴あいてる?」

開いてるわけなかった。

外を見る。

裏の山が見える。風の音が聞こえ、葉っぱが飛んでいる。

いつもと同じ。

きっとここは人が寝てはいけないんだ。

今日で戻ろう!

わたしの心は決まっていた。


 

 夜。

昨日よりも扉を大きく開けてもらった。叫んだら聞こえるように。

「おやすみなさい」

わたしは仏壇に手を合わせてから布団に入った。

今夜でこのお部屋で寝るのも最後だから、今日はゆっくり寝られたらいいな……

ランドセルを見ながら、そう思いゆっくりと目を閉じた。


あれ?

身体が動かない……

何か感じると、今までは動けたのに、今日は動かない。

どうしよう……

トンネルの向こうに光る何かがある。

人?動物さん?

何かがいる。見たことないもの。


身体はガリバー旅行記のガリバーのように動けなくされているようだ。

わたしは何かしないよ。大丈夫だよ!!

何かわからないものに心の中で話かける。

何かは動いている。

 

 いつもより穴は大きい。もう、身体全体がすっぽり入る大きさになっている。あれが近づいてきたら、もう逃げれない。

穴はどんどん近づいてくる。その何かわからないものも穴の大きさに合わせて大きくなる。その何かわからないものはオレンジの光を発している。

完全に身体は動かない。声も出ない……

「誰なの?助けて!」

心の中で叫んだ。

わたしの目から涙が落ちた。でも、何も出来ない。

いつもより大きな穴に吸い込まれていく!!

「おとうさーん!!おかあさーん!!」


あっという間にわたしは巨大な穴に吸い込まれていった。

「わーーーーー!!!」


♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪


「あっ……」

わたしの頬に涙が落ちた。

動く。助かった。

まだ、部屋は真っ暗だ。

わたしは穴に落ちたと思ったが、どうやら助かったらしい。


「よかった……」


♪♪♪ ♪♪♪ ♪♪♪


 朝、夜にあった事を話して、前に寝ていた部屋に戻る事にした。

仏壇に手を合わせて、3日間使わせていただいたお礼を伝えた。


 

 しかしその後、戻った部屋でも不思議な体験をする事になる。






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