「ほどよい距離感ってどれくらい?」-うみのこ井戸端会ギ Vol.3
うみのこ井戸端会ギとは?
うみのこでは、気持ちのすれ違いやケンカ、もやもやしたことがあったりすると、子どもたちと日常の中で対話の場を持ちます。
自分の生活する場やコミュニティーで起きている物事を自分ごととして「考える習慣」
「私だったらどうだろう?」を考えることによる「自己理解」
「あなたはそう考えるんだ」という友だちに対する「他者理解」
が対話をすることで育まれ、それによって『一人ひとりが安心していられる、居心地のいい土壌が耕されていく』のではないか、と考えているからです。
そして、これは大人にとっても大切なこと。そこで、大人だって同じように考えたり、おしゃべりできる機会があるといいなと思い、大人のための【うみのこ井戸端会ギ】を開いてみることにしました。
共に子どもを見守る保護者やスタッフが一緒に対話をすることで、より“私たちの子どもたち”として、一人ひとりの子どもを大事にできるコミュニティになっていくといいなという願いもあります。
テーマは「ほどよい距離感ってどれくらい?」
はじめの開催となった前回は、「見守るってなんだろう?」をテーマにたっぷりと話をしました。
今回は、運動会やお泊まり保育を終え、保護者のみなさんが改めて子どもの成長を感じたり、来年度の進級・進学が頭をよぎり始めるタイミングかなと思い、「子どもとのほどよい距離感ってどれくらい?」をテーマにおしゃべりすることにしました。
また、当日の思考や対話のヒントになるように、佐々木正美著「子どもの心の育てかた」より「子どもがみな望むことを与えるのが過保護、親が望むものだけを与えるのが過干渉」の章と、私が以前子どもの姿から距離感について書いたnoteを事前読書としました。
当日の様子 -「わたしの距離」シート-
当日は事前図書を輪読してから、自分が普段子どもとの距離感をどう取っているのかを可視化するため、「わたしの距離」シートをつくることからはじめました。
このシートは、こちらで用意した21個の場面に対して、①自分はどれだけアクションを起こしているか(縦軸)、②そうすることによって子どもにどれだけ変化があるのか(横軸)を書き込んでもらうものです。
子どもへの関わりかたについて悩む場面はきっと人それぞれ。また、特に悩む場面だけでなく、生活の中でのさまざまな場面を想定することで、自分自身がどんな場面で“過”に子どもへ関わってしまう傾向があるのか、自分にはどんな関わり方の“癖”があるのか、また、その関わり方の背景にある思いや子どもに対する願いみたいなものを認識できるといいなという思いから、このようなシートを用意してみました。
じっくり振り返り自分と向き合う、「わたしの距離」シート。書き込むだけでも気づきがあった方が多くいたようです。作成したあとは、このシートを元にグループでたっぷりと対話をする時間としました。対話の中で、こんな声が聞こえてきました。
友だちとのトラブルなど、相手がいる場面での関わり方が難しい。
「躊躇しているとき」など、やらないと子どもが結局あとあと泣いたり後悔したりするのが目に見えているから、先回りをして声をかけたり、やりなよとこちらの気持ちを押し付けてしまいがちになる。良かれ、と思いやっていることではあったけど、それは過干渉になるのか?
私(親)の都合も正直あるし、私にも気持ちがある。子どもの気持ちとそれが交わらないとき、どうするのがいい距離感なのだろう?子どもの気持ちも受け止めつつ、どう折り合いをつけたり、こちらの気持ちを伝えればいいのかが悩ましい。
もしパートナーにもこのシートを書いてもらったら、私が書いたものとは全く異なるものになりそう。夫婦で子どもへの距離感(関わり方)を合わせる必要はないとは思うけれど、どうしてそう対応するのか互いに知ることができると良さそうだと感じた。
基本的には子どもの気持ちを受け入れたいし、子どものやりたいを見守りたいけれど・・・どこまですればいいのだろう?
みんなのケースから考える「ほどよい距離感」
このあと、実際に子どもとの距離感に悩んだエピソードを持ち寄り、「ほどより距離感」について考えるケーススタディを行いました。
一つとして同じ事例がなく、グループごとに面白いテーマと話し合いが起こなわれていたのがとても印象的でしたが、ここではいくつかのケースをご紹介します。
このグループは、ほどよい距離感のために「やること」・「やらないこと」をわけて考えていました。
【やる】
声をかける
そのとき、まずは「なにがあったの?どうしたの?」と本人の気持ちや状況を聞くようにする。(「Bくん可哀想だよ」などではなく)、自分の気持ちを伝える。
ex:「私は見ていて心がざわざわしたよ」「私はそんなに大きな声で言われるのは嫌だなと感じたよ」次回、同じようなことが起きたとき、どうするかを一緒に考える
【やらない】
感情的に声をかけない(叱らない)
憶測で話さない(あくまでも私からはケース1のようなことが起きていたように見えていただけで、実際そこで何が起きていたのか、AやBがどんな気持ちだったのかわからない、ということを心に留めておく)
しつこくしない
ex:一度声をかけたら、そのあと何度も声をかけない。
機会はつくる(皿には盛る)が、食べなさいと強要はしない
「一口は食べてみてほしいな」など私の気持ちは伝える
ルールをつくる場合などは、親が勝手につくるのではなく子どもと一緒につくり、運用の方法も共に考える
このグループは、思考のヒントをベースに話し合いを進めていました。
【ほどよい距離感で関わることで、子どもに手渡したいことはなんだろう?】
自分で考える力
自分で決める力
=生きる力
【ほどよい、のためにやること】
自分だけでそこに関わろうとせず、第三者と連携する
【ほどよい、のためにやらないこと】
親の好みや希望で子どもの行動に○✖️をつけない
先回りして答えを伝えすぎない
口出しをしすぎない
ほどよい距離感ってなんだろう?
子どもへの距離感を見返してみると、そこにはその距離で関わることにした自分の思い(意図)があることに気づいていきます。それが、「こうするべき」「こうあるべき」という私(大人)の中にある固定観念からくるものなのか、「こうありたい」という子ども自身の思いを尊重するものなのか。はたまた、「(子どもに)こうあってほしい」という私の願いからくるものなのか。
実際にそこに現れる距離は同じだとしても、そこで子どもへ掛ける言葉や向けるまなざし、子どもの声に傾ける心の広さと深さには、大きな違いが生まれるのではないでしょうか。
ほどよい距離感・・・それは一人ひとり異なるだろうし、同じ人であっても状況や状態によって変わるもの。これ!という答えがないからこそ、むずかしく、悩ましいものですが、他者と関係性を築いていく上で、心の片隅に置き考えつづけたいことだなと、私自身感じています。
いただいたサポートは、noteに書きたくなるような「心が動かされる日常」を過ごすために、大切につかわせていただきます!