生まれなさい外に気球が待ってます きゅういち(『ほぼむほん』)
きっと現代川柳は生まれる前のことをよく覚えている。それから、どうやって、じゃあ生まれよう、と決めたかを。
あの日わたしは生まれようかどうしようかぐずぐずしていて、服も決まらなかった。寝癖はまあついているといってもよかった。生まれる前の寝癖だったけれど。そのとき、男のひとが来て、私は少し緊張したが、生まれなさい外に気球が待ってます、と言った。そうして指をさした。
わたしは生まれてはじめてひとのゆびというものを見て、それから外に出て行った。